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バルコニーに出るとそこは満天の星空。
この世界には電気がないから当然、元の世界のように夜通し都市を照らす光源なんて存在しない。
だから、星明りを遮る物が何もないのだ。
ローナ村でも毎晩見上げていた星空だが、その美しさは見ていて飽きが来ない。
それにしてもこの『星空・バルコニー・若い男女・2人きり』って、ラブストーリー的には最高のシチュエーションじゃね?
いや、実際はただのお悩み相談なんだけどね……。
まさに王道展開だよね。アイネもフジサキとこのシチュで、まずは自己紹介と趣味の話から始めればいいんだよ。
「それで、悩み事って何かな?」
何となく、懐かしい物でも見るような目で星を見上げていたフランツさんが、黙りこくるアタシに視線を移すと、優しい声音で尋ねてきた。
おっとっと、見惚れてる場合じゃなかった。
「実はですね……」
「うん?」
もったいぶっている訳ではないんだけど、いざ他人……しかも男の人に恋愛相談するのって結構勇気がいる。
自分の恋愛について相談するわけじゃないんだけどなぁ。
「そのぉ……あ! 最初に言っておきますけど、アタシじゃないですよ? ある人がですね、好きな人が出来たらしいんですよ。でも恋愛とか初めてで、いざ意中の相手に話しかけようとすると緊張しちゃって、結局話しかけれなくて逃げちゃうらしいんですよ。それはアタシの方で何とか出来そうなんですけど……問題は相手の方でして」
「相手の方?」
「はい。その相手って人が『恋愛』って物がまるで分かってない人でして」
「ふうん……」
「その……フランツさん」
「ん? 何だい?」
アタシは星明りに照らされ、夜風に髪を遊ばれているフランツさんの瞳を真っ直ぐに見つめて次の言葉を紡いだ。
アタシが本当に聞きたかったのは、ここからだ。
「『恋愛』を知らない人に、『愛』を知ってもらうにはどうしたら良いんでしょうか?」
夜風が一際強く吹いて、アタシとフランツさんの髪と服を乱していった。
フランツさんがジッとアタシを見つめている。
何も言い返してくれないフランツさんに、アタシは首を傾げた。
フランツさんもどう答えて良いのか、悩んでいるのだろうか?
どこか熱がこもったように見えるその視線のせいで居心地が悪い。
「あの……」
アタシがモジモジし始めると、フランツさんもハッと我に返った。
何かを誤魔化すように咳払いを一つする。
「そ、そうだね。それは難しい問題だなぁ……」
「ですよねぇ。アタシも彼氏とかいなかったし……恋愛ってよく分かんないんです」
はぁっとアタシは溜め息をついた。そんな様子を見てフランツさんもウーンと眉を寄せて考え込んでしまった。
アタシが『彼氏いない』って言った瞬間、表情が輝いた気がしたけど――。
たぶん見間違いだ。そういう事にしておこう。
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