33:魔法の等級検定後編
魔法の等級検定は、現在中盤の3級に差し掛かっている。
そして皆の順番が終わり、最後に私の順番が回ってくる。
「次は魔法の破壊力を見る。あちらに見える的に魔法を当ててその威力を見るのだ」
今回の検定は破壊力を見るのが目的だと、ルイーズ検定官より説明があった。
そしてこの先10メートルほど先には、魔法の的が設置してある。
だが破壊力を見ると言われても、どの程度壊していいかわからない。
はたして土銃で小さな穴を空けた程度で、壊したことになるのか?
否!
おそらくこの課題は私を試すためのもの。
しかし的を消滅させるレベルの土爆弾は使えない。
なぜなら破壊した証拠すら残らないからだ。
ならばと私は魔力を込める。
ここはサイラス棟梁と、建築を行った時のあの魔法だ。
私は土魔法で、直径2メートルほどの硬い土玉を作成した。
そのまま浮遊させて、的の上に移動させる。
ズド~ン!!
私は的を潰して破壊するために、土玉を的目掛けて落下させた。
そして沈黙が続き・・・ゴドウィン宮廷魔導士が口を開く。
「なぜ潰した?」
「的を的確に破壊するためです」
土玉を除くと、的は見るも無残にバラバラとなっていた。
「・・・まあいいだろう。これほどの破壊力を見せたのだ。次の検定に向かうとしよう」
「ゴドウィン宮廷魔導士。次の検定は明日の朝からの予定です」
そして翌朝私は、クマさんとアリスちゃん、ゴドウィン宮廷魔導士とルイーズ検定官を乗せた馬車で最後の検定場に向かう。
最後の検定では、測定する魔法の威力が強すぎると予想されるために、魔法の威力実験などを行う、砂漠地帯で行われるそうだ。
クマさんとアリスちゃんは、今回私の家族としてついてくる。
そして馬車に揺られること4時間・・・・。
ようやく目的地にたどり着いた。
最後の検定場は、私が想像していた砂の砂漠とは違い、岩ばかりの岩砂漠だった。
赤い岩がところどころにあり、地面の土も赤い。そしてところどころに草も生えている。
「最後の検定はここで行う。向こうに3つの巨大な岩があるのが見えるか?」
ルイーズ検定官の指さす先には、高さ10メートルはあろう3つの巨大な岩があった。
「今回の検定はあの3つの岩を、魔法一発でどこまで破壊できるかを見るのだ」
あの巨大な岩を一撃で破壊するには、かなりの威力が必要になるだろう。
龍剣であれば一撃で薙ぎ払えそうでもあるが、あれを使うと疲労が激しいのでやめておく。
ならば新たな巨大ゴーレムゴックさん新型を試すか?
いやそれは一撃と言えるだろうか?
おそらくゴックさんは、何度も叩いて岩を破壊するだろう。
ならばあれかな?
