3-≪ 37 ≫
≪ 37 ≫
「グレッグさん、紙とかない?」
「何するんだよ」
「こっちの言葉を書く練習すんの」
「……あーん?」
グレッグさんは荷台の隅をゴソゴソ漁ると、小さい黒板みたいなものを出してきた。
あの、にんじんと呼ばれてキレた赤髪の女の子が叩き割ったやつみたいだ。
そして、チョーク的な物も渡してくれた。「寺子屋フジサキ」でロイズさんが用意してくれたのと似てるな。
「これでいいか?」
「わーい、ありがとう! これなら何回も書き直せるね!」
「……まあな」
「ではマスター、いきますよ」
「よーし、来い!」
「『こんにちは、私はチヒロです。』」
「ん……」
一番最初に習ったやつだよね。確か……。
「……こりゃまた汚い字だな……」
「うるさいな。――よし、できた。どうよ、フジサキ!」
自信満々に見せる。
しかしフジサキは、ふーっと長い溜息をついた。
「マスター、『こんにちは、あなたはチヒロです。』となっております」
「えっ!?」
「わははは……。それぐらい、早けりゃ5歳のガキでも書けるぞ?」
「もう、笑うなあ! 勉強し始めなんだから仕方ないんだよ!」
「ふーん……本当に知らねぇんだなあ……」
グレッグさんは何かを納得したようにうんうん頷いていた。
このまま、≪ 21 ≫ へ進んでください。




