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咄嗟にアタシは両手を広げて、二人の間に割って入った。
「フランツさん、落ち着いてください。フジサキ、アンタもだよ!」
フランツさんの表情が怖い。彼がこんな表情をするとは思っていなかった。
正面からフランツさんの視線を受け止めているアタシの目は涙目だ。
そんなアタシの顔を見て、ハッと我にかえったフランツさんがたじろぐ。
一瞬でバツが悪そうな表情に変わる。
『長角族』はNGワード……千尋、覚えた。
もう絶対、言わないようにしよう。
「ごめん、チヒロ。怒鳴ったりして」
「マスター、何故止めるのですか? 私は何も……」
「フジサキ! アンタ、考えもなしに色々言い過ぎなんだよッ! アタシ達は部外者なんだから、この世界の事情にとやかく言う資格はないの。フランツさん、すみません。興味本位で聞く話じゃありませんでした……フジサキ、アンタもフランツさんに謝りなさい!」
「……フランツ様、申し訳ございません」
腑に落ちないながらもフジサキがフランツさんに謝罪した。
3人の間に嫌な沈黙が流れる。
一陣の風が吹き抜け、それと同時に広場に面した通りにさっきの活気が戻ってきた。
ざわざわと騒がしくなった通りからの声で、アタシ達は現実に引き戻された。
アタシ達の方を見て、ブルルルッとあっちゃんが嘶いた。
蹄で地面を叩き、『早く行こう』とアタシ達を急かしているみたいだ。
「そろそろ……出発しようか?」
沈黙と静寂が破られた。
アタシは黙ってコクンと頷いた。……何も言えなかった。
――君達に何が分かるッ!!
フランツさんの『君達に』って言葉には、つまりアタシも含まれてるんだよね。
親切にしてくれてはいるけど、完全に信じてくれてはいないって事だ。
感情があらわになった一瞬に出た彼の本音にアタシは軽いショックを受けていた。
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