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31:幼女の居酒屋

 現在私は料理研究所にカウンターを付けて、まるで屋台の居酒屋のように、料理研究所を改装して、皆にはカウンター席に座ってもらっている。


 クマさんとアレクシア夫人が隣り合って座り、その右側にはアルフォンスくん、アリスちゃんと席について、これから始まることを予想しながら談笑している。


 今晩は昼間の研究成果のお披露目もかねて、皆を居酒屋風にもてなすのだ。



「まずはお酒からどうぞ。子供はジュースです」



 私は居酒屋で買ったエールを、クマさんとアレクシア夫人に振る舞う。



「え~? もしかしてそれエール? エールって冒険者とか粗暴な人たちが飲んでいる、あの安くて美味しくないお酒でしょ?」


 

 私が土魔法で作った陶器風のコップに、黄金色のお酒を注いでいると、アレクシア夫人がこのお酒の正体に気づいたようだ。



「オイラ、エールよりワインがいいぜ」



 あまり美味しい印象がないのか、二人はエールに嫌悪感を示す。



「まあまあ騙されたと思って、飲んでみてくださいよ」



 私はエールを注いだコップを、クマさんとアレクシア夫人に差し出す。



「お? 冷たいな?」



 この世界では、エールをぬるいままで飲むのが一般的だ。それは氷など冬でもない限り、まず手に入らないからだ。

 またエールなどという安いお酒に、わざわざ高い氷を入れて飲もうとする人もいないようだ。


 しかし冷えたエールは美味いという常識を、彼らは今ここで知るはずだ。



「んぐんぐんぐ!! 何だこりゃ~!! 嬢ちゃんこのエールに何の魔法をかけた!?」



 そして少し口をつけたクマさんは、たまらずいっきに飲み干す。



「え? え? 何? このエールそんなに美味しいの?」


「いらないならオイラにくれ。飲み干してやるよ」


「駄目よ。そんなに美味しいなら少しだけ・・・」



 クマさんに取られまいと、アレクシア夫人はエールを隠すように口元によせ、恐る恐る口に含む。



「んぐんぐんぐ!! ぷは~!! 何なのよこれ~!! 絶対エールじゃないでしょ!?」


「母上。そんなに美味しいのですか? そのエールとやらは」 


「アルフォンス様は駄目ですよ。お酒は大人になってからです」


「ぷは~!! おいちい!!」



 そんな二人を真似して、蜂蜜フルーツジュースを飲むアリスちゃん。


 このエールは水魔法の水温操作によって、凍らない程度に冷やしてあるのだ。

 また冷えた状態を維持するために、水魔法で樽ごと氷づけにしている。


 

「それではベティーさん。まず鶏皮と鶏もも肉を二本ずつお願いします」


「はい。すでに網にのせて焼いております。もう少々お待ちください」



 私はメイドのベティーさんに、鶏皮と鶏もも肉の準備をお願いする。



「何? その子たち今日はそっちにいるの?」


「はい。奥様の料理は、自分たちが作ると意気込んでおりまして、それだけは譲れないそうです」



 その子たちとは、このお屋敷のメイドの、ベティーさんとシンディーさんのことである。

 普段お屋敷の料理は、この二人が担当しているそうだ。


 今回私が外で食べるという話をすると、それではと料理担当を立候補してきたのだ。

 もちろん事前に私の料理の練習もしてもらっている。

 そのおかげで一人欠席しているが・・・。



「あれ? ベンがいないわね。ベンはどうしたの?」



 ベンとはこのお屋敷の執事の、ベンさんのことである。


 その人は「奥様にお出しするに相応しい料理か試食いたします」とか言って、エールを2杯グビグビ飲んで、寝てしまったのだ。


 料理は美味しそうに食べていたので、問題なかったのだろう。



「あら。ベンはお酒に弱いから、気を付けてちょうだい?」


「はい。すみません。以後気を付けます」



 叱られてしまったが、気を取り直して一人二本ずつ鶏皮と、鶏もも肉ののった皿を配る。



「こりゃまたエールに合いそうなもの出してきおって、嬢ちゃんは! はむ!!」



 たまらず鶏もも肉に、かぶり付くクマさん。



「あら! 美味しい! この皮のパリパリがたまらないわね。香ばしくっていいわ。またこの後のエールが最高!!」


「アリスこのおにくすき~!」


「僕もこの肉がいいな~。皮はちょっと苦手だな」



 子供組には鶏もも肉が人気だな、アルフォンスくんは鶏皮が苦手なんだ。



「シンディーさん唐揚げにかかってください」


「畏まりました」


 ジュ~ バチバチバチ!


