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部屋を出た瞬間、どっと疲れが出た。
深く息をついて、近くの壁に寄りかかっていると廊下の曲がり角からこちらを覗っていたフジサキと目が合った。
あれ……フジサキ、何でこんなところにいるんだろ?
声を発する元気がなかったため、とりあえず手を振ってみた。
すると、フジサキが足音をさせずにこちらに駆け寄ってきた。
「マスター、アイネ様のお部屋で何かございましたか?」
「いや、別に……。でもフジサキ、何でここに?」
「昼食後、マスターが浮かない顔で階段を昇って行かれましたので、それとなく様子を窺っておりました」
はぁ……そうか。
本当によくできた元携帯端末機だね。
……でも、その出来すぎなせいで、何か、ややこしいことになってんだよなあ……。
アタシはフジサキを見上げて、一言だけこう言った。
「ねぇ、フジサキ……」
「何でしょうか?」
「アンタって、本当に罪作りな男だよね……」
「はて、罪作りとは、一体何のことでしょう?」
首を傾げるフジサキを置いて、アタシはよろめきながらもその場を後にした。
今晩は、文字の勉強よりも先にフジサキの趣味とタイプを聞かなくちゃな……。
アイネとの約束だからね。
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