終章
父親似の漆黒の髪をひるがえし、帝都ベスビアスを振り返る。ずいぶん遠くはなれてしまっていた。
「置いてきた弟が心配なのですか」
同じく父親似の茶髪の騎士が、声をかける。
「ちょっとね。黙って出てきてしまったから」
昇進試験の最中であるため、いらぬ心配をさせまいと気を遣ったのだ。
「オリヴァーは良かったの? ファーレンハイト家の長子として、エリス先生に弟子入りしなくて」
弟子入りを断ってまで、旅に同行してくれると決めてくれたのが心残りだったのだ。
「家は弟が継ぎますよ。それにゼノビア様をお守りするよう父上にも、言われていますからね」
未知なる場所へ続く街道へ顔を向け、楽しげな色を瞳に宿した。
「じゃあ、行こうか。母上と父上が歩んだ道へ」
了
〈第三部・参考文献〉
・『新訂 孫子』(訳注者 金谷治/岩波文庫/2000年4月14日 第一刷発行)
・『「孫子の兵法」-考え抜かれた「人生戦略の書」の読み方』(著者 守屋洋/知的生きかた文庫/1984年11月10日 第一刷発行)
・『「るるぶ ドイツ」-ロマンチック街道』(編者 田中美穂/JTBブリッシング/2015年9月1日 初版発行)
・『るるぶ イタリア』(編者 米谷奈津子/JTBブリッシング/2017年11月15日 初版発行)
・『「ローマ人の物語8」-ユリウス・カエサル ルビコン以前〔上〕』(著者 塩野七生/新潮文庫/2004年9月1日 初版発行)
・『「カエサル戦記集」-ガリア戦記』(訳者 高橋宏幸/岩波書店/2015年2月24日 初版発行)
・『呉子』(訳者 尾崎秀樹/中公文庫/2005年9月25日 初版発行)
・『兵法三十六計』(著者 守屋洋/知的生きかた文庫/2004年7月10日 初版発行)
・『「よくわかる孟子」-やさしい現代語訳』(著者 永井輝/明窓出版/2005年3月20日 初版発行)
・『魔女の薬草箱』(著者 西村佑子/山と渓谷社/2006年4月30日 初版発行)
・『ハーブ療法の母ヒルデガルトの家庭でできるドイツ自然療法』(著者 森ウェンツェル明華/BABジャパン/2015年8月30日 初版発行)
・『はじめてのハーブ手帖』(メディアバル/2013年6月6日 初版発行)
・『基礎からよくわかるメディカルハーブLESSON』(監修 佐々木薫/河出書房新社/2014年7月20日 初版発行)
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