2-≪ 100 ≫
≪ 100 ≫
テレサさんに止められる訳にはいかない。それに、巻き込む訳にもいかない。
アタシはさっとテレサさんを右手で制した。
それに気づいたテレサさんがハッとしたように歩みを止めた。
「ごめんなさい、テレサさん。アタシ……あの人たちと一緒に行きます」
「……そんな……」
「これ以上、お二人に迷惑はかけられません」
「……」
アタシの決意が固いと感じたのか……テレサさんはそれ以上、何も言わなかった。
「行くのか? 行かないのか? そろそろ、はっきりしてもらえないだろうか?」
レトリバー隊長が焦れたように口を開いた。
「うっるさいなぁ、空気読めないのかよ……はいはい、ちゃんと行きますよ! それより、ちゃんとこの村に帰してくれるんでしょうね?」
舌打ちしつつ、レトリバー隊長とその他を精一杯、睨みつける。
それを迎え撃つようかのようにレトリバー隊長も見下ろしてくる。
あの鋭い眼光に負けてはいけない。これは意地と意地のぶつかりあいだ。
売られた喧嘩だ、買ってやるよ。激おこ状態のJKを舐めんなよ。
「あぁ、容疑が晴れれば即刻、村へ帰す事を約束しよう」
「おおっと、何か勘違いしてませんかー? 帰すだけじゃ駄目ですよ。アタシの容疑が晴れたその時は……」
十分に間を置いてからアタシは息を吸い込んでこう言い放った。
「隊長を含め、討伐隊の皆様全員に土下座して、アタシとローナ村の皆さんに詫びて貰いますからね!」
一度で良いから言ってみたかった台詞を言えて、アタシは満足した。
不適に笑って腕を組み、余裕なんだぜと見せ付ける。
レトリバー隊長の眉がピクッと動いたのを、アタシは見逃さなかった。
「お前達、その少女――『終末の巫女』を連行しろ」
そう短く命じて、アタシ達に背を向けるとレトリバー隊長は放心状態のテレサさんに何か告げていた。
さらに、先ほどの戦闘行為でフジサキにもスパイ容疑が掛かってしまったらしい。
すまん、フジサキ。
素直に謝ると、フジサキは『マスターの身の安全をお守りするのも、私の務めでございます』と言ってくれた。
巻き込んだ形になるけど、1人よりも2人の方が心強いのも事実。
アタシとフジサキの手に縄がかけられる。こんなことしなくたって逃げねーよ……まぁ、いいけどさ。
門に向かう前に心配そうにこちらを見つめるテレサさんにアタシは笑顔で言った。
「すみません、テレサさん。ちょっと行って来ます。心配しないでください、夕食までには帰ってきますから」
「チヒロさん……。こんな時ほど、私がしっかりしなくちゃいけないのに、本当にごめんなさい。出先の主人に伝えて、すぐに釈放してもらえるように討伐隊に掛け合って貰いますからね。それまでどうか耐えて頂戴ね」
こうしてアタシとフジサキは、涙ぐむテレサさんを1人残して、ローナ村と隣村の中間地点に陣を張る討伐隊の本部へと連行されたのだった。
~ 7th Scene End ~
★チヒロの【 Key word 】を必ず記録しておいてください。
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