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≪ 211 ≫
「ふむ、何だそうだったのか。奇妙なことになったものだな!」
ロバートさんはそう言うと、ワハハと豪快に笑った。
その笑顔は、びっくりするぐらい優しそうだった。
縮こまって固くなっていた肩や背中から、ゆっくりと力が抜けていくのを感じた。
「えーと……チヒロと言ったか」
「あ、は、はい!」
「スパイかどうか……その最終的な判断を下すのは、私ではない。それまではこの屋敷にて、フランツやウィルソン達の監視下に置かれる事になるが……なに、手荒に扱うつもりは毛頭ない。エリックの書簡には『異世界人』と書かれていたな? 私はそちらの方が気になっている。後で話を聞くとしよう。そもそもこのフランツが信用して連れてきたのだから、どのみちスパイなどではないのだろう?」
「スパイではないです。あの……信じて頂けるんですか?」
そう聞くと、ロバートさんは片方の目で笑うと『うむ』と力強く頷いてくれた。
フランツさんの言うとおり、ロバートさんは強面だが気さくな人だった。
気さくと言うより、情に厚い優しい人と言った方が正しいのかもしれない。
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