表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

78/728

27:スコーピオン狩り

 現在クマさんと私は、久々の狩りをするために、森の周辺に来ている。

 もちろん今回からはアリスちゃんも連れて来た。

 まだ朝も早いので、アリスちゃんは眠たい目をこすりつつ欠伸をしている。


 そして森では出来るだけ、土雲は使わないつもりだ。ゆっくり散歩もかねて、徒歩で探索するのだ。

 今日の目的はなんとあのサソリだ。クマさんによるとそのサソリは、1メートルほどもある巨大なサソリらしい。


 なぜそんなサソリ狩りに、行くことになったかというと、それは昨晩のことだ。





「嬢ちゃん。エビが食べたいなら似たようなのなら知っとるで」



 それは昨晩寝る前に、私があまりにもエビエビ言っている時に、クマさんが口にした一言だった。



「ええ? シュライプがこの周辺にいるんですか?」


「ああ。嬢ちゃん虫とかよく怖がるから、シュライプとかも嫌いかと思ってな。避けて探知していたんだ」


「シュライプと虫は別物ですよ!!」



 日本人の私としては、エビと虫は区別して考えたい。ていうか虫は食べたくない。

 しかしながらクマさんの言うシュライプが、私の頭の中のエビとはかぎらない。


 前世で聞いた話だが、戦時中は食料不足の時に、セミを取って食べていたそうだ。

 そのセミがエビに似た味がしたという。


 まさか巨大なセミとかいうおちはないよね?



「念のために聞きますけどそれは本当にシュライプなんですよね?」


「いんや。スコーピオンっていってな。ハサミ以外はほとんどシュライプなんだわ。あと尻尾に毒針があるな」



 サソリか! 個人的にはカニでも良かったが、あえてそこはサソリで我慢しよう。



「サソリ!! サソリならば期待できますよ!! 明日さっそく取りに行きましょう!」


「また妙なこと言いくさって。サソリじゃのーてスコーピオン!!」



 


 そして話は現在にもどる。


 期待に胸躍らせて、鼻歌まじりにルンルン気分で森に向かう。アリスちゃんの手を引いて、私の後に続くクマさん。


 ただ森に入ろうとする私たちに、またもや予測不能な事態が起こる。



「お~い! リンネ殿~!」



 なんとここで意外な人物と再会したのだ。


 その人物とは王都への旅をともにした、侯爵家のクリフォードくんであった。

 クリフォードくんは魔術師のクリスティーナさんを、護衛にしてやって来ていたのだ。



「いや~。実は当家のマヨネーズが不足していてね。原料のビッグオストリッチの卵を取りに来たのはいいが、クリスティーナが森に入るのを反対していてね」


「当たり前です!! 事情も話さず護衛に来てくれと言うのですからついて来てみれば、ビッグオストリッチの卵が目的なんて無謀にもほどがあります」



 なるほど。クリスティーナさんが止めるのも無理はないな。

 ビッグオストリッチは危険な魔物だし、卵は見つけたとしてもすぐに凍らせないと(かえ)ってしまうからね。

 風魔術師のクリスティーナさんでは無理だろう。



「市場の卵でもマヨネーズは作れると、料理人のドルフより聞いております。ビッグオストリッチの卵など必要とは思えません!!」


「わかっていないなクリスティーナは・・・・。

 ビッグオストリッチの卵と飼育された鶏の卵とでは雲泥の差がある。鶏の卵にはあの濃厚さが足りないのだよ」



 ちょっと待て!! 

 いま聞き捨てならないことを耳にしたぞ!? あるのかよ鶏の卵!! 

 しかも飼育されているのかよ!! 養鶏か!!!


 そういえば王都に来て以来、忙しくて王都の市場やお店などはゆっくり回っていなかったな。

 鶏の卵があるならそっちを買った方が場合によってはいいよね?



「ちょっと質問があります!!」



 私は挙手で、ただいまクリスティーナさんと口論中の、クリフォードくんに質問をする。



「は、はい・・・なんであろうかリンネ殿?」


「鶏の卵について詳しく!!!」



 その発言を聞いたクマさんは、しかめっ面で私を見る。

 そしてアリスちゃんが大欠伸をする。


 あのクマさんの目は「また嬢ちゃんの病気がでたで」とか思っているにちがいないが、今は関係ない! なぜならそこに鶏の卵があるから!



