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鷹と真珠の門  作者: paiちゃん
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J-114 空中軍艦の拠点を探そう


 30時間ほど掛けて山麓の拠点に戻ってきたのは出発してから5日目の昼過ぎだった。

 時間外だけど、昼食を作ってくれた食堂の軍属の小母さん達には感謝しかない。


「報告は昼食後に行うと、連絡を入れてありますからゆっくりと食べられますね」


「ピクトグラフは渡したのかにゃ?」


「報告時には映像記録を見ることができると思います。それと、出発前に全員を映した画像も8枚を作って欲しいと頼んでおきました」


 これで母さんにお土産ができそうだ。

 ミザリーも若いころの冒険の証として、嫁いだ先で見せることも出来るだろう。

 とはいっても、まだまだ先になりそうだけどね。


「しかし、飛行船が来ていたとは驚いたな。補給をしてすぐに出発してきたに違いない。荷下ろしの最中だが、終われば過ぎに出掛けるに違いない」


「だが、1隻だけだったな。やはりもう1隻は兵士を運んでくるということになりそうだ」


「1個小隊だと聞いています。車両を運ぶらしくそれほど兵士を運べないということでした」


 単なる自動車でもなさそうだ。装甲車辺りになるのかもしれないな。

 戦車相手には苦労しそうだけど、それは機動力でカバーすることになるのだろう。


「飛空艇の燃料と爆弾も運んでくれたのかな? 3回は出動できると前に聞いたんだが?」


「今回も運んできてますよ。でも飛空艇は飛行船よりは燃費が良いと聞いてます」


 小さいからだろうね。だけど燃費が良いとなれば多目的に使われそうだな。

 

 昼食を終えて、コーヒーを1杯飲み終えると、リトネンさん達が指揮所に向かった。

 俺達は軍属の小母さんからワインをカップ1杯だけ戴いて、作戦成功を祝う。

 リトネンさん達が帰ってからでも良いとは思うんだけど、ハザンさん達は待ちきれないようだ。

 夕食後に、再度飛空艇の中でワインのボトルを開けることになるんじゃないかな。


「空中軍艦と飛行船の組み立て工場だったとはなぁ……。生憎と完成真近で無かったのが残念だが、復旧に1年以上となれば現在あるものを早くに撃墜したいものだ」


「ミザリー達に感謝だな。空からではあの建物の中身は分からなかった。暗号電信を解析して得た情報だ。かなり信憑性は高いに違いない」


「そうなると、帝国の空中軍艦と飛行船はどこにいるのかしら?」


 イオニアさんの呟きに、テレーザさんが問いかけている。

 それが分かれば、充実返上で向かいたいところだ。


「大陸が広いと言っても、戦争をしているところは私達の大陸だけなんでしょう? やはりこの近くにあると思うんだけどなぁ……」


 ミザリーの話に、皆が頷いている。

 思うところは同じということなんだろう。

 となると空中軍艦の拠点は、この山脈のどこかにあるということになるんだろうか?

 結構大きな飛行船なんだから、目立つと思うんだけどねぇ。


 カップ1杯のワインを飲み終えたところで、飛空艇に戻って時間をつぶすことにした。

 ミザリーはテレーザさんと一緒にブリッジで編み物を楽しみながら、たまに聞こえる帝国軍の塗船の傍受をするのだろう。

 俺とイオニアさんはファイネルさんとハザンさんのチェスを見ながら一服を楽しむ。


 なんとなく、2人が次の駒をどこに置くかが分かるようになってきた。

 2手からどうにか3手先が分かるまでになっていたけど、ファイネルさん達は5手先まで読むと言ってるし、エミルさんは10手近く先を見通すらしい。

 まるで予知能力のような感じもするけど、駒の動きが決められているからわかるのだとハンズさんが教えてくれた。

 とは言ってもねぇ……。

 まだ勝負が付いていないように見えた時でも、『負けた!』なんて言い出すんだから、こっちは戸惑ってしまうんだよなぁ。


「駒の動きは読めても、人の動きは1秒先も読めぬ時がある。リーディルの父上は、それこそ数秒先まで読んでいると言われていたぞ……」


 狙撃は150ユーデ以上先の標的となる人物の動きを読む必要がある。

 銃弾の速度はおよそ毎秒600ユーデほどもあるそうだから、1秒先の動きを読めれば十分に思えるのだが、親父はなるべく即死させるべく狙撃を行っていたそうだ。

 長く苦しむよりは、突然にこの世を去る方が良いに決まっている。

 ヘッドショットに努めたのは、それが最大の理由だろう。

 どこでも良いというなら、目標は大きくなるし上半身を狙えば的はかなり大きくなる。

 だが、ヘッドショットということになるなら話は別だ。

 頭は常に動いている。立ち止まって話をしていても、動くんだよなぁ。

 それこそ、それまでの状況を判断して、次にどう動くかを想像しながら撃つことが必要だ。


「リーディルも、長く猟師をしていたのだろう? 電気ネズミを狩るのは、私には難しく思えるな」


「確かに、辺りをキョロキョロと動き回りますからね。できるだけ近づき的を大きくして、動きの一番少ない腹を撃つのが基本なんです」


「動く的でも、動きが少ない場所があるということか……」


 イオニアさんが遠くを見るような表情をして、思い出に浸っている。

 昔の軍隊での生活を思い出しているのかもしれない。

 コーヒーを一口飲み、新たなタバコを取り出して1本咥えると、俺にタバコのケースを差し出してくれた。

 シガレットケースから1本抜き取ると、マッチで火を点けてくれた。


「……そういうことか。それが、鷹の目の技ということになるのだな」


「何か分かったんですか?」


 俺の問いに、ファイネルさん達もチェスを中断してイオニアさんに顔を向けている。


「首だ! 人の動きの中で一番予想が付くのは、腰の動きだ。だが、鷹の目の狙撃はヘッドショットが基本だった。私も話を聞いてだいぶ練習はしたのだが、いくら射撃訓練で中心の的を射抜いても実践でヘッドショットを行うのは難しい。

