2-≪ 190 ≫
≪ 190 ≫ ~ 5th Scene Start ~
新しい朝が来た、希望の朝だ。喜びに……喜びにぃ……あれ?
その後の歌詞、何だったっけかな? 覚えてないや……。まぁ、いっか!
窓から差し込む朝日でアタシは眼を覚ました。
ベッドから立ち上がって、うーんと大きく背伸びをする。
テレサさんが昨晩、『乾きましたから、畳んでおきましたよ』と置いていってくれた自分の制服に袖を通す。
洗濯機も電気アイロンもないはずなのに、制服には皺一つない。
テレサさん、クリーニングの天才なのでは?
などと考えつつ、部屋の隅にある備え付けの鏡台を覗き込んで身だしなみを整えた。
異世界に来て、最初に迎えた朝だ。これからローナ村での新生活が始まる。
そう考えると断然、気が引き締まった。
「おはようございます」
「あら、おはよう。まだ寝ていて良かったのに」
部屋を出て、昨晩みんなで夕食を食べたリビングを通り抜け、キッチンへと向かう。
夕食前に一通り家の中を案内されたので、場所は把握している。
朝食が出来上がったら起こしに行ったのに、とキッチンから笑顔のテレサさんが顔を出した。
パンの焼ける良い匂いと鍋をかき混ぜる音がする。不覚にもお腹が鳴りそうになった。
「何か、早く起きちゃいました。お手伝いします」
腹の虫が鳴き出す前に、アタシはキッチンへと足を踏み入れた。
するとそこにはもう一人、昨日振りに見る人物がいた。
「マスター、おはようございます。良くお眠りになれましたか?」
「おはよう、フジサキ……って、アンタその格好、どうしたの?」
テレサさんの隣でポーカーフェイスのまま、鍋をかき混ぜつつ、そつのない挨拶をするフジサキ。
アタシより早起きとか、一体何時に起きたんだコイツ。
いや、それよりもだ。ツッコミたいことがある。
フジサキを見た瞬間、危うく吹き出すところだった。
フジサキの現在の服装は、何故かスーツに白のフリルエプロンという出で立ちだった。
ミスマッチにも程がある。キッチンに立っているその姿は、違和感しか発していない。
マジでやってんのか、それ? 出勤前のサラリーマンだってそんな格好しないぞ。
コメディなの? 朝から一発ギャグをかまさなきゃいけないノルマでもあるの?
ギャップ? もしかして、ギャップ萌え狙ってる?
「テレサ様が用意して下さりました。これでしたら万が一、食材や汁物が跳ねても服飾品を汚しません」
「朝食の準備を始めようと思ったら起きていらっしゃったの。お手伝いを買って出てくれたんだけど、せっかくのお洋服が汚れちゃうから結構よって断ったの。そしたら『エプロンを貸して頂けませんか?』って……フジサキさん、男の方なのに手際が良くて驚いたわ。おかげで助かっちゃった」
ウフフとはにかんだ様に笑うテレサさんと、どこかドヤ顔のフジサキが顔を見合わせていた。
エプロンの用途は間違ってない……間違ってないけどさぁ。
いや、テレサさんが助かったと言うなら、何も言うまい。
良くやったフジサキ、アタシは出鼻を挫かれたけどな。
★チヒロは【 Key word 】の1つ、【 笑 】を手に入れました。
※【 Key word 】がMAXの20個だった場合は、もっとも古い【 Key word 】を破棄し、【 笑 】を入手して下さい。
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