45話 梅雨限定メニュー
六月後半に突入しても変わらず続く梅雨。今日も目覚めて最初に聞いたのは、雨の音だった。
いつもなら湿気で髪が広がってしまう事に朝からストレスを感じてしまうところだが、今日の私は違う。
なんと言っても『それ』を一週間前からずっと楽しみにしてたからね!
私の学校の食堂には季節限定メニューという物が存在していて、今現在は六月中旬から七月中旬までの一ヶ月限定で登場する『それ』の時期だ。
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『梅雨バテ解消・特製冷麺』
梅雨という単語に含まれている梅が乗った、特製の盛岡冷麺である。
冷麺と言ってはいるが胃腸を冷やさないために殆ど常温で提供しているみたいだ。さすが学校の食堂、健康に気を使ってくれていてありがたい。
さっぱりしていて食べやすく、また、発汗を促す生姜やシソ、ねぎもたっぷり添えられている。加えて利尿作用のあるコーン茶もセットで付いてくるので、梅雨バテ解消に繋がる、そんな最強メニューなのだ。
ちなみにお値段は驚きの五百円、学食名物の彩り野菜カレーと同じでワンコインだ。お店だと千円くらいはしそうなのに凄い!
これは『良い学習は良い環境から』という信念に基づいての値段設定らしい。
確かにこういう季節限定メニューがワンコインで食べられたらモチベーション爆上がりする。それに、お財布の負担も少ないからバイトしないで、空いた時間に勉強、結果として成績がアップしたって話も聞くし……な、なんて完璧な戦略なんだ。
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食堂で私を待つ冷麺さんに想いを馳せること半日。
ようやく四限の授業が終わったので、竜胆さん達に声をかけて一緒に食堂へと向かう。
「奈緒ちゃん眠そうだね」
「うん〜、梅雨だから怠めかも〜」
そんな梅雨バテ中だった奈緒ちゃんも、特製冷麺を食べればほら、この通り!
「美味しい〜!」
「なおちん、生姜とシソあげるー!」
「わぁ〜、ありがと〜」
もうにっこにこです。……まぁ食事時に奈緒ちゃんが満面の笑みを浮かべているのはいつもの事なんですけどね!
「さっぱりしてて美味しいわね」
「ね! 美味しいー! それに、梅とか生姜とか色々と入ってるおかげで味変できて飽きないしね!」
「そうね、トッピングが多いのは嬉しいわ」
そうやって竜胆さんと絶賛しながら食べ進める。
ちゅるちゅるちゅる……うん、最高だ。
私的には特に梅がやばい。冷麺に合い過ぎている。真っ赤な色が凄く映てるし、酸っぱい味は食欲を増進させるし……なんだこれ、最強か?
そういえばなんで梅雨って『梅』の『雨』って書くんだろう。
「竜胆さんは梅雨の語源って知ってる?」
「……知ってるわ。梅が熟す頃の雨季だから梅雨、と言うのよ」
少しの間の後にそう答える竜胆さん。しかし、その手に持つスマホには「梅雨 由来」の検索ページが表示されていた。
「ねぇ! カンニングしてるじゃん!」
そう私が突っ込むと、竜胆さんは小悪魔的に笑った。
可愛いなぁ、もう! 梅雨の怠さなんて今の一瞬で吹き飛んだよ……!
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