4-≪ 228 ≫
ここで少し寄り道です。
フランツさんの妹、アイネ。
彼女が客間を飛び出した、その後のお話です。
≪ 228 ≫
私は客間から飛び出すと槍をメイドに預けて、オブシディアンのいる馬屋まで走った。
顔が火のように熱くて……遠乗りに出て思い切り風に当たれば、この火照りが治まると思ったのだ。
オブシディアンと共に、早足で門を出ても心臓は張り裂けてしまうのではないかと心配になるくらい、ドクドクと脈打っていた。
――これも全て、あのフジサキと名乗った男のせいだ。
私は心の中で毒づいた。
あんなにもあっさりと会心の一撃を受け止められた事が信じられない。
見知らぬ男から、手の甲とは言え口付けをされたのも初めてだった。
今だにその時の感触が残っている感じがする。
私を見上げるあの男の強い眼差しが、凛々しい表情が、脳裏に焼きついて離れない。
私は誰よりも強くなくてはいけないのに……。
私は誰にも負けてはいけないのに……。
ギリッと歯を食いしばって、鼓動の早い胸元をギュッと強く掴んだ。
この気持ちは何なの? 私は一体、どうしてしまったの?
オブシディアンの足並みを速めるため、その脇腹を強く蹴った。
ごめんね、オブシディアン。帰ったばかりなのに、また走らせてしまって。
でも、もう少しだけ私に付き合って――と、彼女の首を撫でて、心の中で詫びた。
当たる風は心地よかった。だが、火照りと動悸はまだまだ治まりそうになかった。
誰でも良い。私の胸をざわつかせる、この得体の知れない感情の正体を教えて――。
このまま、≪ 21 ≫ へ進んでください。
コルデアの黒百合姫、初めての体験。
彼女は今後、どうなってしまうのでしょうか。
……とまぁそれはさておき、本筋に戻ります。




