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シェナ。ビアンカ姉さん。マーサ先輩。ハル先輩。マルコ先輩。
彼らは決して、裕福な家庭の出身ではない事が今までの会話で分かった。
彼らはみな孤児や親に身売りされた天涯孤独の子供達で……このコルデア家の当主であるロバートさんが皆を引き取ったのだそうだ。
そうやってこの家にやって来た彼らに、一般教養とメイド・執事のイロハを徹底的に叩き込むのがエレノアさんとウィルソンの仕事でもあって、彼らにとってあの2人は『先生』や『師匠』的存在だそうだ。
優しそうな見た目に似合わず、2人ともスパルタ教育が基本らしい。
引き取られる前の皆の生活はそれは酷い物だった。
現にハル先輩はマルコ先輩を『兄貴』と呼んでいるが、彼らは本当の兄弟ではない。
2人はある町で両親に捨てられ、義兄弟となって泥棒家業で生計を立てていたそうだ。
マルコ先輩は今でこそ面倒見のいい先輩、という感じだけど、孤児だった頃は『誰にでも因縁をつけてナイフで切り付ける』そんな危ない子供だったと、マルコ先輩の子分をしていたハル先輩は言っていた。
俄かには信じがたいが、マルコ先輩も『あの頃の僕らは、飢えてたからね。生きるためなら何でもしたよ』と苦笑していた。
シェナも生活が貧窮していた両親に生活の足しにするために売られたと言っていた。ビアンカ姉さんやマーサ先輩は昔の事になると話を逸らすので、たぶん酷い目に遭って来たのだろう。
そんな生い立ちがあるからこそ、コルデア家のメイドと執事見習い達はロバートさんを『親』のように信頼し、尊敬している。
その子供であるフランツさんとアイネは、彼らの自慢の主人なのだそうだ。フランツさんが武勲を上げる度に、自分の事のように喜び、宴会をするらしい。
喧嘩をしたりもするけれど、基本的に皆仲良しで一つの『家族』なのだ。
こうしてアタシのホームシックは見習いの仕事をする事で徐々に解消されて、体調も元通りになった。
仲間達と会話する機会も増えていき、すぐに打ち解ける事が出来た。
仕事の方は、まだ戸惑う事が多いが、誰かしらが必ずやって来てフォローしてくれた。
たまに、フランツさんとフジサキの稽古を木陰から見ているアイネに出くわして小言を言われたが、大して気にならなくなった。
このコルデア家の人々は、フランツさん達だけでなく働く召使い達の誰もが温かい。
と、こんな感じの事があったわけよ……。
ご清聴、ありがとうございました。
とにかく、色々あって落ち込んだりもしたけれど、アタシは元気です。
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