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「ウェンデール王国の国王殺が……」
フジサキがまた何やら口を挟もうとしたので、アタシは肘でドンとフジサキをどついた。
フジサキが「何です?」というような顔でアタシを見る。
あのねぇ、どう考えても迂闊にエグッていいような話じゃないでしょうが。
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「いや……いいよ、チヒロ。どういうことかと聞きたくなるのは無理もないしね」
フランツさんはそう言うと、僅かに微笑んだ。
しかしすぐにその笑みは消え――そして何かを思い出すように、ゆっくりと語り始めた。
「ウェンデールがまだその名ではなかった一小国だった時の事だ。国王は人族を始め、他の種族を束ね、巨大な共和国をイオ・ヒュムニアに建国する計画を立てていた。多くの平和を望む種族が王に賛同し、次々と同盟を結んだ。そして、最後に同盟を結んだのが長角族だった」
国王は同盟の締結を大層喜び、王宮にて盛大な式典を催した。
同盟を結んだ全ての種族と一般市民達が式典に招かれ、厳かな儀式が執り行われる事となった。
王は同盟締結の儀の担い手に長角族を指名した。
王は長らく同盟を拒んでいた長角族がやっと心を開いてくれたのだ、と喜んでいた。
だから、長角族を指名した――とされている。
だが、それが大きな間違いだった。
「式典の最中、突然長角族が国王に刃を向けた。大勢の護衛兵が警戒する中、長角族との同盟を心から喜ぶ国王を……武器も持たず親睦の抱擁を求めた国王を、長角族の長は何の躊躇もなく刺殺した。その瞬間、長角族は全ての種族を裏切り、敵に回した」
あまりの衝撃の展開にアタシは口元を押さえた。
フランツさんは瞳の奥に暗い炎を宿らせていた。
自分の正面にまるで長角族が居るかのように睨んだまま続けた。
「長角族は最初から同盟を組む気なんてなかったんだ。奴らは他の種族を見下している。自分達より何もかもが劣っているそんな人族と手を組むなどあり得ない……劣った種族同士で手を結び、大国を築き上げるなど馬鹿げているとね」
国王の殺害後、長角族は一族の長を筆頭に王宮からの逃亡を図った。
警備に当たっていた兵士や式典に参加した貴族、各種族の代表、王宮の外に集まった民衆の半数以上を無差別に殺害した。犠牲者の中には幼い子供や妊婦、非力な老人もいた。
長角族が通った後は、犠牲者の返り血で真っ赤に染まった。
王都には『血の記憶』と名付けられた通りが今でも残っている。
過去に起きた惨劇を忘れないために――。
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