28:スコーピオンを食べよう
その日昼過ぎにお屋敷に帰宅した私は、さっそくスコーピオン料理に挑戦する。
クマさんによると、スコーピオンはエビに似た味がするそうだ。
そして調理台の上に乗せて、改めて見ると大きい。
頭から尻尾の先まで1メートル以上はあるだろう。これは期待できそうだ。
現在調理台の前には、クマさんとアリスちゃんもいる。何が面白いのかわからないが、私がスコーピオンを調理台の上に出したら、遊びをやめて走って見に来た。
まあそれは良いとして、まずこの非常に硬いスコーピオンの殻をなんとかしないといけない。
「わ~!! だれそれ? まるいよ!!」
「これはゴックさん1号という私のゴーレムですよ」
私がゴックさん1号を出すと、アリスちゃんが驚いてはしゃぐ。
「アリスちゃん、ゴックさんにペタペタ触るのはやめよう、今から作業するから危ないよ」
ゴックさん1号にペタペタ触るアリスちゃんを注意して、引き離して作業開始だ。
「ゴックさん、この斧を持ってください」
まず私はゴックさん1号に、斧を持たせて、スコーピオンの甲殻に挑む。
バキン!!
「きゃ~!!」
その勢いに、またもや驚くアリスちゃん。
怪力のゴックさんは、1撃でスコーピオンの毒針を斬り飛ばした。
これは土魔法で固定しながらやらないと、どこに飛ぶかわからないから危ないね。
次は土魔法で固定して、尻尾を関節部分から斬り落としていく。
バキン!! バキン!! バキン!!
「きゃ~はははは!」
その様子にアリスちゃん大受けする。
子供はたまに変なことで笑うよね。土銃はあんなに怖がっていたのに、何が違うのだろう?
尻尾の関節部分から次々に切断される。そして足も斬りはずしていく。
クマさんもさっきからその作業を興味津々な様子で見ている。
尻尾の切り分けた1部を手に取って見ると、私の手の平よりも大きい。足も太い。これは食べ応えがありそうだ。
まず塩ゆでから試すか。
尻尾の部分は大きすぎて茹でるのに時間がかかりそうなので、足の部分をさらに細かく切って鍋に投入しようか?
ここは細かい作業なので、ウォーターカッターを使う。
ビィィィィィ!
「お~~!!」
アリスちゃんウォーターカッターにも興味津々だ。
さて、蟹は水から茹でるんだよね? サソリも水からなのかな?
ゴトゴトゴト・・・
うん。良い具合に茹で上がって、殻が赤くなってきた。
うぉ! 何という強いエビの香り!!
料理研究所にエビの食欲をそそる匂いが充満して、お腹がすいてくる。
ぐぅぅぅぅ~
さっそく鍋から上げて、調理台に移す。
茹で上がったサソリの足の身を麺棒で押して、ツルンと出してみる。
輪切りにしているから簡単に出てくる。
「でかい!! 今まで見た蟹の身の中で一番大きい!!」
「嬢ちゃんカニじゃなくてスコーピオンだぜ」
この太さは私の中ではもはや蟹の足だ。
さっそく蟹の身にかぶり付く。
「う~ん。クマさんの言うおり味はエビだな」
私がサソリの身にかぶり付く様子を見て、しかめっ面のクマさんと、物欲しそうに指をくわえるアリスちゃん。
「すいません。この匂いに耐えられませんでした。あと二つすぐに出しますので」
私はさらに二つのサソリの身を、麺棒で押してツルンと出す。
「お~。嬢ちゃんが料理するとたちまちに違う食べ物だな。これは美味い」
「おいし~!」
ただ塩ゆでしただけなのにな? クマさんは以前どんな食べ方をしたのか?
