39:起死回生!龍の魔力
「嬢ちゃん! 龍の魔力を使え!!」
原因不明の攻撃を受け、魔力を失い落下中の私に、クマさんが叫ぶ。
そしていっこうに聖女の放つ、ホーリーレイが私を貫く気配もない。
ん? 龍の魔力? 私は体の中にある龍の魔力に意識を向けると、嘘のように魔力が体の中をめぐり始めた。
そして私の中の龍の魔力が、体の中の魔力を封じる毒を抑え込んだ。
「そいつは魔力の流れを狂わす毒だ! 以前ドラゴンに使って効かなかったのを思い出したんだ!」
さすがはクマさんだ。咄嗟の判断だが効果はあった。
龍の魔力を巡らせた今の私は、龍人化していた。
私は空中で体勢を立て直すと、風魔法で風を起こして、ゆっくりと地面に着地した。
そして回復魔法を使い、毒と背中の傷を瞬時に癒やした。
とりあえず龍人化は体の負担が大きいし、長続きはしないので解いておく。
上空に浮かぶ聖女リリスを見ると、向こうも地面に向けて落下していくのが見えた。
クマさんが何かしたのか?
「クマさん。さっきの光はもしかして?」
私は近づいてきたクマさんに尋ねた。
「ああ。あれは数秒だが閃光と共に魔力を封じるオイラの奥の手の一つだ」
え? スタングレネードの異世界版みたいなものか?
あれは聖女の放つホーリーレイの光ではなく、クマさんの投げたスタングレネードの光だったのか。
「そんなことよりリリスが来るぞ!!」
クマさんが聖女リリスの攻撃を感知したのか、私に注意を促す。
「あいよ」
そして聖女リリスの攻撃は、魔力感知で私にも手に取るように見えていた。
なので相手に振り返ることなく、ホーリーレイを躱した。
そして余裕な感じで、近くに落ちていた鉄剣を拾う。
「クマジロウおおおお!! やってくれたわね!! お前を初めに殺すべきだったわ!!」
「買いかぶるのはよせよ! オイラ今じゃ無害な子熊だぜ?」
「その口でよく言う!!」
私は聖女リリスに背を向けたまま、風魔法の大跳躍で聖女リリスに突撃すると、新体操でやるように空中で回転して、その勢いで聖女リリスに、巨大な鉄剣を振りかぶる。
ドド~ン!
そして当然のようにそれを躱す聖女リリス。
「貴女・・・なぜあの毒が効いていないのかしら?」
私が魔法を使って見せたのを、驚いた様子で聖女リリスは尋ねてくる。
「さあ? なぜだか治りましたが・・・」
聖女リリスに魔封じの毒を、龍の魔力で無効にすることが出来るなどと、教える必要もない。
ここは余裕ぶって躊躇させるのもいいだろう。
「そんなわけあるか!!!」
しかし逆に激怒させてしまった。
聖女リリスの蹴りが飛んで来るが、攻撃が見えている私は余裕で躱す。
そして腕に身体強化をかけると、素早く聖女リリスの腹に、ジャブの要領で素早く拳を当てる。
鞭のようにしなる私の拳はバチン!という感じに聖女リリスの腹の中央を捉え、思いもよらない過剰な威力からブオン! と衝撃波を発生させる。
ドカンッ!!!
その意外な攻撃に反応しきれず、聖女リリスはおもいっきり遠くにぶっ飛んでいった。
「もしもし? 生きてますか?」
私は鉄剣で追撃しながら、聖女リリスに尋ねる。
ドドドン!!
地面に叩きつけた鉄剣は、またもや余裕で躱されてしまう。
同時に刃物のような回し蹴りが私に襲い掛かる。
私も余裕で躱したと思ったが、今度は右肩にかすっていたようで、右肩が斬れて血が噴き出した。
ゴイ~ン!
そのまま追撃で飛来した、聖女リリスの拳を鉄剣の柄で防ぐ。
パン! パン! パン!
その勢いで吹き飛んでしまうが、追撃防止のために聖女リリスの顔面に向けて土銃を数発放つ。
それを嫌がった聖女リリスは、顔を腕でガードしてその攻撃を防ぐ。
「ブファ!! ・・・貴女痛いじゃないの!?」
先ほどのジャブが効いたのか、聖女リリスは血を吐き出した。
だが余裕ぶっているところを見ると、お得意の回復魔法で、すでに怪我は癒やしていよう。
お互い殴り合い、斬り合い、すでに手詰まりだ。
だが私には最後の手段の龍人化がある。
しかしこれは、聖女が離宮を襲撃した際に、見られてしまっている。
どんな悪辣な手段で、破られるかわかったものじゃない。
気づくと周囲の戦闘は中断されており、魔物も人も、私たちの戦いの勝敗を見守っていた。
大将同士の一騎打ち・・・お互いそう認識したのかもしれない。
私と聖女リリスは睨み合い、相手に対して一歩も近づけない状態だ。
そして沈黙が続く・・・・
・・・
・・
バシュ!!
先に動いたのは、ホーリーレイを放った聖女リリスだった。
私はホーリーレイを躱すと同時に、聖女リリスに突撃をかける。
ドドド~ン!!
そして聖女リリスに向けて、鉄剣による兜割を繰り出した。
それを躱すと同時に、聖女リリスは私に向けて蹴りを放つ。
ここで私は聖女リリスにまだ見られていない魔法、青いライトセイバーの使用を決断する。
蹴りを躱した私は、鉄剣を手放すと、その手から青いライトセイバーを発動させる。
一瞬鉄剣を手放した私に、してやったりとばかりに笑みを浮かべた聖女だったが、その手から青い炎が出たのを察して、素早く飛びのこうとする。
ボォウ!!
だが遅い。振りぬいた青いライトセイバーが、わずかに聖女リリスの右肩をかすめて青い炎を引火させる。
瞬時にその炎を消そうとする聖女リリス。
私は土魔法で岩を作り出し、身体強化で力いっぱい投げつける。
どんなにノーコンの私でも、この距離なら外さない。
「今更そんな投げ岩など!!」
そして聖女リリスは思惑どおり、ガスの詰まった岩を叩き壊してくれた。
私は岩の中に、可燃性のガスを仕込んでいたのだ。
ドドド~ン!!!
聖女リリスの右肩についた、青い炎にガスが引火して、青い爆炎が吹き上がる。
私も吹き飛びそうになるが、ここぞとばかりに龍人化で体を強化して、その衝撃に耐える。
「龍剣!!」
そして土剣を発動させると、土剣に龍の魔力を流し込み、龍剣を顕現させた。
この状態ならば小細工はできまい。
龍剣から放たれる、すさまじい圧力に、周囲に上がった炎と、砂煙がいっきに吹き飛ばされる。
そして錐揉みしながら吹き飛ぶ、聖女リリスを見つけて瞬時に近寄る。
だが転んでも、ただでは起きないと見える。
バシュ!
聖女リリスのホーリーレイが、あんな体勢から放たれた。
私はそんなホーリーレイごと、龍剣で聖女リリスに、全力で突きを繰り出した。
カッ!! ドガガガ~~~ン!!!
聖女リリスに命中した龍剣は、すさまじい衝撃波を巻き起こし、周囲で見ていた魔物や人を一斉に吹き飛ばす。
そしてこれが、私と聖女リリスの勝負に、決着がついた瞬間だった・・・。
【★クマさん重大事件です!】↓
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