「鶏の卵などという普通の食材について聞きたいと? まあ別にかまわないが・・・。

 鶏の卵は王都近辺の村で養鶏された鶏のもので、毎日特定の数が王都の市場に出回るのだ。もちろん侯爵家にもいくつか卸されているよ。

 ただビッグオストリッチの卵が当たり前のリンネ殿にとって、必要なものとは思えないのだが?」



 この時エビの次は鶏の卵だなと、目標をさだめる私だった。


 

「ではさっそくスコーピオンとビッグオストリッチの卵を取りに行きましょう」



 そして私は森に向けて再び歩き出す。



「良いのですか? リンネ殿?」


「いい情報もいただきましたしね。危険な状態で森に入られて、怪我でもされたら寝覚めも悪いですし、ここはこのリンネ・イーテ・ドラゴンスレイヤーが協力いたしましょう!」



 私は胸をはって、騎士らしく告げる。



「さすがドラゴンスレイヤー殿! 我が親友よ!」



 ため息をつくクリスティーナさんをよそに、私たちは森の中へと歩いて行くのだった。


 


 

 森の中に入るとさっそく動き出す人物がいた。それはアリスちゃんだ。

 ことあるごとに、これは何、あれは何と尋ねてくる。

 今まで王宮に閉じ込められていたせいか、森のあらゆるものが珍しく映って、興味をそそるのかもしれない。



「クマちゃんこれは何?」


「それはただの雑草の葉っぱだ」


 

 ふとアリスちゃんが指さす葉っぱを見ると、そこに食べごろなフキノトウが群生していた。



「ちっが~う!! それはフキノトウという山菜です!! 雑草と山菜を一緒にしないでください!!」



 フキノトウは私がせっせと採取したよ。


 そしてお待たせしたお詫びもかねて、私が蜂蜜フルーツ飴を全員に配っていた時に、クマさんが何かの気配をとらえた。



「嬢ちゃん。魔物だ」


「まもの? まものはアリス、はじめてみるよ」


「しっ。 アリスちゃん少し静かにね?」



 私はそんなアリスちゃんに注意をする。



「あっちだ。嬢ちゃんがお望みのスコーピオンが7匹はいる」



 私たちはクマさんが指さす方向に急行する。



「きゃ~♪」



 なぜかその様子に大はしゃぎのアリスちゃん。


 そんなにサソリが見たいの?





 そして到着すると、そこには死亡したビッグオストリッチをついばむ、スコーピオンが6匹いた。



「一匹足りませんね?」


「ちっ。一匹は奥で卵をついばんでやがる」


「何ということだ。貴重な卵が・・・」



 それを聞いたクリフォードくんが、がっくりと項垂れる。



「クリスティーナはどうする? オイラたちの狩りに加わるか?」


「いや。私の魔力は多くはない。出来れば坊ちゃんの護衛に全て使いたい」


「そうか。なら遠慮なくオイラたちでいただくぜ」



 クマさんはそう言うやいなや、スコーピオンの群れに向けて突然飛び出して、一番手前にいた一匹に飛びかかる。



 ガキン!!


「キィィィ!」



 スコーピオンの悲鳴とともに、クマさんのウォーターカッターがスコーピオンを真っ二つに切り裂く。



「虫系の魔物は一部だけつぶしても駄目なんだぜ。

 こうやって一気に切り裂くことで、ようやく即死にいたるんだぜ!」


「何だあれは!? 風の刃でもああは斬れないぞ!」



 そのウォーターカッターの斬れ味に、クリスティーナさんが驚愕する。


 さすがクマさんだ。これならスコーピオンも一撃だろう。

 そして上空へ飛び立って、忍者のごとく姿を消すクマさん。


 私には木の上に登った気配が魔力感知で感じ取れた。

 私たちに気づいたスコーピオン5匹は、カサカサと音を立てて、突撃してくる。



 ドドドドドド!



 私は土魔法を使い、無数の槍を地面から出現させる。

 この土の槍は、スコーピオンの甲殻にはあまり効果はないだろう。


 しかし私がこの無数の槍を出現させた理由は、攻撃のためではない。

 槍と槍の間にスコーピオンを挟み込み、動きを封じるためなのだ。


 一匹槍の拘束を避けて接近してきたが、私は土魔法で土剣を発動させると、容赦なく近づいた一匹を土剣の腹で叩きつぶした。


 もったいないが安全のためにこの一匹は諦めよう。


 

「あ~。もったいない」



 クリフォードくんが残念そうに呟く。


 つぶされたスコーピオンは見る影もない。これはもう食べられないだろう。


 そして土槍に挟まれ、拘束されている3匹に近づくと、水魔法を使い、一気に温度を下げて凍結させる。



 ガキ~ン!!