その後麺棒を3つほど出して、3人で競うようにツルンと押し出して食べていたら、足はあっという間になくなった。
そして残った尻尾と頭に、一斉に標的をロックオンする。
「まあ、待ってください。尻尾の部分はフライにしますので」
「フライ? 飛ぶのか?」
「とんだらたべられないよ」
「パン粉を付けて揚げるんですよ」
「あ~あれか~。あれは美味そうだな~」
「?」
揚げると聞いて納得するクマさんと、キョトンとするアリスちゃん。
尻尾部分は、殻と身の間に、ナイフを入れて身だけ取り出す。
するとツルンとプリンのような身が、まな板の上にボテっと落ちる。
ほんのりピンクで、このままでも美味しそうだ。
だがこれは、ナイフで細長く切り分けていくのだ。
つまりエビフライもどきを作ろうというのだ。
ナイフで細く切り分けた、サソリの身の水気を、水魔法の水操作で飛ばす。
その細く切ったサソリの身を小麦粉、ビッグオストリッチの卵、パン粉に付けていくのだ。
そして熱した油に投入する。
ジュ~バチバチバチ・・・
何という食欲をそそる音。
だが先ほどの失敗は犯さない。今度は3ついっぺんに揚げているのだ。
揚がったら、3つのサソリの身を網に乗せて、余分な油を落とす。
揚げ物に敷く紙が欲しいな。
タルタルソースを器に入れて準備する。
このタルタルソースは以前料理に使った残りだ。
茹で卵と辛みを取った玉ねぎを細かく刻んで、マヨネーズと酢であえて、塩胡椒で味を調えた逸品だ。
そしてアリスちゃんにも食べやすいように、3つの身には串を刺してみた。
某コンビニの揚げ物を思い出す見た目だ。
サソリ串しとでもよぼうか?
アリスちゃんとクマさんは、競うようにそのサソリ串しを手に取ると、タルタルソースを豪快につけて口に運ぶ。
「ん~ん~!!」
アリスちゃんは口の中にサソリのフライを入れたまま、美味しいと言っているのかな? それとも熱い??
私はそんなアリスちゃんに、蜂蜜フルーツジュースを差し出す。
クマさんはちまちまとまあ、ゆっくり食べているな。
そして私も食べてみる。
サク!!
とても心地好い噛み応え!
エビのような濃厚な香りと揚げ物の香ばしさが、深い味わいを生み出す。
さらにタルタルソースと合わさって、その全てが私の口の中で調和する。
「美味しい!!」
これもまた茹でたものと同様、癖になる美味しさだ。
気づくとあっという間に、数本揚げて食べてしまっていた。
しかしこのまま揚げ物を食べ続けると、最後に待っている蟹味噌ならぬサソリ味噌にたどりつけない。
アリスちゃんとクマさんがジトッとした目で見るが、そこだけは譲れない。
ここは心を鬼にして、残った頭を調理にかかる。
スコーピオンの頭はかなりでかいので、甲羅ごと味噌に塩を加えて火にかける。
しばらくすると、ちょっと周囲が焦げて来たので、水魔法の温度操作でお湯の温度を少し下げておく。
二人は終始私の調理を見ているが、退屈にならないかい?
30分ほどかかったが、周囲を焦がしながらもなんとか焼き上がった。
最後にゴックさん1号に、焼き上がったサソリの頭を持ち上げてもらい、切断部分から、サソリ味噌を食べやすい鍋にうつす。
土魔法で作った長いスプーンで、殻の奥まで味噌をかき出す。
「お~! 美味そうだな嬢ちゃん!」
サソリ味噌からは、エビのような香りがもわっと上がり美味しそうだ。
それぞれの器によそって、焼き上がったサソリの味噌を渡す。
「ほっ! しょっぱいな! しょっぱい!」
「はふはふおいひ~!」
うん。まだ熱いからちゃんと冷ましてから食べてね。
そういう私もさっそくその濃厚な熱いやつを口に含む。
「あち、あち、はふはふ!」
あれ? ちょっと塩気が強すぎたか?
エビの濃厚な風味と苦みが相まって味は悪くはないが・・・
「嬢ちゃん。やわらかいパンをくれ」
「やわらかいぱん?」
そうか、パンがあれば丁度いい味になるね。
私は収納魔法で、あらかじめ切り分けておいた天使のパンを出して、二人に渡した。
クマさんはスプーンに味噌をとり、まるでバターでも塗るように、なめらかにパンに味噌をぬっている。
「これもおいし~!」
アリスちゃんはパンだけで食べ始めた。
パンをスープにつけて食べたりはしなかったのかな?
もちろん私もさっそく天使のパンに、サソリ味噌をつけて食べてみる。
パンの風味と、サソリの濃厚な香りが相まって、やめられない止まらない味だ。
「美味しい!!」
「おいし~!!」
アリスちゃんがそんな私をまねて叫ぶ。
サソリの味噌が全てなくなると、クマさんはウォーターカッターで残った空のサソリの頭を真っ二つにして、殻の内側についた焦げた味噌を食べ始めた。
その様子はどこか野生の熊を思わせる姿だった。
アリスちゃんはそんなクマさんを、目を丸くして見ていた。
【★クマさん重大事件です!】↓
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