「嬢ちゃん。土爆弾を使うのか?」
私の魔力の気配から、私が使う魔法を言い当てるクマさん。
「さすがです。クマさん」
そして私の手には、すでに直径50センチメートルほどの球体、青い炎を灯した土爆弾が生成され、浮遊していた。
「青い炎!? それはどういう魔法なのだ?」
ルイーズ検定官が、土爆弾について尋ねてくる。
「土と火の2属性魔法で、爆炎で爆心地の周囲を吹き飛ばします」
「それではここまで影響があるかもしれんな? 私とルイーズとで風結界を張ろう」
風結界? 何か厨二心をくすぐる魔法名だな。
ゴドウィン宮廷魔導士と、ルイーズ検定官は何やら複雑で長い詠唱を終えると、前方に見えない風の壁が出来上がる。
これは目視できないので、魔力感知で感じ取った。
「用意はできた。やりたまえ」
ゴドウィン宮廷魔導士が、私に魔法の執行を促す。
「行きます!」
私は土爆弾を浮遊させると、操作しながら3つの岩の中心へと飛ばした。
「すごい魔力操作の距離だな・・・!」
ゴドウィン宮廷魔導士が言い終わる前に、土爆弾が目標に到たつする。
そして私は土爆弾を、起爆したのだった。
ドドドオオオ~ン!!! ズズズズズズ・・・
「ひ~ん! こわいよ~」
「大丈夫だアリス。結界がある」
土爆弾が爆破して、青い爆炎がその周囲を飲み込むと、遅れて地響きが聞こえてくる。
地面がその衝撃で揺れて少し焦る。
恐怖のあまり泣き出したアリスちゃんは、クマさんに抱き着いている。
遅れて衝撃波と砂煙、岩の破片が飛んで来るが、全て風結界が阻んでいるようだ。
すごいな風結界。私も覚えたい。
「すさまじいな・・・」
ゴドウィン宮廷魔導士が思わず呟く。
そして煙が晴れるとそこには、クレーターが出来上がっており、3つの巨岩は跡形もなく吹き飛んでいた。
「さすがはドラゴンスレイヤーだ。ちなみに聞くが、君はこれ以上の破壊力を持つ攻撃を知っているかね?」
ゴドウィン宮廷魔導士が私に尋ねてくる。
これ以上とは、土爆弾以上の、ということだよね?
私は確認のためにクマさんの顔を見るが、クマさんはアリスちゃんを抱きかかえながら、険しい表情でこちらを見るばかりだ。
いったい何だというのか?
とりあえず私が思い当たるのはあれしかないな。
「核攻撃や反物質のことをおっしゃっているのですか? それとも隕石とかブラックホールですかね?」
「嬢ちゃん。それは禁忌だ。それ以上話すな」
「ふぁ!?」
クマさんの突然の禁忌発言に私は戸惑う。
え? もしかして核攻撃や反物質は言葉的にNGなのか? ブラックホールも駄目? 隕石も?
もしかしてゴドウィン宮廷魔導士に、私が禁忌を口にするように誘導された?
「すまんなリンネ殿。君がどれほど危険な知識を有しているかを知りたかったのだ」
もしかして私はこの検定で、私自身の危険度を確認されているのだろうか?
ならばこれだけは言っておかねばなるまい。
「私はその禁忌を行使することはできませんよ? する気もありません」
私は世界を滅亡に導く力なんていらない。
もしかしたら私は、魔法があるこの世界でならば、禁忌の力を実行可能なのかもしれない。
だとしてもそこは不可能だと言っておく。
なぜなら私がその力を使いたくないからだ。
「嬢ちゃんならそう言うと思ったぜ」
そう言ってクマさんは、安心するような表情をした。
「リンネ・イーテ・ドラゴンスレイヤー・・・」
「はい」
ルイーズ検定官が私の名をよんだ。
そして私が返事をすると、ルイーズ検定官は目を閉じ、少し考えるような仕草をすると、口を開いた。
「君の魔法の等級は1+級だ」
「嬢ちゃん。言っておくが1級は、国に危険を及ぼすほどの魔術師に与えられる等級だ。そして最高ランクは0級。0級は世界に危険を及ぼすほどの魔術師に与えられる。嬢ちゃんはこの間の等級なのだと自覚しておいた方がいい」
クマさんがルイーズ検定官の言葉を、補足するようにそう告げた。
そして私はこの時理解した。
この魔法の等級は、魔術師の優劣を測るものではない。魔術師の危険性を測るものだと。
その後、全ての検定を終えた私たちは、帰還の準備をしていた。
パカラパカラ・・・!!
そんな中、馬のヒヅメのけたたましい音が響いてくる。
ヒヒヒヒ~ン!!
「ゴドウィン宮廷魔導士! すぐに王宮にお戻りを!!」
馬の鳴き声とともに騎乗した騎士が、ゴドウィン宮廷魔導士に王宮への帰還を促す。
「何があった!?」
「ワイル・イーテ・ボルッツア子爵が帝国に寝返り、王都への侵攻を開始しました!」
私はこの時イーテルニル王国は、帝国との戦争へと、突入したのだと悟った。
【★クマさん重大事件です!】↓
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