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その畑のおじさんが草がぼうぼうになっている一画を指差した。
「ここの草むしりとかどうかね?」
「草むしりですね! はい、やってみます!」
草むしりなら元の世界でもやったなあ……。学校で、班に分かれて黙々ちまちま引っこ抜いていたっけ。
そのうち男子がサボって遊びだして、クラス委員の女子がキレて……。
「……ん?」
ボケーッと昔のことを思い出しながら草むしりをしていると、まだ手をつけていない左斜め前の草がガサッと揺れた。
そして、猫ほどの大きさもあるバッタが……。
「――ぎゃああああぁぁぁー!」
アタシは思わず逃げてしまった。
な、な、何だありゃあ! 何、あの大きさ! バッタ!? ほんとにバッタ!?
「何だあ?」
と言いながら、おじさんがやってきた。
「ああ、これはダイオウバッタっていうんだ」
「ダイオウ……」
「草むらによくいるんだよ。コイツがいる畑はよく肥えてるっつーことだ」
「そ、そ、そうなんですか……」
トノサマバッタなら聞いたことある……けど……ダイオウ……。
アタシには大魔王にしか見えない……。
おじさんは「じゃあ種まきしてみるかー?」と言ってくれたけど、アタシは丁重に断った。
そもそもアタシは、虫が大の苦手だ。人畜無害だと言われても、元の世界では見たこともない超巨大昆虫が飛び出してくるかもしれない草むらになんて、近づくことすらできなかった。
……駄目だ、アタシなんかはお荷物になるだけで助けにはならないよ。
仕事としてお金を貰う訳にはいかない……。
★チヒロは【 Key word 】の1つ、【 叫 】を失いました。
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