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JKのアタシが異世界転移(以下略)ゲームブック版  作者: 加瀬優妃
第4章 アタシと、コルデア家
485/777

4-≪ 59 ≫

≪ 59 ≫


「フジサキ、ちょっと落ち着いて!」


 アタシはフジサキの腕を取ると、強引にこちらの方に振り向かせた。

 フジサキの肩の向こうに、フランツさんの険しい眼差しが見える。


 フランツさんの表情が怖い。彼がこんな表情をするとは思っていなかった。


「マスター、何故止めるのですか? 私は何も……」

「フジサキ、考えもなしに色々言い過ぎなんだよ。アタシ達は部外者なんだから、この世界の事情にとやかく言う資格はないの」

「……ですが……」

「ですが、じゃない。当事者でない人間が……」

「フランツ様も当事者では……」

「でも、この国の人間だよ。この国の人間にとっては、他人事じゃないんだよ。今も根強く残る、重大な過去なんだ」

「…………」


 アタシの言葉に納得したのか、フジサキは黙り込んだ。

 アタシはギュッとフジサキの腕を強く掴んでから、そっとその手を離した。フジサキの前に進み出る。


「フランツさん、すみません。興味本位で聞く話じゃありませんでした」

「あ、いや……」


 フランツさんが、一瞬でバツが悪そうな表情に変わった。

 『長角族』はNGワード……千尋、覚えた。

 もう絶対、言わないようにしよう。


「ごめん……チヒロ。怒鳴ったりして」

「いえ。……ほら、フジサキ」


 アタシが促すと、フジサキはおとなしく頭を下げた。


「……フランツ様、申し訳ございません」

「いや……」

 

 ――3人の間に、嫌な沈黙が流れた。

 そのとき、一陣の風が吹き抜け、それと同時に広場に面した通りにさっきの活気が戻ってきた。

 ざわざわと騒がしくなった通りからの声で、アタシ達は現実に引き戻された。

 アタシ達の方を見て、ブルルルッとあっちゃんがいなないた。

 蹄で地面を叩き、『早く行こう』とアタシ達を急かしているみたいだ。


「そろそろ……出発しようか?」


 沈黙と静寂が破られた。

 アタシは黙ってコクンと頷いた。……何も言えなかった。


 ――君達に何が分かるッ!!


 フランツさんの『君達に』って言葉には、つまりアタシも含まれてるんだよね。

 親切にしてくれてはいるけど、完全に信じてくれてはいないって事だ。

 感情があらわになった一瞬に出た、彼の本音――。



★チヒロの【 A point 】は、【 4pt 減少 】しました。





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