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鷹と真珠の門  作者: paiちゃん
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J-102 飛行船団との会合


「通信機を11番に合わせるにゃ。総指揮官の乗る旗艦の通信室に繋がるはずにゃ」


「連絡文は?」


「『現在南東に飛行中。予定時間前に会合地点に到着予定』でいいにゃ」


 星が消えて少しずつ周囲の景色が見えてきた。まだ陸上だけど、遠くに海が見える。現在4時過ぎだから、9時の会合時刻の2時間前には到着できるんじゃないかな。


「6時過ぎには到着するんじゃないかな? 今、この辺りよ」


 エミルさんが地図を挟んだ図番をリトネンさんの所に持って行って現在地を教えている。


「このまま行って、巨人の右足で南に向かうにゃ。ファイネル、後1時間はこのままの進路で進むにゃ」


「了解! テレーザ、代わってくれないか?」


「そうね。2時間ぐらい休憩しときなさい。リーディルも行って来たら?」


 テレ―ザさん達に顔を向けると、ファイネルさんが手招きしている。まだまだ時間があるからねぇ。

 コーヒーでも飲んでおこう。


 ミザリーは返信をメモに書き取っている。結構長文のようだ。

 邪魔をしないように、ブリッジを出ると給湯室でコーヒーを作る。できるまでにしばらく掛かりそうだから、砲塔区画に向かった。


「どうだ? だいぶ寝ていたようだが」


「俺の仕事はしばらく無いからなぁ。ノンビリ寝させて貰った。今日の夕刻には増槽を切り離すんだろう? それは手伝わないとな」


「案外夜になるかもしれんぞ。見ての通り、飛空艇のエンジンは後翼の2つの補助エンジンだけで動いているからなぁ。それも巡航速度よりも抑えているから、燃料消費が少ないんだ」


 案外、向こうについても燃料がかなり残っているかもしれないな。

 増槽を4つ搭載しているけど、船尾の増槽は投棄しないでそのまま残しておきたいところだ。

 拠点に残しておくなら、帰りに燃料を入れて使えるかもしれない。


「コーヒーを持ってきますね!」


 給湯室に向かおうとしたら、トレイに4つのカップを乗せてイオニアさんがこちらにやって来た。

 イオニアさんも仕事がない1人だからなぁ……。


「砂糖は入っていないぞ。自分のカップは分かるな?」


 イニシャルを大きく書いているからなぁ。直ぐに自分のカップを受け取り、タバコに火を点ける。

 窓を少し開けると、冷たい朝の空気が入ってくる。

 今日は曇りだ。雪が降らなければ良いんだけどなぁ。


「だいぶ丁寧な返信が帰ってきたぞ。第2王子と聞いたから、少しはお高く留まっているのかと思っていたが、そうでは無さそうだ」


「王族の次男だから、王位継承はかなり順番が下がっているはずだが、横に逸れずに兄を支えているってことか」


「第1王子が王位を継承したら、自動的に公爵様だろう? 何代続くんだっけ?」


「公爵を2代。3代目が男爵になって4代目は準爵よ。貴族が増えないようにとのことなんでしょうね。準爵となると王宮の出入りは制限されると聞いたわ」

 貴族社会も楽ではなさそうだ。話を聞いていると、どんどん没落していくように思えるんだけど……。


 コーヒーを飲み終えたところで全員でブリッジに戻る。

 給湯室にエミリさんとミザリーがいることに気付いたけど、朝食のスープを温めているのかな?


 ハンズさんとイオニアさんは、ブリッジ後方のベンチに腰を下ろす。

 フェイネルさんが操縦席に付いたところで、テレ―ザさんが操縦を引き継いでブリッジから出て行った。朝食の準備ということになるんだろう。

 俺は銃座に着いて周囲を見渡す。

 だいぶ海に近付ているようだ。前方に見える大きな尾根が巨人の右足ってことかな?


「ようやく7時を過ぎたにゃ。今の内に朝食にゃ。今日はお昼は無いから、きちんと食べないとお腹が空くにゃ」


「出掛けに食べたでしょう? そんなに空いてないのよね。あんまり食べると、太りそうだわ」


 運動なんて出来なからなぁ……。でもハンズさんは砲塔区画で懸垂や腹筋運動をしてる時があるんだよね。

 俺も見習うべきかもしれないな。


 ミザリー達が朝食を運んでくれた。

 蓋つきのカップに入ったスープにサンドイッチが3切れ。これぐらいなら太る心配は無さそうだ。

 周囲の風景を眺めながらの食事を終えると、カップにお茶を注いでくれた。

 半分ほど入れて貰ってスープを洗い流して飲み込むと、たっぷりとお茶を注いでくれた。

 これで昼過ぎまで待たせることになりそうだ。


「アデレイド王国軍の飛行船から連絡が入ってます。少し待ってください!」


 ミザリーが通信を聞き取りながらメモを作り始めた。

 イオニアさんが立ちあがってミザリーの所に行ってメモを確認しながら頷いている。何かあったのかな?

 ミザリーがメモを書き終えると、イオニアさんがリトネンさんにメモを渡した。

 軽く目を通して、ミザリーに顔を向ける。


「会合地点への到着時刻は0830という事にゃ。返信は『既に到着済み。来訪を待つ!』と送ってほしいにゃ」


「了解です!」


 少し早まったということかな?

 遅いより早い方が良いに決まってるからね。

 さて、どっちから来るんだろう?


