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「あ、あの、フランツさん!」
グイっとフランツさんの腕を引っ張ると、フランツさんがちょっと驚いたように目を見開いてアタシを見つめた。
「フジサキのことは許してやってください。ほんの出来心――じゃなくて、作戦だったんです。妹さんに色目使ったとか、妹さんに一目惚れしたとか、妹さんで厭らしい妄想してるとか、そういうやましい発想は、コイツの頭には一切ないので!」
どうやらアタシの予想通り、フランツさんはそっち方面の心配をしていたらしい。
アタシとフジサキを見比べると
「……そうなのかい?」
と呟くように言った。
「はい! ねっ、そうだよね、フジサキ!」
あの……今すぐ、そのよく切れそうな剣を鞘に納めてください。
フジサキに向けようとしてますよね? フジサキのおかげでこの場が丸く収まったんですよ?
手にチューくらいで目くじら立てないでください。
挨拶、ただの挨拶だから!
ほらフジサキ、お前も「マスターの言う通りでございます」とか言え!
目配せすると、フジサキはすっと立ち上がった。
「アイネ様を鎮めるために一番有効と思われる手段を使わさせていただきました。やはり礼儀作法としては間違っていたでしょうか?」
誰も礼儀作法の話はしてねぇーっ!!
……と思ったけど、フジサキに他意はないことがわかって安心したのか、フランツさんは
「いや……なら、いいさ」
とだけ言って微笑んだ。表情が少し緩む。
やれやれ……どっと疲れたわ……。
むしろ刃を素手で掴んじゃったフジサキの方が絶対ヤバかったから、そっちを少しは心配してあげてください。
アイネに関して言えば、あの年頃は思春期真っ只中でちょっとした事でキレたりするからね。
だからと言って、感情の赴くままに刃物を持ち出すのは、ちょっと今後の彼女の人生に暗い影を落としそうだから、親御さんにしっかり注意してもらおう。
若さ故の過ちさ……言及はしない方向で行きましょう。
アタシだってもしリビングに泥棒がいたら、お父さんのゴルフクラブで殴りかかるだろうしね。
しゃーない、しゃーない。
本人からの謝罪は期待できないしなぁ。
今回はフランツさんに免じて水に流すけど、次やったら絶対許さない。
絶対にだ!
★チヒロの【 D point 】は、【 1pt 増加 】しました。
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