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「えーっと……あの人って、フランツさんの事でしょうか?」
「あ、あ……貴女、馬鹿なの!?」
アイネは叫ぶような声を出すと、ぐわっとその大きな目を見開いてアタシを睨みつけてきた。
「なぜ私がお兄様の話を貴女にしなければならないのよ!? もしや、ワザと言ってるんじゃないでしょうね!?」
「ヒッ! ち、違います、違います! 本当に分からないんですってば!」
アタシの答えが的外れだったらしく、アイネが勢い良く椅子から立ち上がって怒鳴りつけてきた。
そんな怒鳴られたって、分かんないモンは分からないんだい!
大体、アイネがもっとハッキリ相談内容を言うのが筋なんじゃないのか?
何で相談に乗ってる側のアタシが怒鳴られなくちゃならないんだ。
「恥を忍んで聞いているのに! 貴女って本当に腹の立つ女ね! 私はフジサキ様について聞きたい事があるから貴方を呼ん……あッ!」
捲くし立てた勢いのまま、アイネはとうとう相談内容を吐いた。
その途端、口元を押さえて、更に顔を真っ赤にした。
一人あたふたし始めたアイネを、アタシはポカンとした顔で見つめた。こんなに取り乱すアイネを見るのは初めてだった。
顔が林檎かトマトみたいだ。
ん? 『あの人』ってフジサキの事なの?
てか、呼び方がフジサキ様って……アタシは名前すら呼んでもらえてないのに、何でアイツは『様』付けで呼ばれてんの?
納得いかん。
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