 リーディルが良くもできるものだと感心していたのだが、頭の動きを見て狙撃していたのでは着弾点がズレてしまうことが多いことも確かだ」


「今だ! と思ってトリガーを引くが、それから銃弾が的まで到着するには確かに間があるからなぁ」


「1秒にも満たぬ時間だが、その間に目標は動いてしまう。俺達が腹を狙うのは、比較的動きが少ないことと、当たれば致命傷になるからでもある。

 それに……、命が消えゆくまでに、それまでの行為を悔いて貰わねばならんからな」


 ハンズさんの言う通りなのかもしれない。帝国軍の非道さは、税の免除を願い出た町の連中に何をしたかでも良くわかる。

 だがそれでは、いつまでも憎悪の繰り返しになりかねない。

 母さんの言う通り、相手は人間であるということを心に刻みこんでおこう。

               ・

               ・

               ・

 帝国軍の駐屯地への攻撃は、ピクトグラフによる攻撃成果の画像もあるし、ミザリー達が傍受した暗号電文による帝国軍の作戦本部への報告文もあるから成果報告は容易だと思っていたのだが……。

 リトネンさん達が付かれた表情で帰ってきたのは、出掛けてから3時間近く経ってからだった。


「成果が良くわかるのも善し悪しにゃ。次はボケた映像を取ることにするにゃ。ファイネルならできそうにゃ」


 ちょっとファイネルさんの評価が低い気がするけど、ファイネルさんは新しいものが好きなようだ。うんうんと嬉しそうに頷いている。


「とはいえ、高評価であったことは確かです。さすがは飛空艇、その指揮を執るリトネン殿の評価は王子殿下も『さすがである!』と感想を漏らしたぐらいですから」


 ミザリー達の、暗号解析の報告書もかなりの評価を得たようだ。

 新たに言語学者を3人ほど呼び寄せて、暗号解読の専門部署を作ったらしい。とはいえ、この拠点は窪地にあるからなぁ。

 通信兵を谷の上に送って、電文を常に傍受できる体制まで作ったようだ。


「ミザリー達を招きたいと、散々言ってたにゃ。でもちゃんと断ってきたにゃ」


 笑みを浮かべてリトネンさんがミザリーに顔を向けた。

 俺としてはその方が安心できるけど、ミザリーはどうなんだろうと視線を向けると、うんうんとリトネンさんに頷いていた。


「それで、私達と同じ疑問を持ったのです。報告が簡単に終わらなかったのは、それが原因でした」


 やはり思うところは同じということか。

 どうやら王子殿下も、俺達と同じ考えらしい。大陸の東に南北に連なる大山脈。このどこかに空中軍艦の拠点があると考えるのは、当然だろうな。


「明日はゆっくりと休んで欲しいということでした。明後日に山脈に沿って北を調査して欲しいと……。拠点の南は小型飛行船で調査するそうです」


「帝国軍の空中軍艦も、飛行船も与圧構造は持っていないみたいにゃ。となると、あまり高所に拠点を作っているとは思えないにゃ」


「なるほど、小型飛行船は与圧構造でしたね。高度3000ユーデ以上で巡航しても問題ないとなれば、調査で敵の空中軍艦と遭遇しても危険性はあまりないということですね」


「こっちは、逆に反撃できる武器を持ってるってことか。俺は北にあると思っているから調度良いな。見つけたら攻撃しても構わないんだろう?」


「もちろんです。期待していると言っておりました」


 ファイネルさんの問いに答えたのはエミーさんだったけど、リトネンさんはちょっと考え込んでいるな。やはりリスクがあると考えているに違いない。


「何もなければ、単なる航海になるにゃ。もったいないから、この辺りに爆弾を落としてくるにゃ」


 エミルさんが広げた地図に指を向ける。

 小さな村に見えるけど……、だいぶ山に近い場所にあるようだ。


「帝都を守る駐屯地の1つみたい。帝都を爆撃した時に傍受した電文の中に、この村の名前があったの。村に偽装した駐屯地というところじゃないかな」


 エミルさんの言葉に、俺達が頷く。それなら行き掛けの駄賃に丁度良さそうだ。4イルム砲弾を改良した爆弾4発だからね。


「ちょっと待ってください。……すぐ近くに町がありますね。これなら町の一部を駐屯地にするのが普通なんじゃないですか?」


「そうねぇ……。確かに、リーディルの言う通りかも。……これって!」


 地図を眺めていたエミルさんが何か思い立ったようだ。

 よくよく地図を眺めると、街を取り囲むように道がある。その道のいくつかに集落もあるようだ。

 それにおかしな話だが、街に向かって真っすぐな道がない。

 王都から延びる街道は、村に伸びている。その村を通って町に向かう道があるのだ。


「確かにおかしな場所にゃ。じっくり調べてみるにゃ」


 ひょっとして、その街に空中軍艦の拠点があるのかもしれないな。

 俺達の調査の範囲内だから、ちょっとした興味を満たすにも都合が良さそうだ。



 パソコンの調子が極めて悪くなってしまった。

 電源を入れて15~40分程度で、CPUの過熱で電源が落ちてしまう。

 突然で予想もつかないから、頻繁にファイルに音地手はいるんだけど……。

 とりあえず、新しいパソコンになるまでしばらく投稿が不定期になるかもしれません。

 

 


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