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38:激闘!幼女vs聖女

今回は 第三人称視→リンネ視点でいきます。

 第三人称視~


 魔物の大群を包み込むように出現した炎の波は、魔物を次々と焼いていく。

 弱いオークから順に、炎に飲み込まれるようにして、次々と地に伏せていく。


 ただその炎も長くは続かない。


 魔物の群れの中には、オークメイジも多数含まれているのだ。

 生き残ったオークメイジの水魔法と、上空から降り注ぐ聖女リリスの魔法によって、火は徐々に力を失い、消えていった。



「くっ!! クマジロウの仕込みか! おかげで多くの魔物を失った!」



 ワイバーンの上で悔しがる聖女リリス。


 魔物の数はあれから半数以下に減らされた。

 中でも痛手は、魔法の効果範囲を増幅させる魔道具を持たせていた、オークジェネラルが死んだことだ。


 この魔道具は使用された魔法を取り込み、魔道具に蓄積させた膨大な魔力で、魔法の底上げと拡散を図る仕組みなのだ。


 そして魔法を封じる封魔領域は、容量を超える魔力を受けると一気に魔力が爆散して、封じていた魔法が術者に過剰なダメージを与えるというデメリットがある。


 ただ万全を期して聖女リリスは、王国のフレームトルネードのことも調べ上げ、複数の作り出す強力な魔力を再び分散して弱くして、耐えうるように魔術を構築していたのだ。


 なのでフレームトルネードでは、今回の封魔領域は破れないと自負していたはずだった。


 ただそこに予想しなかったイレギュラーが存在したのだ。

 単独で規格外の魔力を持つ、リンネという。


 リンネの青い炎を受けきれなくなった魔道具は、爆散とともに青く強力な炎を吹き上げ、オークジェネラルの上半身を吹き飛ばしたのだ。


 ただリンネ本人は、そのことに気づいてすらいないだろうが・・・。





 そして東の砦はフレームトルネードの成功に歓喜していた。



「「うおぉぉぉぉぉぉおお!!」」


「さすがゴドウィン宮廷魔導士率いる魔術師隊だ!! 見ろ! 魔物の多くがあの炎に焼かれたぞ!!」


「ハハハ!! あの初撃の青い炎なんてすさまじかったな!!」


「知らん!! あの青い炎は私たちではない!! リンネ殿!! 聖獣殿はいずこ!? あの青い炎は何だ!?」



 ゴドウィン宮廷魔導士だけは、他とは違う方向に爆走していたが、今は魔力を失った無害な老人だ。

 放っておいてもいいだろう。



「喜んでばかりはおれぬぞ!! 今の内に打って出る!!」


「「うおぉぉぉぉぉぉおお!!」」



 歓声を上げる王国の騎士や兵士、または冒険者の複合軍は、そんなゴドウィン宮廷魔導士を取り残して次々と満身創痍な魔物の大群に押し寄せていく。


 私も悪辣聖女が再び何かを仕掛けてくる前に、風魔法の大跳躍で再び悪辣聖女のいる場所へと、クマさんとともに飛んで行く。


 

「嬢ちゃん。あの青い炎で魔力をかなり消費したろ? 大丈夫か?」



 あの青い炎とは、悪辣聖女の封魔領域を破った際に、発生させた私の火魔法のことだろう。


 

「魔力残量は70パーセントを切りました」


「体の負担を聞いたのだがな・・・」



 魔力をいっきに大量に使うと、体に負担がかかるのだ。

 私はそういったダメージには鈍感なようだが、正直今は少し辛い。だが泣き言など言っていられない。

 この戦いで敗れれば王都の人々が、あの可愛いアリスちゃんが、ただでは済まないのだから。



「悪辣聖女発見!!」



 私は悪辣聖女に向けて、挨拶代わりに土爆弾を投げつけるが、明後日の方向に飛んでいく。

 クマさんはその意図を察したのか何も言わない。



「ハハハハ!! どこに投げておる!! ドラゴンスレイヤー!!」



 ドドドォォォォン!!



 悪辣聖女の後ろの方で土爆弾を起爆。


 衝撃波がワイバーンに襲い掛かり、その飛行を妨害する。

 さらに青い爆炎が襲い掛かり、飛行するワイバーンは一体残らず地上を目指して落下していく。



「悪辣聖女は封魔領域で魔法を無効化してきませんでしたね?」



 聖女リリスには封魔領域という、魔法を無効化する術があるはずだ。

 今はなぜかそれを使って来なかった。



「さっき嬢ちゃんに力技で破られてるからな。術に異常が出て使えないのか、破られた反動が怖くて使えないのかのどっちかだな」



 封魔領域は、破られるととんでもない魔法の反動を受ける。

 それはさきほど、魔物の群れを焼いた、あの青い炎が物語っていた。



「ワイバーンが全部落ちたな。でもリリスがいねえぞ」



 落ちていくワイバーンの中に、悪辣聖女の姿はなかった。

 そしてあらかじめ魔力感知をしていた私は、悪辣聖女の居場所と行動に気づいていた。


 

 バシュ!