「送信終了。……返信が来ました! 『高度2000で巨人の右足を南進中』以上です」


「ファイネル、高度2000で北に向きを変えるにゃ。位置はここで良いのかにゃ?」


「巨人の右足まで5ミラルほどよ」


「了解だ。高度を上げるぞ!」


 ファイネルさんの言葉と同時に船首が上を向き始めた。

 高度2000とはねぇ。もう少し低空だと良いんだけど……。


飛空艇の前進が止まり、今度はその場で左に回頭を始めた。


「コンパスで0度だ。北に軸線を合わせたぞ!」


「高度差は無いから前方から来ると思うんだけど……、まだ見えないわね」


 足元からエミルさんの声が聞こえてきた。

 ここからの眺めが良いから、出張って来たんだろう。

 俺も双眼鏡で探し始める。


「毎時20ミラルで飛んでくるんでしょう? そろそろ見えるはずなんだけど……」


 会合予定時刻は0830時だから40分ほど前になる。15ミラルほどに接近しているんだろうけど……。


「あれかしら! そうね、間違いないわ。大型が3隻に小さいのが1隻。ほとんど正面よ」


「ミザリー。通信にゃ。『貴船団を目視にて確認。南に回頭を行う』以上にゃ!」


「了解!」


 直ぐに電鍵を叩く音が聞こえてきた。

 まだかなり小さいけど、あれが全長300ユーデほどもあるんだからなぁ。

 

「返信です。『貴艇を確認。2番船の右を並走されたし』以上です」


「『了解。2番船の右500ユーデを並走する』と返事を返して欲しいにゃ」


 ミザリーは忙しそうだな。

 船団を組むことになるから、1日に何度か通信をやり取りすることになるだろう。

 飛空艇がゆっくりと移動を始めた。

 船団の動きを見ながら、並走する位置に飛空艇を移動させるのだろう。


「リトネン。ここでは後ろと横が見えないんだが、このままで良いのか?」


「高度差は無いにゃ。後方1ミラルまで近付いてるにゃ。もう少し右に移動させて、2番船が横になったらゆっくりと近付けば良いにゃ」


「少し右だな。了解」


 飛行船は左を通るのか……。エミルさんの横にある窓からなら良く眺められるんじゃないかな。


「もう少しで、先頭の飛行船が横を通るわよ。距離は800ユーデほどありそうね」


 やがて船首機銃座からも飛行船が見えてきた。

 速足程の速度差で、俺達の乗った飛空艇を追い越していく。


「2番船、接近中。距離およそ1ミラル!」


「2番船が通り過ぎてから500ユーデに近付けば良いにゃ」


「その方が安心だな。了解!」


 編隊を組んで飛行するなんて初めてだからなぁ。ファイネルさん達も緊張してるに違いない。


「2番船、真横を通過中。距離は先頭船とほぼ同じ」


 エミルさんの声がブリッジに響く。

 やがて左手に見えてきたのは、さっきの飛行船よりも大きく見える。

 飛行船の下に作られたゴンドラもかなりの大きさだ。

 同型船を3隻ということじゃなかったみたいだな。


「だいぶ大きいな。輸送船の代替ができるとは聞いてたが……」


「武装は少ないんでしょうね。先を行く飛行船が帝都を爆撃したんじゃないかしら」


 戦闘用と輸送用に区分している、ということかな?

 

「船尾が見えたところで、真横にならぶぞ!」


「それで良いにゃ。3番船はまだずっと後ろにゃ」


 どうやら、1ミラルほどの距離を取って縦列で進んでいるようだ。

 まだ小さい飛行船が見えないのは最後尾を進んでいるからなんだろう。


「船尾が見えた。速度を上げて2番船に並ぶぞ!」


 フェイネルさんの操縦で、飛空艇がゆっくりと2番船の右横に寄せていく。


「これで隣まで500ユーデというところだろう。ここから飛行船の先が見えるな。距離を一定に保つには都合が良い」


「銃座のガラス窓の枠が目印になるわね。私の位置からも問題話無いわ」


「ミザリー、通信にゃ。『並走位置に付いた。進路変更時には連絡願う』以上にゃ」


「了解!」


 電鍵を叩く音が続くと、直ぐに返信が帰ってきたようだ。

 

「『常に無線機は可動中。1時間後に進路変更予定、変更5分前に再度連絡』以上です!」


「もう少し南に向かうと思ったんだけどなぁ。帝国軍の輸送艦隊と遭遇するのを避けてるんだろうけどね」


「こっちの方が早く見つけられるにゃ。飛行船も監視員を配置していると思うけど、リーディルもよく見ておくにゃ」


「了解!」


 何も無い海はを見てると飽きて来るんだけど、今回は直ぐ近くに飛行船がいるからなぁ。双眼鏡で覗くと、向こうでもこっちを眺めているのが良く分かる。

 たまに手を振ってくるから、こっちも手を振ってるんだけどね。


「発光信号機があったかにゃ?」


「確か、ミザリーの所の棚に入ってたわよ。無線封鎖を考えてるってこと?」


「帝国に近付いたらあり得るにゃ。あれば問題ないし、無ければライトを使えば良いにゃ」


「ちゃんと使い方は習ってるからだいじょうぶよ! ……これね? だいぶ小さくなってる」


 ミザリーが信号機を棚から取り出して、テーブルの横に吊り下げている。

 早く準備しておいても、直ぐに使うわけではないと思うんだけどね。


「テレーザ、1時間程お願いするよ。……リーディル、休憩を取ろう」


 ファイネルさんの呼びかけに、イオニアさんが俺と替わってくれた。

 30分ぐらいは休憩できそうだな。あまり長くいるのも問題だろう。


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