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「兄はね、騎士としては一流だけど女を見る眼はからっきし駄目なの。今までも何人もの女を恋人だと言ってこの屋敷に連れてきたわ。でも、どの女もコルデアの名と地位、財産が目当てだった。いつだったかしらね? お兄様には『貴族の娘』と身分を偽って近づいた娼婦が、着ていた陳腐なドレスを私に真っ二つに斬られて泣いて逃げて行ったのは?」
愉快そうに思い出し笑いをするアイネを見ても、アタシは笑えなかった。
副隊長の妹がそんな恐ろしい事をするはずがない……どこぞのラノベのタイトルみたいな事になったな。
でも、アイネの言い方からして事実なんだろう。
つまりだ。アイネはアタシをコルデア家の財産目当てでフランツさんに近づいた卑しい商売女だと勘違いしている。
しかし残念だったなお嬢さん、その予想は外れてますぜ?
「だから、それはお前の勘違いだ、アイネ! 彼女はエリックからの命令でこの家で預かる事になった人だ。僕の恋人でも何でもないんだ!」
アイネと同じくテーブルに乗っていたフランツさんが、アタシとアイネの間に飛び降りた。
アイネからアタシを庇って立つフランツさんからは、討伐隊の副隊長として任務に当たっていた時の威厳は感じられない。
気の強い妹を止められない、ちょっと情けないお兄ちゃんだ。
明らかに焦っているフランツさんを見つめながら、アイネは面白くないのかフンッと鼻を鳴らした。
「そうなの。でもエリックの命令という事は当然、ちゃんとした名目があるのでしょう? その女をこのコルデア家で囲わなければいけない理由が……」
見透かすようにフランツさんの瞳を覗き込むアイスブルーの双眸。
フランツさんがアタシを預かる事になった理由を話すのに躊躇しているのが窺えた。
そりゃ、躊躇もするよね。
何たってアタシは、財産目当ての泥棒猫どころか、スパイ容疑の掛かった怪しい自称異世界人ですもん。
●○●CHOICE TIME!●○●
「仕方ない、アタシが自分の口から話そう」
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「勝手に口出しちゃ駄目だ。様子を見よう」
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