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半分諦めかけていたその時、ハル先輩が満面の笑顔を浮かべて持っていた洋紙の束を放り投げた。
その行為に驚きはしたものの、マルコ先輩が無駄のない動きでキャッチする。
すごい、ありゃ神業だ……。
マルコ先輩のハル先輩を見る目が一瞬鋭くギラリと光った気がしたけど、見なかったことにしよう。
「何だよ水臭えな、チヒロ! 俺らで良けりゃ相談くらい、いくらでも乗ってやるよ。なぁ? 兄貴」
「え? 相談に乗るのは構わないけど、僕らもチヒロもまだ仕事が……」
ハル先輩が偉そうに腰に手を当てて、拳で胸をドンと叩いた。
話を振られたマルコ先輩は抱えた大量の荷物を見ながら困った顔をしている。
「仕事っつったって、午前中は書庫にこの書物やら帳簿の山を運んで終わりだろ? 書庫の掃除だって、この人数でやっちまえばすぐ終わんだろーしさ。大体、兄貴は大したことねー仕事と可愛い後輩からの頼み、どっち取るんだよ?」
俺は当然チヒロを取るぜ、とハル先輩がアタシの肩を腕を回した。
ちょ、ハル先輩、重い! 体重かけないでよ。イテテテ、左肩がイカれちゃう!
ハル先輩は相談になってくれる気満々みたいだ。と、言うよりもただサボりたいだけだと思うけど……。
難しい顔で暫く考え込んでいたマルコ先輩も最終的には頷いてくれた。
さすが、皆のお兄ちゃんだ。ここぞと言う時に頼りになる。
フジサキはと言うと、そんなアタシ達の動向を黙って見守っていた。
フジサキは了承なんか得なくても、最初からアタシの相談に乗るつもりだったのだろう。
何はともあれ、言ってみるものだ。これで良い案が見つかれば良いんだけど。
相談しておいて言うのもなんだが、ちょっと不安だ……。
相談に乗ってもらえる事になったアタシは、3人と書庫へと向かったのだった。
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