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「し、失礼致します」
小さく言ってアタシはそそくさと中に入ると、音を立てないようにドアを静かに閉めた。
振り返って、初めて入ったアイネの部屋を見渡してみる。
綺麗過ぎるほど、整理整頓された部屋だ。女の子らしい家具や小物がちらほら置かれているものの、数はあまり多くない。年頃の女の子の部屋にしては閑散としている。
一番幅を取っているのは、部屋の壁側に置かれた天蓋付きのベッドだ。
「話があると言ったでしょう。もっとこっちへ来なさい」
ドアの前に突っ立ったままでいると、アイネに呼ばれた。
椅子に姿勢良く座るアイネに、アタシはゆっくりと様子を覗いながら近づいた。
もちろん、いつでも逃げられるように頭の中では部屋からの逃走経路が現在進行形で計算されている。
アイネの前まで来ると、アタシはモジモジとスカートを両手で弄りながら尋ねた。
「あの……お嬢様、お話とは何でしょう?」
「…………」
アタシが聞いてから、えらく長い時間、部屋には沈黙が流れた。
えー、話があるって言ったのはそっちじゃんよ。
何でここにきて、だんまり決め込んでんの?
この後も仕事があるアタシへの新手の嫌がらせか? どんだけアタシの事が嫌いなんだよ……。
もうこの際アタシの事が嫌いなのは良く分かったから、仕事に支障が出るような虐めはやめて欲しいな。
話がないんなら、帰るぞアタシは!
「あのー……お」
「じ、実は貴女に相談したい事があるのッ!」
アタシの控えめな声をアイネの大声が見事に遮った。
ん? 相談だと?
アイネはさっきの冷静な顔を一変させて、頬を真っ赤に染めている。
どうやら中々、言い出せなかっただけらしい。
てか、相談なら新人のアタシになんてしないで乳母でもあるエレノアさん辺りにすればいいじゃないか。
何で、わざわざ嫌ってるアタシになんかするんだろ?
「相談ですか?」
「そ、そうよ! 貴女の事は信用してないし、大嫌いだけど……どうしても聞きたい事があるのよ。えっと、その……あの人のことで……×××……一緒にいるの×××……」
いつもの威勢のある声は何処へやら、アイネから出てきた言葉は歯切れが悪いし、最後の方は聞き取ることもできないほどの小声だった。
聞きたいことってなんだろうか? つーか、『あの人』ってどの人のことよ?
顔を真っ赤にして、しおらしくなってしまったアイネは、シャツの裾を皺が出来るくらいギュッと握っていた。
視線はアタシから逸らされてはいるが、たまにチラチラと見ている。
●○●CHOICE TIME!●○●
「フランツさんのことかな」
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「フジサキのことかな」
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「あの人が誰か聞いてみる」
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