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37:フレームトルネード

今回は、第三人称視点→リンネ視点でいきます。

 第三人称視点~



 ふああぁぁぁぁぁあ!!



 突如、行軍中の砦の方向から、凶暴な魔力を帯びた咆哮が聞こえてくる。

 魔物たちは、その咆哮に恐れおののき、ワイバーンの何体かが驚いて上空から落下する。

 聖女リリスの乗る、ワイバーンのボスは、その咆哮を受けても少し怯む程度で効果はない。


 だがおかげで魔物の大群にかけていた隠蔽魔法は解けていく。



「やってくれたわねドラゴンスレイヤー!!」



 ワイバーンの上で悔しがる聖女リリス。



「だが今からお前の魔力を封じてあげる。これでお前はただの幼女ね」



 聖女が魔力を封じる魔法、封魔領域を発動する。


 この魔法は本来は自らの周囲にしか効果はないが、帝国から借り受けた魔法の効果領域を拡大する魔道具の影響で、その範囲は計り知れないものとなっていた。



「わたくしのテイムしている魔物の大群も魔法を使えなくなるが、魔法がなくともオークやホーンベアの戦闘能力は高い。要となるドラゴンスレイヤーの魔法や、クマジロウの策を講じた魔法がなければもはや王国の兵士など恐れることもない!

 ほーほほほほ!! 魔物たちよ!! 進軍せよ!!」



 聖女リリスは、高笑いしながら王国の兵士を蹂躙すべく、魔物の大群に進軍を指示する。





リンネ視点~



「ギディオン王国最高騎士団長!! いったい何が起こっている!? 魔力が消失したぞ! これではフレームトルネードが発動できない!!」



 階段を駆け上がって城壁に登って来た、ゴドウィン宮廷魔導士が叫ぶ。



「魔法が使えない!? 聖獣殿、いったい何が起こっているのでしょうか!?」



 ギディオン王国最高騎士団長が、今起こっている事態をクマさんに尋ねる。



「悪辣聖女の仕業だ。これは封魔領域の効果だろう。

 封魔領域は自らの周囲を対象に魔法を封じる魔法だ。普段は自分の周囲が対象のはずなのだが、魔道具で効果範囲を増幅してやがるな」



 クマさんが、魔法が使えない原因について、聖女リリスの封魔領域だと当たりを付ける。

 噂で聞いた、聖女リリスの魔法が効かない力は、この封魔領域の効果なのかもしれない。

 魔法が使えなければ私なんてただの幼女だ。はたしてあの聖女リリスに、勝ち目などあるのだろうか?



「嬢ちゃん! 身体強化を使うんだ! 危険だが今はそれしかない!」



 身体強化? 身体強化は成長の妨げになると、クマさんに使用を控えるようにと言われている魔力操作の一つだ。


 今の状況を切り抜ける唯一の手段が、それしかないと言うのならば使うしかないが、身体強化も魔法のようなものだ。はたして本当に今の魔法を封じられた状態で、発動するものだろうか?


 私は疑問を抱きながら、身体強化を発動した。腕力、脚力、全体の筋肉に魔力をつたえて強化。体全体の丈夫さも上げる。


 私の魔力は身体強化でも、体に負担をかけるほど大きいので、三分の一くらいに効果を抑えて使用する。

 試しに軽くジャンプしてみると、ギディオン王国最高騎士団長の身長の2倍の高さは跳ね上がった。


 そんな私を、ギディオン王国最高騎士団長はじめ、周囲に集まっている人たちは、目を丸くして見ている。


 魔法を封じられた中使える身体強化は、やはり魔法とは少し異なる技術なのかもしれない。

 あるいは昔読んだラノベで、身体強化など内部の魔力を使うものは、魔法を封じられても使える設定があったが、もしかしたらそれかもしれない。



「よし! いけるな嬢ちゃん! ついて来るんだ! この悪辣聖女のつくった状況を打開するぞ!

 それからゴドウィン! 青い炎が敵方から上がったら、それを合図にフレームトルネードの発動を開始しろ!」



「承知しました聖獣様」



 クマさんの指示に、ゴドウィン宮廷魔導士が承諾する。

 そして私はこの高い城壁から飛び降り、クマさんに続く。


 クマさんは一発で飛び降りたが、私は怖いので、もう1クッション城壁の出っ張りを踏み台に飛び降りる。



「嬢ちゃん! オイラが指示したら例の青い炎を敵陣の中心目掛けて全力で使うんだ!」



 私の火魔法の炎が青いのは、前世で見たガスコンロの火が、青かったせいである。


 クマさんが言うのだから、青い炎はなんらかの原因で発動できるのかもしれないが、いったい敵陣の中心に何があるというのか? 


