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JKのアタシが異世界転移(以下略)ゲームブック版  作者: 加瀬優妃
第2章 アタシと、ローナ村
349/777

2-≪ 225 ≫

≪ 225 ≫


 それから約30分後。フランツ副隊長が戻ってきた。

 椅子に力なく座ったまま所在無くテントの中を見渡していたアタシは、慌てて居住まいを正した。


「君達の今後の処遇が決定したから、報告するよ」


 向かい側の椅子に腰掛けたフランツ副隊長を見つめて、次の言葉を静かに待つ。


「チヒロ、君とあの共犯者の男を城塞都市マルトゥスに護送することが決定した」

「え? どうして!? 容疑は晴れたんじゃないんですかッ!?」


 ガタンと大きな音を立てて、アタシは椅子から立ち上がった。

 城塞都市マルトゥス……ピスタさん達から聞いた話によれば、王都に最も近い大都市で、過去の戦争では王都を守護するため最後の防衛線となり、絶対的な防御、難攻不落であることから『鉄壁のマルトゥス』の異名で呼ばれていたそうだ。

 村に帰れると思っていたのに、何故そんな都市に護送されなければいけないのか、納得がいかない。

 どうして? という顔でフランツ副隊長を見ると、彼は申し訳なさそうな顔で溜息をついた。


「最後まで聞いてくれ。申し訳ないが、君の容疑は完全に晴れたわけじゃない。僕の一存では決められない事なんだ。近年、ティルバ連合は不穏な動きを見せている。スパイ活動や暴動や反乱に見せかけた王都への工作活動……挙げればキリが無い。また、戦争を仕掛けてくる可能性が捨てきれないんだ」

「だから、アタシはスパイじゃないって何度も……」

「そう。仮に君がスパイではないとしても、君は異世界から来たと頑なに主張している。言ってしまえば得体の知れない人物だ。ティルバ連合が魔術を使って、何らかの理由で召喚した可能性もある。そこで我々は君を厳重に監視する必要があると判断した」

「そ、そんな……」


 フランツ副隊長の説明を聞いて、アタシはよろめきながら力なく椅子に座った。

 スパイじゃなくてもどのみち、帰らせてくれないつもりだったんじゃないか。

 人をぬか喜びさせておいて、どん底まで突き落とす。

 あまりにも酷すぎる仕打ちだ。


「どうしても村に帰りたいのかい? 君にとってはむしろ好都合な話だと思ったんだけど」


 呆然とするアタシに、フランツ副隊長が尋ねてくる。

 アタシは思わず、彼の緑色の瞳を睨みつけた。


「あの村には、アタシを心配して待っていてくれている人達がいるんです。たった1週間しか生活していなくても、情は移るもんなんです!」

「その村の誰かが君を密告したのにかい?」

「それは、あなたたちが考えたデマでしょ? 村の人達がそんな出まかせ言う筈がないもん」

「認めたくないだろうけど、密告は事実だ。例え君がこのままお咎め無しで村に帰っても、また同じ事が起こる。君の存在を快く思っていない人々がいる限りね。だったら、君が行きたいと思っていた王都に程近い位置にあるマルトゥスに拠点を移した方が良いとは思わない? 厳重な監視とはいってもある程度は行動に自由はあるし、疑いが晴れれば我々は君を解放するつもりだ。その後は、王都に行こうが村に戻ろうが君の自由だ。どうだい? 悪い話じゃないだろう?」

「……」


 密告は本当だったらしい。ならば、あの村にはアタシの居場所はない。

 移送と言うと言葉は悪く聞こえるが、ただで運んでもらえる。

 しかもマルトゥスに行っても、投獄や監禁をされるわけではないらしい。

 容疑が晴れ、自由になれば王都にも行ける。ローナ村の村長夫婦にも会える。

 確かに美味しい話――かもしれない。





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