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その時ちょうど、正午を知らせる鐘が響き渡った。
ロイズさんがアタシとフジサキに向かってにっこりと微笑んだ。
「チヒロさん、フジサキサさん。家に戻りましょうか。とりあえず昼食にして……それからまた、考えましょう」
「……はい……」
はぁ……。アタシって何て役立たずなんだ……。
凹んでいると、牧場の奥から休憩に入ろうとする男の人達の声が聞こえてきた。
「あれ、お前、家に帰るのか?」
「今日は、午後から自警団だよ。前に村の子供が森で魔物に襲われそうになっただろ。討伐隊も森全部を見張れる訳じゃないからなー」
「そうか、気をつけろよ」
「おう。でも今日は家でかーちゃんの昼飯が食えるからさ」
「あったかい飯か。それはいいよな。ほら、肉なんかもうカンカンに固くなっちまってるよ」
「ははは。じゃあなー」
「おう」
そうか、自警団って村の人で交代でやってるんだっけ。
魔物が村に出てきたら、大変だもんね。
こうやって、この小さなローナ村では皆が協力して、頑張ってるんだな……。
何もできないアタシは、ぶっちゃけ力不足な存在だ。
こう考えてみるとチート能力で勇者とか魔術師をやって、生計を成り立ててる転生主とかトリッパーの皆さんは凄いと思う。
尊敬しちゃうな……なりたいとは思わないけど。
ふう……。お仕事、想像以上に難しかった。
村人さん達に迷惑かけたし、やらなくていい仕事を増やしてしまった。
バイトなんて、楽勝楽勝! ちょちょいのちょい、余裕で出来るっしょ! と高を括っていた自分が恨めしい。
罪悪感で押しつぶされそうになった。
「ぐぎぎぃー! 思ってたんと、ちがーうッ!」
「マスター、ご不満はともかく、その不愉快な奇声は控えてください。近所迷惑です」
「主人に対して、辛辣かよ! 奇声上げるなって方が無理な話だから! もっと、こうさ! 転移ヒロインって、優遇されるんじゃないの? 村の人達には悪いけど、貴族のお屋敷でイケメン達に囲まれて、ドキドキでウハウハな逆ハーレム日常を送るんじゃないの? アタシだけ、始まりの村で足止め食らって、ギリ貧アルバイト生活スタートって……不公平じゃない!?」
「……ご自身をヒロインだと思っていらっしゃったことに驚愕です」
「だから、なんで辛辣!? 異世界転移して、村人から《終末の巫女》って呼ばれてるんだよ? どっからどう見たって、ヒロインじゃん!」
「マスター。辛いお気持ちは分かりますが、もっと現実に目を向けてください」
「むぎぃいいッ! 自分がイケメンでチート能力待ってるからって上から目線なんかー?」
「千里の道も一歩からですよ。さあ、今日も頑張りましょう!」
「頑張りましょう! じゃねーよ。おい、コラ。話と目を逸らすんじゃねぇ」
応援と励まし、助言を受けたアタシは打たれ強さのレベルだけが上がった(あくまで体感)。
それはいいとして、だ。
アタシにも何かできること……ないかな?
●○●CHOICE TIME!●○●
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