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船団を守って6325恒星連合国へ

 フブキ、ツキカゲとラングルド商会の船団、そしてアイラのA884とレグのジャベリン。

 今回6325恒星連合国に向かうのは護衛艦4隻と護衛対象の貨物船4隻、合計8隻の護衛船団だ。

 護衛する側とされる側が同数とは、かなり厳重な警備にも見えるが、これは特段珍しいことではない。

 

 特に貴重な品を運んでいる時には1隻の貨物船に複数の護衛艦が護衛に付くことは多いし、複数の貨物船団の護衛を1隻の護衛艦で務めることもあるのだ。

 逆に複数の護衛艦が護衛していると宇宙海賊に目を付けられることがあるので、それを逆手に取って貴重品を運ぶ船の護衛をごく少数の護衛艦で護衛することもある。 

 ある意味自由商人と宇宙海賊の心理戦のようなものだ。


 今回ラングルド商会の貨物船に積み込まれている貨物は桁違いに貴重なものらしいが、その貨物が何であるのかはラングルド商会と自由商船組合しか知らず、護衛に付くシンノスケ達にも秘匿されている。

 因みに、表向きはレアメタルと工作機械ということになっており、シンノスケ達も余計な詮索はしない。


『出発する前に、シンノスケに頼みがあるんだけど・・・』


 出発を前にしてアイラがまた不穏なことを言い出した。

 

「何ですか?」


 一応聞いてみるが、アイラが何を言わんとしているのかはシンノスケも概ね予想できる。


『シンノスケに護衛の指揮をお願いしたいのよ』

「やっぱりそうきましたか」


 アイラに頼まれて護衛任務に参加した挙げ句、指揮まで任されるのは面倒だが、これは仕方ないといえば仕方ない。


『私もシンノスケに頼むのは申し訳ないんだけど、この中で貴方のフブキが1番索敵能力が高いのよ。それに貴方の船にはマークスやセイラ、ミリーナがいるでしょう?私やレグに比べて負担が少ないのよ』


 フブキは狙撃艦としても運用出来る程の艦であり、索敵能力は4隻の中でも1番高い。

 それに、アイラはA884を1人で運用しているし、レグのジャベリンにしても乗組員は3人で運用していることを考えると、アイラの言うとおり、シンノスケが指揮を執ることがハード面でもソフト面でも妥当なところだろう。


「分かりました、私が指揮を執りますが、レグさんもそれでいいですか?」

『こちらも問題ありません。カシムラの指揮下に入りますので、よろしくお願いします』


 レグも承諾したのでアイラの言うとおりシンノスケが護衛任務の指揮を執ることになったのである。


 

 6325恒星連合国に向けて出発して5日、船団は国際宙域を進んでいた。

 アイラのA884フリゲートを先頭に、4隻の貨物船団が続く。

 レグのジャベリンが船団中央に、フブキは船団の上に位置し、ツキカゲが殿を務める。


「あの・・シンノスケさん、右舷方向、索敵範囲ギリギリを同一方向に航行する船があります。この距離だと向こうからは見えない筈なんですが、時間を置いて接近しては離れる行動を繰り返しています。多分、これ宇宙海賊の斥候ですよね?」


 セイラの示した航行データを確認してみれば、確かに索敵範囲ギリギリを航行する船がある。

 接近と離脱を繰り返しているところを見ると船団に気付かれずに監視しているつもりなのだろう。


「フブキから各船、右舷方向に斥候と思われる反応。宇宙海賊に目をつけられた可能性あり。警戒せよ」


 シンノスケが警戒態勢を発令すると同時にセラがデータ・リンクシステムで各船に情報を送る。


『A884、データ確認』

『ツキカゲも確認しました』

『ジャベリン確認。フブキのデータ・リンクを使用すれば対艦ミサイルで狙えるが、どうしますか?』


 確かにジャベリンに装備している長距離対艦ミサイルにフブキのデータを連携させれば狙える距離だ。

 船団の位置を確認するために接近した距離から判断すれば、長距離対艦ミサイルならば避ける間もなく撃沈できるだろう。 

 しかし、該船はまだ宇宙海賊と特定されていないので先制攻撃をするわけにはいかない。

 こちらから接近する等して該船が宇宙海賊だと特定する必要がある。


「確かにレグさんの言うとおり相手の出鼻を挫いて襲撃する意志を削ぐというのも有効な手段ですが、宇宙海賊の本体の規模が分からない以上、こちらから動くのはまだ早いでしょう。警戒態勢を維持したまま予定通り航行します。大丈夫です、敵が余程優秀な索敵機能を持っていない限りは先手を取られることはありません」

『ジャベリン、了解。カシムラの指示に従います』

『A884了解』

『ツキカゲ、了解しました』


 シンノスケは広域の航路図データをモニターに表示した。


「向こうが動くのは明後日だと予想する。各船は警戒しつつも乗組員は適宜休息を取り、体力気力の維持に努めてください。特にアイラさんは1人での運用なので無理をしないでください」

『大丈夫よ。私の船は自律型艦船運用システムを搭載しているから、航行から警戒、戦闘まで艦の運用を任せることができるのよ。シンノスケのマークスと違って無口なのが玉に瑕だけど、なかなか優秀な相棒だわ』


 アイラについては問題なさそうだし、他の3隻は複数運用なので、各艦の運用に任せられる。


 シンノスケは副操縦士席に座るミリーナを見た。


「ミリーナ、俺は少し仮眠を取るから3時間程ここを任せてもいいか?」

「お任せください。それでは操縦系統をこちらにくださります?」


 副操縦士席の操舵ハンドルに手を掛けるミリーナだが、シンノスケは艦長席から立ち上がると、たった今まで座っていた艦長席を指差した。


「いや、フブキの権限を任せるから、艦長代理としてこっちの席で頼む」


 予想外のことにミリーナの目が輝く。


「艦長代理!よろしいのですの?」

「ああ、今後ミリーナには艦長としての経験を積んでもらう必要があるからな。但し、任せるのはフブキの運行だけ、護衛隊の指揮権までは任せないからな。何かあったら直ぐに起こしてくれ」


 そう言うとシンノスケはブリッジの隅にある簡易ベッドに横たわった。

 優秀なクルーがいるとこういう時に助かるものだ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 海賊の斥候、見えないはずなのに監視ってどう言うことだろう? (普通の船なら)見えない筈(だけど斥候用の長距離センサー持ちなら監視できる)なのか
[良い点] 徐々ににクルー達との信頼感が増していくのが良いですね。
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