 もしかしたら魔法を封じる原因の装置でも、あるのかもしれないな。

 クマさんが駆け抜ける横に、私は余裕で追いつく。今の私の身体能力は、クマさん以上なのかもしれない。


 敵陣に接近すると、驚いて怯えるオークの大群の様子に、無暗に咆哮するホーンベア、上空にいる鳥だと思っていたのがワイバーンいや、プテラノドンだと鮮明に確認できてくる。


 よく見ると聖女リリスはプテラノドンに騎乗しており、こちらを見降ろしているのがわかる。

 何か怖い顔でわめいているようだが、プテラノドンが怯えて上空に逃げすぎているせいで、よく聞こえない。


 そしてオークジェネラルが指示を下すと、大量の矢が飛んできた。



「嬢ちゃん! 今の嬢ちゃんに矢は効かないだろうが、オイラが念のために撃ち落とす! 魔法に集中しろ!」

 

 

 あの悪辣聖女の配下が使う矢だ。もしかしたら普通の矢でない可能性もある。


 クマさんが素早い動きで次々と矢を叩き落とす中、私は魔力を集中して、敵陣の中心に青い炎を出現させようとするが、何かが邪魔して上手くいかない。



「クマさん。やはり魔法が発動しません!」


「大丈夫だ! もっと強く魔法を使うように念じるんだ!」


「わかりました!」



 私はクマさんの指示どおり、さらに魔力を強めて青い炎の発動を試みる。

 すると何かにヒビが入った感じがした。



 ガシャ~ン!



 さらに魔力を強めると、何かが壊れる感覚が伝わって来て、それと同時に大きな青い炎が敵陣の中心の方から吹き上がる。



 ドゴゴ~ン!! ズズズズ・・・



 地鳴りと共に、上空まで吹き上がったその巨大な青い炎は、まるで地獄の炎を彷彿とさせる。


 ワイバーンが数体巻き込まれて、炎の中に消えていく。

 地上にいたオークの群れやホーンベアも、多くが青い炎に吹き上げられ、魔物たちは大混乱に陥っている。



「やはりあの装置は嬢ちゃんの馬鹿魔力には耐えられなかったな!」



 クマさんが勝ち誇ったように言った。


 つまり私の馬鹿高い魔力量でごり押しされて、魔法を封じる原因の装置は破損したのだろう。

 力でごり押しな解決方法は、わりかし異世界ラノベのテンプレだったりする。






「これで魔法も使えるはずだ! いったん退却するぞ! 嬢ちゃん! 」



 混乱に乗じて退却を指示するクマさん。


 この混乱に乗じてさらに悪辣聖女が、何か仕掛けてくる可能性もある。

 いっきに膨大な魔力を消費したことから、目眩と頭痛と眠気が押し寄せるが、ぐっと耐える。


 私は念のために魔力感知を周囲に発動し、ワイバーンに騎乗する聖女リリスにも注意を払う。

 すると聖女リリスから何かきらっとした光が見えたので、とっさにクマさんを巻き込んで、後方にある砦に向けて風魔法の大跳躍を発動する。


 飛び上がると私の着地した地点に、聖女リリスの得意魔法の1つ、ホーリーレイの光線がドン!と着弾するのが見えた。


 

「いい判断だ嬢ちゃん!」



 クマさんと私は、そのまま空中で追加の大跳躍を発動しながら、もといた砦の城壁の上まで目指す。



 ボゴゴォォォォォ!!



 その時だった。聖女リリスの私兵を全て飲み込むような赤い炎が出現する。

 こちらまで熱風が届くような恐ろしい勢いだ。



「フレームトルネードが発動したぞ!!」



 クマさんの顔も、夕日に照らされたように赤く照らされて、まるでここら一帯が夕方にでもなったように赤く明るい。


 ゴドウィン宮廷魔導士率いる宮廷魔術師たちが、集団多重合成魔術、フレームトルネードを発動させたのだ。




【★クマさん重大事件です!】↓


 お読みいただきありがとうございます!

 ほんの少しでも・・・・


 「面白い!!」

 「続きが読みたい!」

 「クマさん!」


 と思っていただけたなら・・・


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