「お!? 揚げ物か? 待ってたぜ!」


「スコーピオンも揚げてくれ。あれは美味しかった」


「ん? スコーピオン? 私は食べていないんだけど」



 スコーピオンをまだ食べていないアレクシア夫人は、エールを飲みつつ膨れっ面だ。



「はいはい。今出しますのでお待ちください。シンディーさんスコーピオンも8本追加で」


「はい。ただいま」


「わ~い。すこおぴおんすき~」



 そしてまずは揚がった鶏の唐揚げからお出しする。



「は~い。鶏の唐揚げで~す。お好みで酸っぱいオレンジをかけてね~」



 鶏の唐揚げを一人4個ずつ提供する。

 レモンはないので、柚子っぽいオレンジだ。



「んぐんぐんぐ! ぷは~!! 嬢ちゃんエールお代わり」


「あいよ」



 唐揚げを美味しそうに食べつつ、エールの追加を要求するクマさんに、追加のエールを用意する。


 アリスちゃんもアルフォンスくんも、そんな唐揚げを笑顔で食べている。

 唐揚げが大好物な子供は多いからね。


 

「むぐむぐ。これな~に? こんなの王宮でも食べたことないんだけど」



 王宮に揚げ物がないわけないと思うんだけどな? 鶏の唐揚げがないのか?



「むぐむぐ。揚げ物はあるが、この味付けがわからん。んぐんぐんぐ!」



 クマさんによると、この味が王宮にはないらしい。


 どこかの屋台にあるんじゃないかな? ていうかクマさん王宮のご飯食べたことあるんだね?


 そしてスコーピオンのフライも、揚がったのでお出しする。



「何これ!? こんなの私に黙って食べていたの!?」



 スコーピオンのフライに、タルタルソースをかけて食べたアレクシア夫人が、不貞腐れぎみにそう言った。


 言葉が乱れていますよ。


 

「嬢ちゃん。鶏もも肉と唐揚げおかわり」



 はいはい。クマさんはぶれないな~。



「私スコーピオンと鶏皮!!」


「からあげ! からあげ!」


「僕も唐揚げおかわり」


「はいはい皆さん、お野菜も食べましょうね?」



 そんな彼らに野菜サラダをお出しする。



「ちょっと! なに野菜なんか出しているの!? あら? この白いの美味しい」



 アレクシア夫人が、マヨネーズのかかった野菜を口に運ぶ。



「嬢ちゃん野菜は勘弁だぜ~」


「やさいおいしいよ」


「しゃりしゃり・・・」



 そしてその後もエールをあおり、肉を食べ、野菜を食べ、アレクシア夫人がぐでんぐでんに酔ったころで、お開きとなった。





 そして翌朝、二日酔いのアレクシア夫人に、食堂に呼び出された。


 客間につくと、すでにアルフォンスくんと、アリスちゃんが席についていた。

 今日は早い朝ご飯かとも思ったが、その前に話があるようで、テーブルにはまだ食事は用意されていなかった。



「うぷ・・・リンネちゃん昨日はご馳走になったわね」


「二日酔いで苦しそうですが大丈夫ですか?」


「先ほど薬を飲んだから平気・・・よ」



 この世界には二日酔いの薬があるんだね。その薬がきちんと効く薬ならいいんだけど。



「アルフォンス。今日は大事な話があります」


「はい」


「明日は入学したての10歳の子たちの、魔法の等級検定があります。その検定を、アルフォンスも受けなさい」


「え? 僕はまだ9歳で、魔術学園にも入学していませんが?」



 突然、魔法の等級検定を受けろと言われたアルフォンスくんは、困惑気味だ。



「今回は異例です。9歳で魔力が発現した子が2人もいるのですからね」



 なるほど、今回の魔法の等級検定は異例のことなんだね。

 それだけ9歳で魔力が発現するというのは、珍しいことなんだ。



「そしてリンネちゃん」


「はい」


「あなたにもこの検定を受けていただきます」



 え? なぜに私まで?


 こうして私は、魔法の等級検定を受けることになったのだ。

 そしてこの検定は、アリスちゃんも受けるそうだ。



【★クマさん重大事件です!】↓


 お読みいただきありがとうございます!

 ほんの少しでも・・・・


 「面白い!!」

 「続きが読みたい!」

 「クマさん!」


 と思っていただけたなら・・・


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