 一筋の光線が私の避けたわずか先を通過する。

 悪辣聖女の得意魔法。ホーリーレイだ。


 

「ち! はずしましたか」



 そして煙が晴れるとそこには、浮遊する悪辣聖女の姿があった。





 リンネ視点~


 絶世の美女が、煙の向こうから現れほくそ笑む。


 それがあの悪辣聖女でなければ、私も見とれていたかもしれないが、今はその隙は命取りとなりかねない。



「お初にお目にかかります。ドラゴンスレイヤー、リンネ。わたくしが聖女リリスです」


「おやこれはご丁寧に。わたくしはリンネ・イーテ・ドラゴンスレイヤーです」



 お互い綺麗な所作でカーテシーをする。


 そして私は現在風魔法で自分の体重をささえている。

 微妙に下に落下してきているのは情けないが、今の私はこれが限界だ。


 しかし悪辣聖女が、ワイバーンの騎乗なしに空中浮遊できるのは驚きだ。

 そして間をおいて、お互いの憎しみが膨れ上がると事態は一変する。



「リリィィィ~~ス!!!」


「リンネ・イーテ・ドラゴンスレイヤー!!!」



 いっきに魔力を爆発させた私は、土剣を発動させて聖女リリスに向けて突撃する。

 それを迎え撃つ聖女リリス。

 お互いの怒りが激突する。


 そして私は本能的にこいつは、倒さねばならない存在だと強く感じた。


 私はおもいっきり土剣を薙ぎ払って聖女リリスを攻撃するが、聖女リリスにそれを躱す気配はない。



「躱さない!?」


 ガコン!!



 聖女リリスは驚いたことに、蹴りで土剣を受け止めて、粉砕してしまったのだ。

 私はその事態に一瞬驚き、動けなくなる。

 その隙をついた聖女リリスの拳が、私の目の前に現れる。



「殴り魔!?」



 私はその拳を躱しきれず、身体強化と大跳躍でのバックステップでその威力に備えた。



 ドゴ!!



 だが威力が殺しきれず、地面へと吹き飛ばされる。

 辛うじて意識のあった私は、地面との接触の刹那、風魔法をクッションにして着地した。


 

「嬢ちゃん!!」



 遠くでも上手く着地したクマさんが、私を心配して駆けつけてくる。



 ポタポタ!



 地面に血が数滴落ちる。


 聖女リリスの拳を受けた右頬は、大きく腫れ上がり、鼻血も出ていた。


 

「無事か!? 嬢ちゃん!!」


「ええ。何ともありません」



 私は鼻血をハンカチでふき取ると、同時に回復魔法を使い、頬と鼻の傷を癒やした。


 かろうじて強い身体強化で歯はおれなかったようだが、それがなければあの一撃で、首が千切れ飛んでもおかしくはなかった。



「聖なる術まで使えるとは・・・やはりやっかいな相手ですね。リンネ・イーテ・ドラゴンスレイヤー」



 上空から飛来する聖女リリスは、冷たい眼差しでこちらを見下しながら呟く。


 よもや聖女リリスが殴り魔とは思いもよらなかった。

 そしてこの異世界の殴り魔は、ゲームとは違い、非常に厄介な相手なのだと痛感する。



 パン! パン! パン!



 私は聖女リリスを見るや否や、土銃を瞬時に収納魔法で取り出して発砲する。



「つっ!! 小賢しい!!」



 よけきれず被弾したようだが、少し痛い程度でダメージはないようだ。



 バシュ!!



 反撃とばかりに聖女のホーリーレイが降って来る。

 しかし私はわずかな動作でそれを避ける。


 そして風魔法の大跳躍で、再び聖女リリスに向けて突撃を開始する。



「土剣!!」


「ほほほ!! 同じ手を!! 再びわたくしの拳で吹き飛ぶがよい!!」



 私は巨大な土剣を、再び薙ぎ払い聖女リリスを狙う。



 ガキ~~~ン!!



 しかし土剣が再び粉砕されることはなかった。

 そして土剣の表面が割れると、中から鉄の巨剣が姿を現す。


 そう。これは私があらかじめ作っておいた鉄剣なのだ。


 私は以前サスペンション作りで覚えた操鉄を、土剣を作るように鉄に使ってみたのだ。

 すると出来てしまったのだ。体に馴染む巨大な鉄剣が。


 しかもただの鉄剣ではないよ。


 この鉄剣は圧縮もかけてさらに丈夫にしてあるのだ。

 ちなみに土のコーティングはクマさんの入れ知恵だ。

 クマさんはこの状況を予期していたのかもしれない。



「こ、これは鉄の巨剣!! 貴様!!」



 聖女リリスは鉄剣を受けた足は折れなかったものの、何らかのダメージを受けたようで、必死の形相で上空に逃げ出す。


 私はこのチャンスを逃すまいと、風魔法の大跳躍で聖女リリスの後を追いつつ、無暗やたらに鉄剣を振り回す。


 それを次々と躱す聖女リリス。

 これでは足りぬと収納魔法で出した岩を、数個浮遊させて加勢させる。



 バキバキ!! ドカ!! パラパラ!



 しかし岩程度では、聖女リリスの拳で破壊されてしまう。

 こんなことなら圧縮させた、鉄の球体でも作っておくべきだったか。



「嬢ちゃん後ろだ!!」



 クマさんの叫ぶ声が下から聞こえる。



「ふぁ?」


 ドシュ!!



 急に背中に激痛が走る。


 遠目に見ると森の葉の隙間から、矢をつがえるオークアーチャーの姿が見えた。

 そして私の体は急に魔力を失い、地面へと落下を始める・・・。



「お~ほほほほ!! 貴様がくらった矢には魔力を使えなくする毒が仕込んであるのだ。そのまま地面に落ちて叩きつけられるがいい!!」



 聖女リリスの笑い声が響く。


 このままでは・・・地面に激突して・・・。

 そして聖女リリスが遠ざかり・・・それが地面へと・・・死へと近づく予兆だと私に告げた。


 その時聖女リリスから強い光が発生し、その光が聖女リリスの得意魔法、ホーリーレイの発動を予期させた。


 なんて周到な悪辣聖女だよ・・・。



【★クマさん重大事件です!】↓


 お読みいただきありがとうございます!

 ほんの少しでも・・・・


 「面白い!!」

 「続きが読みたい!」

 「クマさん!」


 と思っていただけたなら・・・


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