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着いた先は、簡易的に建てられた馬小屋だった。
朝靄の中、馬達の嘶きや蹄で地面を叩く音が聞こえる。
フランツ副隊長は一頭の馬に近づいた。
美しい栗毛の馬。サラサラなたてがみを揺らしながら副隊長に顔を寄せる。
異世界にも地球の馬とよく似た馬が存在している。
異世界人って、ファイナルなファンタジーに出てくる黄色の鳥馬とか、戦争で戦うために調教されたオオトカゲとか、ご主人様しか乗せたがらない大きな鹿とかに乗っているものだとばっかり思っていたから、拍子抜けというか、ちょっとガッカリした。
馬の手綱を解いて馬小屋から出すと、フランツ副隊長は鞍や鐙を手早く点検した。
「あの、その……アタシ、馬を生で見るのも乗るのも初めてなんです」
近くで見るとかなりデカい。牛に追いかけられた経験からどうしてもこの手の大きな家畜は警戒してしまう。
噛んだり、蹴ったりしないよね?
「そうなの? この子の名はアルストロメリア。大人しい子だから触っても大丈夫だよ」
アルストロ……これだから横文字は。長いから『あっちゃん』で良いや。
あっちゃんは、初めて見るアタシの顔をジッと見つめてきた。
その目が、瞬きする度にバチバチと音がした。
……あっちゃん、睫毛が長いね。羨ましいな。
確かに大人しくて、可愛い女の子……女の子だよね?
あっちゃんに恐る恐る近づいて観察していると「ちょっと失礼」と後ろから声がして、グイッと脇に手を差し込まれて持ち上げられた。
「わ、うわわぁッ! ちょ、なに!?」
「よっと!」
アタシは軽々とあっちゃんの背中の上に乗せられて、バランスを崩しながらも必死に跨った。
その後ろにフランツ副隊長がヒラリと華麗に跨った。
フランツ副隊長は細身の見かけによらず、どうやら脱いだら凄いのよの部類の人らしい。
それにしても馬に2ケツ……だと?
友達とチャリで2ケツしてお巡りさんに追いかけられた苦い思い出が蘇った。
手綱を手にしてアタシを前にしっかり座らせると、フランツ副隊長は鐙を蹴って、あっちゃんを走らせた。
「時間が無いから急ぐよ。しっかり掴まって!」
「思ってたより、高いし……てか、メッチャ揺れるし早いぃいいッ!」
走り出したあっちゃんは風のような速さで走った。
アタシは落ちない様に必死に鞍にしがみ付いていた。
お母さんがダイエットに買った乗馬マシンと全然違う。揺れがダイレクトに身体に響いてくる。
尻が痛い……後で『アタシ、実は痔なんです。ウフフ』とか暴露しなくちゃいけなくなりそうで怖い。
フランツ副隊長含め、騎士の人達はよくこんなのに毎日乗ってられるな。
アタシは一日乗ったら数日は乗りたくない。
移動手段が徒歩・馬・馬車しかなさそうなこの世界は不便な事この上ない。
●○●CHOICE TIME!●○●
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