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「もう、冗談だよ」
アタシはちょっと笑うと、妄想で涙目になっているシェナの肩を叩いた。
シェナが念入りに皺を伸ばしていたシャツが、くちゃくちゃになっている。
それ……フランツさんのじゃなかったっけ……?
「ほんとにぃ?」
「うん。カッコいいとは思うけど、ときめくかって言われるとそれはまた別問題だね」
「チヒロってドライ……」
そう言うと、シェナは
「あっ、いっけない!」
と叫び、手にしていたシャツを再び丁寧に皺を伸ばし、ピシッとさせてからロープに干した。
そしてうっとりとした表情でひらひら靡くそのシャツを見つめている。
恋する乙女モードに突入したシェナのフランツさん談義は、一度始まったらなかなか終わらない。
内容は日替わりで、フランツさんの癖から今まで話しかけられた回数と内容までと事細かに説明してくれる。
最近は、フランツさんが討伐隊の任務でしばらく家を空けていたので、フランツさん不足なんだとか……。
フランツさん、ここに貴方の嫁候補がいますよ。気付いてあげて下さい。
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