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≪ 213 ≫
誰が見てもイケメンか爽やか好青年だと言うだろう。ただ、アタシは普段イケメンのフジサキを見慣れてしまっているため、全くトキメいたりはしないがね。
「グレッグ、ここからは僕に任せてくれないかい?」
「いや、しかし……」
「大丈夫、隊長には僕から言っておくから」
アタシをヨソに、勝手に話を進める2人。
何でもいいけど、早くしてくれよ。
こちとらバイトを無断欠勤して取り調べられてんだからさ。
おっさんは副隊長に言いくるめられたらしく、一度振り返りはしたもののテントから出て行った。
代わりにアタシの前には副隊長が座った。牽制のために軽く睨みつけておく。
すると彼は、眉を下げて肩をすくめて見せた。
「おやおや。折角、可愛らしい顔をしているのにそんな目つきをしたら台無しだよ。もっと気を楽にして。グレッグも悪気は無いんだ。ただ、あれが彼の仕事なのさ」
「アタシ、早く村に帰りたいんです。とっとと取り調べてくれませんか?」
穏やかな口調の副隊長に反して、アタシの言葉はトゲトゲしい。
この状況でお世辞なんて言われても癇に障るだけだ。アタシはこんな事をしている暇は無い。『元の世界に帰る』という自分の目的を達成するために、村でバイトをして少しでもお金を貯めなければいけないのだ。
「まぁ、そう突っ掛からないで。僕はフランツ・コルデア・ブレイズ。この隊の副隊長を務めているんだ。君の名前は?」
「……チヒロ」
「チヒロ……素敵な名前だね」
暢気に自己紹介を始めたフランツと名乗るこの副隊長。
アタシは眉を寄せる。終始フランツは笑顔だが、これはフジサキとは違った意味でポーカーフェイスだ。
何を考えているのか、発する言葉の裏に何があるのか、まるで掴めない。
唇が、やけに乾く。舐めて湿らせるが、すぐにカサカサになってしまって意味が無い。
この男、厄介だ。
直感的にそう思った。
依然、ニコニコしながらアタシを見つめるフランツと静かに焦り出したアタシ。
この場にフジサキがいてくれたら……アタシは咄嗟にそう思った。
フジサキの言葉はアタシに冷静さを取り戻してくれる。
――だが、ここに彼はいない。
取調べという名の腹の探りあい合戦、その火蓋が切られた瞬間だった。
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