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問題はだ――。
フジサキに人間の『恋愛感情』なんて、複雑なものが理解できるのかって事だ。
徐々に人間らしく成長してるけど、色恋はまだ早すぎる気がする。
フジサキとアイネの関係がうまく行かなかった場合、アタシのフォローがなってなかったからだとか言われて、逆恨みされるのも嫌だし。
その時こそ、アイネが『チヒロ絶対殺すマン』の狂戦士と化すだろう。
本当に槍で串刺しか、下手をすれば細かくミンチにされるかもしれない。
冗談じゃないっての、全く……。
「フジサキさん、カッコいいのにー。チヒロったら、なーんにも感じないの?」
ふと、シェナの真ん丸に見開いた瞳と驚いたような声が蘇る。
いやいや、アイツは所詮、携帯端末機。
普通の男じゃないんだからさ……。
……そりゃ、胸を貸してもらったりしたけどさ……。
「……いかん、いかん」
頭をぶんぶんと振りまわす。
フジサキの腕が力強くて逞しかったこととか、悲しくて泣いているのにフジサキの身体が温かくてどこか安心して幸せな気持ちになってしまったこととか……そういうのを思い出してる場合じゃないのだ。
さて、話を本題に戻そう。
どうやって、アイネとフジサキをくっつけるか。
アイネはフジサキに話しかけられないみたいだから、アプローチはフジサキから仕掛けさせるしかない。どのタイミングでけしかけるかが重要だな。
あれ。待てよ? 何か大切な事忘れてる気が……。
「ほあぁッ!!」
廊下のど真ん中で立ち止まると、アタシは頭を抱えた。
2人をラブラブにしちゃ駄目じゃんか!
二人の仲がいい感じに進展して、相思相愛の関係になったと仮定するよ。
この家を出て行く当日になって『私、アイネ様と婚約いたしました。ですので、マスターはお1人で元の世界にお帰りになる方法をお探しください』って事になったらどうするよ。
何の取り得もない異世界人のアタシがフジサキ無しでやっていけるか? 答えはノーだ。
……言っておくけど、フジサキをアイネにあげたくないとか、そんな理由じゃないよ?
絶対、違うからね!
まぁ、とにかく!! あぁー、アタシのバカヤロウ!
ちょっと考えれば分かる事なのに、何でそんな一番大切な事を忘れてんだ!
生活に余裕が出てきたからって、人の恋愛事情に首を突っ込んでいる場合じゃなかった。
……でも、断れるような感じじゃなかったし……。
アイネには申し訳ないが、何としても二人の関係が上手くいかないように立ち回らなければ。
今度こそ冷静に頭を使って、上手くやらねば。バレたらそこで試合終了です。
そこまで一気に考えて、一旦落ち着くために深呼吸をした。
異世界転移したヒロインって、こんな他人事で悩むもんなのかな?
なんて言うか、もっと壮大なイメージがあったんだけど。
自分にとんでもない特殊能力がある事に気が付いて、勇者という名の職種に就く。
頼れる仲間を集めて冒険の旅へ出ると、名のある難関ダンジョンを次々と攻略、冒険の中でパートナーといい感じになって、世界を滅ぼそうとする魔王を倒すために修行に明け暮れて……彼らの異世界生活は充実している。
それと比べて、アタシの異世界生活ときたらどうだ。命の危機と隣り合わせになる事も、世界を救わなくちゃいけないというプレッシャーもない。他人の恋路のために悩む程度の、低刺激で平凡な日常生活を送っている。
アタシがこの世界に来た意味って何なんだろう?
そもそも意味なんてあるのかな……? うーむ。
●○●CHOICE TIME!●○●
【 Key word 】の【 紳士 】と【 淑女 】について
両方とも持っている
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