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≪ 207 ≫
「マスター、この世界の文字の習得はやはり最優先すべき事柄のように思います」
4日目の夜。フジサキがハーブティを片手に真剣な表情で言った。
「あ……うん。今、勉強中なんだよね?」
「私もですが、マスターもです」
「……」
まぁ、確かに……。
今日の子守りで、小さな女の子が絵本を読んでくれって持って来たんだよね。
だけどアタシは、こっちの世界の文字は読めないから断るしかなくてさあ……。
そしたらガキ大将の男の子に「え~巫女様、大人なのに字も読めねーの?」って馬鹿にされた。
アタシを散々おちょくっていたが、タイミング良く迎えに来た母親に「巫女様に失礼なこと言って! あやまんな!」と拳骨を貰っていた。
ざまぁねーぜ。
……とは言うものの、あのガキ大将は読める訳で……。
「私の方は、今晩でほぼ習得できるかと思います。その後、マスターにも手解きをいたしたいと思うのですが」
「そうだね」
確かに、馬鹿にされたままじゃ、ね。
「頼むね、フジサキ」
「かしこまりました」
フジサキが妙に丁寧にお辞儀をした。
そっか……文字の習得、か。……確かに。
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