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「しかし、マスター」
フジサキが心配そうな顔をした。
「通学途中に野良犬に追いかけられて大変だった、ということが過去にあったと記憶していますが」
「な……何でそんなこと知ってんの?」
「日記に書いておられました」
「あ……」
あ、そうか、日記、日記ねー……。
イライラしたときメモ帳に殴り書きしたやつか。
「でも、それは犬の場合だし、他の動物ならイケるんじゃない?」
「それなら、よいのですが……」
★チヒロは【 Key word 】の1つ、【 暴 】を失いました。
牧場には、牛みたいな生き物と馬と羊、それと養鶏小屋もあってニワトリがけたたましく鳴いていた。
働いている人は、男の人と女の人、半々だ。
ここでも「巫女様に、そんな……」と言われたけど、どうにか頼み込み、やらせてもらった。
……けれど。
牛の寝床に干し草を敷こうとして、蹴られた。
羊の群れを追って柵に追い込もうとして、逆にアタシが追い込まれた。
鶏の産んだ卵を回収しようとして、手の甲を赤く腫れるまで突かれた。
……結論。アタシ、動物に向いてない。
フジサキの予想的中ってか。
誰だっけな? 猛獣に噛みつかれて大怪我した女優さん、いなかったっけ。
フェロモンなのか何なのか知らないけど、何もしていないのに動物にめっちゃ嫌われる体質の人がいる、とは聞いたことがあるけど……。
アタシ、まさかのソレだったのか……。
「マスター……これは……」
「うん……」
フジサキが全てを語らなくても、わかる。
動物相手の仕事は、アタシには向いてません。
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