「すごい・・・」



 クリスティーナさんがその様子に絶句する。



「どうしたの? うごかなくなったよ」



 その様子が不思議なのか、アリスちゃんはキョトンとしている。



「生き物は凍らせると固まって死んでしまうんですよ。今のは私がスコーピオンの周囲の湿気を凍結させて凍らせたんです」


「ふ~ん?」



 アリスちゃんはその現象が理解できないのか、首をかしげていた。



「や~や~。これは見事だね!? これを何匹か侯爵家にも卸してはくれないかい?」


「それは後で応相談ですね」



 クリフォードくんがそのスコーピオンを見て、交渉を持ちかけてくるが、交渉事は狩りが終わったあとだね。



「嬢ちゃん。この先にビッグオストリッチが2体。卵があるといいなクリフォード」


「おお! これは期待が持てますね」



 いつの間にか卵の側にいたスコーピオンは、クマさんによって狩られていた。

 スコーピオンの頭から尻尾にかけて出来た、致命傷であろう切り傷がそれを物語っている。



 パン! パン! パン! パン!


 「ひ~ん! こわい~!」



 2匹のビッグオストリッチは、私の土銃で瞬殺だった。

 しかしアリスちゃんが土銃の音を恐れて泣き出してしまう。


 

「よしよし。怖かったな~」



 そんなアリスちゃんを抱きしめて慰めるクマさん。

 この先旅に一緒に出るのならば、アリスちゃんにはこの音に、慣れてもらわねばなるまい。



「お~! 宝の山ですな~。こんな状態のビッグオストリッチが2体とは」



 ビッグオストリッチは2匹とも、土銃の弾丸に頭を貫かれて即死だったようだ。

 そんなビッグオストリッチの状態を見て、興奮するクリフォードくん。



「残念ながら、卵の気配はないぜ」


「ふ~。やはりそう上手くはいきませんな」



 やはり高級食材として名高い、ビッグオストリッチの卵は、そう簡単には手に入らないようだ。



「次は向こうからビッグオストリッチの気配が4体。嬢ちゃんの土銃の音を聞きつけて反応したのかもしれないな」



 クマさんの指し示す方向に向かうと、そこには暴走中のビッグオストリッチが4体見えた。

 どうやら向こうもこちらを目指しているようだ。

 私は土雲を出すと、土雲にのってビッグオストリッチに向けて直進する。


 奴らと接触する刹那、土魔法で低い落とし穴を掘って転倒を狙うが、転倒したのは1体のみで、残り3体が落とし穴を飛び越えて飛びかかってくる。



「土剣!」


 ぶお~ん!



 私は土剣を発動して横に薙ぎ払うと、3体に直撃して吹き飛ばす。

 吹き飛ばされた2体はそのまま転倒、直後クマさんに首を刈られて絶命した。

 もう1体は、最初に転倒した1体と、もつれ合うように転倒していた。


 これで生き残りは、この転倒している2体のみとなる。

 


 パン! パン! パン!



 残りの2体は、土銃の弾丸に頭を貫かれて絶命した。



「嬢ちゃん。ビッグオストリッチが爆走してきた方向に卵の反応がある」



 私が4体のビッグオストリッチの骸を収納魔法でしまうと、すぐに卵があると思われる場所に急行。

 ビッグオストリッチの卵を2個見つけることが出来た。



「素晴らしい! 一個大金貨1枚で買い取ろう!」



 さっそくクリフォードくんが交渉に乗り出す。



「いいでしょう。一個はそちらに売りましょう。クマさんもそれでいいですか?」


「ああ。かまわないぜ」



 そして森を出た後、スコーピオンも数匹買い取ったクリフォードくんは、ホクホク顔で帰っていった。


 だがその後クリフォードくんが、エインズワース侯爵にこっぴどく叱られたのは言うまでもない。



【★クマさん重大事件です!】↓


 お読みいただきありがとうございます!

 ほんの少しでも・・・・


 「面白い!!」

 「続きが読みたい!」

 「クマさん!」


 と思っていただけたなら・・・


 ブックマークと

 画面下の広告下【☆☆☆☆☆】から評価をお願いします!!

 【★★★★★】評価だと嬉しいです!


 いつも誤字報告を下さる方、ありがとうございます!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