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でも、アタシもフジサキの事はよく分からんしなぁ。
そもそも元携帯端末機だったヤツに、恋愛感情なんてオプションは付いているんだろうか?
イケメンで知識量は豊富だけど、肝心の中身は記憶しないと、面白くも何ともないヤツなんだよ?
アイネはフジサキのどこらへんに惚れたんだろうか?
あれこれ聞き出すためにも、とにかく話を先に進めなければならない。
「アイネお嬢様―?」
口を一文字に閉じて固まったままのアイネの前で、かざした手を左右に振ってみた。
するといきなり、その動作でスイッチがオンにでもなったのか。
息継ぎできないんじゃないかと心配になるくらいのもの凄い早口で喋り始めた。
「す、すすす好きとかそう言うんじゃないわ! ち、ちょっと興味があるだけなのよ。家の者以外に槍を止められるなんて初めての事で……。あの日以来、あの人の事が頭から離れなくなってどういう人なのか、趣味は何なのか、想い人はいるのかとか! 色々、知りたくなって! で、でも話しかけようといざ、目の前に行くと顔がボーっと熱くなるし、胸もドキドキしてしまって、気が付くとその場を走り去っているの。こ、こんな気持ち初めてで、何が何だか分からないのよッ!!」
「は、はぁ……」
「だから、一緒にここに来た貴女だったら、あの人の事を何でも知っているんじゃないかって思ったの! それで、本当はスパイなんかと話したくはなかったけど……何度も貴女を呼びつけようとしたわ! でも貴女の隣にはいつもあの人がいて、話しかけられなかった。まさか、貴女とあの人は恋人同士なの!?」
「は? え? アイネお嬢様、ちょっと落ち着いてください」
いや、否定してらっしゃいますけど……アイネ、人はそれを『恋』と呼びます。
これは……思った以上に重症ですな。残念ながら手遅れのようです。
アイネがどんどんこっちに迫ってくるので、アタシは一歩ずつ後ずさった。
恋する乙女の顔がアタシとフジサキが恋人同士なのかって話になった瞬間、あの時のような鋭い目付きに変わった。
詰め寄ってくるアイネの背後から冷気すら感じる。
何で昼ドラの修羅場みたいな展開になったんだよ。
だから、フジサキは恋人とかじゃなくてアタシのiPh●neだったの!
自分の持ち物を側に置いとくのは普通の事でしょ!
アイネだって、愛用の槍が擬人化したら嫌でもそうなるよ。
●○●CHOICE TIME!●○●
「フジサキとは何でもないです!!」
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「フジサキはアタシの持ち物です!!」
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