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小人族ピスタ……?
じゃあ、この子の名前がピスタってことかな。
「いろいろな品物があるんだね、ピスタ君!」
親しみを込めて言ったつもりだったけど、男の子はアタシの何気なく言った『ピスタ君』発言で一瞬固まってしまった。
アタシが『え?』という顔をすると、すぐに持ち前の営業スマイルに戻った。
「ピスタ君……ですか。ふふふ、私、こう見えましても齢60となったばかりでして……」
誰が『ピスタ君』だ……さんをつけろよ、デコスケ野郎。
そんな心の声が笑顔の裏側から聞こえてきた。
ヒエ! すみません、ピスタさん。今後は気をつけます。
「ディス・ノグディスと呼ばれる大陸に、人族以外の種族、全部ひっくるめて魔族と通称する種族達がそれぞれの文化を持って暮らしているそうです」
フジサキがそっと囁いた。
この野郎……知ってたんなら、早く言えや。
★チヒロは【 Key word 】の1つ、【 小 】を手に入れました。
※【 Key word 】がMAXの20個だった場合は、もっとも古い【 Key word 】を破棄し、【 小 】を入手して下さい。
ふと荷馬車の脇を見ると、これまた初めて見る種族の男性がいた。
天然のケモノ耳と、尻尾……。
「マスター、あの方は……獣族、アマローク族の方のようですね」
「へえ……」
「じろじろ見ては失礼ですよ」
フジサキにそう注意されたけど、アタシは目を逸らすことができなかった。
だって、ここにオタクがいたら涎を垂らして飛びつく存在だ。『2次元が3次元になった奇跡』と言っても過言ではない。
長身のその男は灰色の髪にピンとたった犬耳、鋭い灰色の目、鍛えられた褐色の肌、ローマ時代のグラディエーターの様な皮製の軽装備を身にまとい、剥き出しの腹部は腹筋が綺麗に6つに割れている。
カレーのルーみたいだ。後ろから押したら飛び出すんじゃないだろうか?
更にピッチリパッツンパッツンの革製のズボンからはフサフサの尻尾が出ている。
腰には使い込まれていそうな分厚くて刃先が反った剣を携えていて、腕を組みながら絶えず辺りを警戒するように見回している。
「ほほう、お客様。ソールが珍しいようですね? 残念ですが、彼は当店の大切な用心棒でございます。非売品でございますので、販売はしておりません」
穴が開くほどソールという名前の彼を見つめていると、肩から下げた鞄から分厚い台帳を取り出し、村人からの注文を書き取っていたピスタさんが笑いながら話しかけてきた。
商人ジョークなんだろうけど、結構笑えないタイプのヤツだ。
「あ、すみません。人族以外の種族の方を初めて見たので」
「なるほど、そうでございましたか。そちらの御仁が仰っていた通り、彼はアマローク族出身で頼りになる旅のパートナーでございます」
アマローク族――。
「狼の様な耳と尾を持っており、聴覚と嗅覚、また俊敏性に長けた種族で、集団で狩りを行う生活をする狩猟民族ですね。獣族は、人族よりも遥かに優れた肉体と鋼のような忍耐力を兼ね備えているため、過去のイオ・ヒュムニアの戦争では傭兵にするために、たくさんの獣族が奴隷として連れてこられたのだそうです」
またもやフジサキが補足説明をする。
だから、そういう情報はもっと早く……。
それにしても……それは、元の世界で言うなら、アフリカの黒人奴隷のような扱いだ。
じゃあ、おそらくソールさんは戦争で連れて来られた奴隷の末裔なのだろう。そんな歴史があったら、獣族は人族を極端に嫌ってるんじゃないかな。
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