4-≪ １８８ ≫

≪ 188 ≫

　部屋を出た瞬間、どっと疲れが出た。

　深く息をついて近くの壁に寄りかかっていると、廊下の曲がり角からこちらを覗っていたシェナと目が合った。

　声を発する元気がなかったため、とりあえず笑顔で手を振ってみた。

　すると、シェナを筆頭にビアンカ姉さん、フジサキの順番でこちらに駆け寄ってきた。

「チヒロ、大丈夫かい？」

　ビアンカ姉さんが壁によりかかるアタシを支えて心配そうに聞いてきたが、アタシは首を振って力なく

「はい。特に何も……」

とだけ答えた。

「何にもない訳ないじゃない！　チヒロ、すごくヘロヘロになってるもの！」

　シェナがアタシの様子を見て心配そうに腕をギュッと握る。

　何もなかったと言えば嘘になるが、アイネに口止めされているので何も言えない。

　すまんね、皆。折角見張っててくれたのに……。

「マスター、アイネ様からのお話とは何だったのですか？」

　フジサキからの質問で、ようやくアタシは重い口を開いた。

「いや、何。大した事じゃないよ。ただ、お嬢様も相談したい事があったみたい。それでアタシはその相談に乗っただけ……。とりあえず、解決したから問題ないよ」

　シェナは「納得いかない」って顔をしてたけど、アタシがお礼を言うと『また何かあったらいつでも相談に乗るからね！』と言い残して、自分の持ち場に戻っていった。

　ビアンカ姉さんもこれ以上は聞いても無駄だと思ったのか、『何事もないなら良かったさ』とだけ言って去っていった。

　フジサキとアタシだけが、その場に残った。

　アタシはフジサキを見上げて、一言だけこう言った。

「ねぇ、フジサキ……」

「何でしょうか？」

「アンタって、本当に罪作りな男だよね……」

「はて、罪作りとは、一体何のことでしょう？」

　首を傾げるフジサキを置いて、アタシはよろめきながらもその場を後にした。

　今晩は、文字の勉強よりも先にフジサキの趣味とタイプを聞かなくちゃな……。

　アイネとの約束だからね。

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