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日本封鎖

 ドン・ネビルは苛々しながら、自衛隊が用意してくれた特殊なテントの中に入り、ノート型パソコンを開いた。

 そこには、憤怒の顔をした米陸軍将軍の顔が出てきた。

『いったいどういうことだね?』

 ドンは首を傾げた。

「どういう意味ですか?」

『君は総理大臣から与えられた権限を使い、日本の全ての空港と港を封鎖したではないか!』

「それが?」

『そんなことをして、日本に滞在中のアメリカ人が日本から出られないじゃないのかね?』

「確かにそうですが、これは感染を日本国内に止めておきたいんです」

『これは一線を越えている』

「いいえ、いいですか」

 そう言って、一息つくと、真剣な顔をした。

「現在、日本は正体不明のウイルスに浸食されています。いいですか?これは空気感染はしませんが、我々科学者の予想をはるかに超える速度で感染が拡大しています」

『ああ』

「いいですか?まだ感染発生からそんなにたっていませんが、感染は関東地方全域とその他の数県で発生しています。たった数週間で関東全域ですよ?それが、もし、我らがアメリカ合衆国で発生したらどうなります?ヨーロッパは?ロシアは?ブラジルは?」

『……』

「私は聖書のように起こりうる黙示録を食い止めるために、最善を尽くしています。あなたはどちらが大事ですか?日本?日本国内にいるアメリカ国民?それとも、祖国アメリカ?」

『君の言う通りだ……』

「自衛隊は市民を射殺するのになれていませんよ。今できることは、感染地域を封鎖し、そこにいる全市民が死亡するまで待つしかないのです」

『そうだな……でも―――』

「感染者だ!」

 外から声がした。

 ドンは引き出しから、自動拳銃を抜き出し、テントから出てみる。

 すると、3人の防護服を着た自衛隊員が小銃を向けていた。銃口の先には、【感染者】がいた。

「何をしている?撃て!」

 ドンは冷酷に叫ぶ。

「お、俺にはできない」

「くそったれ!くるな!」

「君を撃ちたくない!」

 ドンは内心悪態付きながら、拳銃で感染者の頭を撃ち抜いた。

 そして、テントに戻る。

「それでは将軍、また後で!」

『お、お…』

 画面から将軍が消え、代わりに将軍より大物が現れた。総理大臣だ。

「総理」

『何だね?ネビル博士?』

「ついにこの検問所にも感染者が出現しました。政治拠点を日本本土から北海道か沖縄に変更することをお勧めします」

『ついに、そこの検問所まで』

「総理、時間がありません。日本本土封鎖を決定してください」

『しかし、野党から猛反発を受けている』

「反発程度でくじけないでください!これは政治の問題ではありません!世界滅亡の問題です!」

『……わかった、決定しよう』

 ドンはパソコンを閉じ、テントの外に出る。

「ここにいる最高指揮官は誰だ!」

 すると、自衛官が1人やってきた。

「私です」

「この検問所の隊員を撤退させろ。封鎖の準備をするんだ」

「封鎖って、ここですか?」

「いや、日本全土だ」



 ドンははっと目を覚ます。

 そこは、研究所の廊下にあるベンチの上だった。

 今までは、封鎖の最中の悪夢だったが、今度は封鎖前の悪夢を見た。

 いやな夢だった。そう、日本封鎖を助言したのは、自分だからだ。自分のせいで何億人もの市民が日本に閉じ込められた。しかし、あの決断は今でも間違えていないと信じている。


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