22:ドラゴンスレイヤー授賞式
今回は、リンネ視点→クマジロウ視点→リンネ視点で行きます。
「わぁ~! これがイーテルニル城ですか」
私は現在ドラゴンスレイヤーの功績を称える、勲章の授賞式に参加するため、アレクシア夫人に連れられて、馬車でイーテルニル城を目指している。
そんなイーテルニル城は、遠目で見ても大きくて目立つ。
クマさんも、アルフォンスくんも王城は初めてではないらしく、あまりはしゃいだ様子はない。
だが私にとっては初めてで、しかもあのRPGでおなじみのお城が、まじかに見られるとあって、興奮しきりであった。
「リンネ。あまりきょろきょろしてははしたないですよ」
そんな私にアレクシア夫人のお叱りが入る。
「クマさん! 見てください! あの門、大きいですよ!!」
そんな興奮しきりの私の耳には、アレクシア夫人の声もどこ吹く風であった。
私は興奮のために自分が抑えきれず、門まで走り出してしまう。
お城の門の前には跳ね橋が降ろされており、その跳ね橋も、とても大きくて見ごたえがある。
ガバ!
「嬢ちゃん。あまり興奮するな。魔力が溢れてきよるで」
そんな私の背後から、クマさんが抱きかかってくる。
その衝撃で我に返った私は、周囲を見て笑う人たちがいるのに気づき、少し恥ずかしくなってようやく落ち着いた。
式典まではまだ時間があるらしく、私たちは控室へと案内された。
「リンネ。式典では、はしゃいではだめよ。王の謁見の間は大きくて圧倒されるような場所だけど、自制してね。2日間教えたことをちゃんと果たしてちょうだい」
「はい。アレクシア夫人。先ほどの失態、失礼いたしました」
私は先ほどの失態を思い出し、アレクシア夫人に謝罪する。
「でもあなたにもあんな子供らしいところがあって安心したわ。あなた普段、達観した大人みたいな雰囲気だから」
中身が成人男性の意識を残しているためか、普段そういう態度になってしまうのかもしれない。
今更子供らしくと言われても、先ほどのような状況でもないかぎり、もう子供の部分は顔を出さないような気がする。
「悪い嬢ちゃん。オイラ野暮用が出来ちまった。式典がんばれよ」
気づくとクマさんは座っていた席を立ち、控室を出るところだった。
私はそんなクマさんを追いかけて、廊下に出る。
「え? クマさんいったいどこへ?」
クマさんは見送る私に背中を向けたまま、手をヒラヒラと振ってどこかへ行ってしまった。
いったい野暮用とは何だというのだろうか?
「あら残念ね。クマジロウもあんなに式典の練習に一生懸命だったのに」
クマジロウ視点~
ところ変わってここは、王宮の敷地内にある離宮だ。
この離宮には、王族と血のつながりがありながら、事情により王族とは認められていない、幼い姫がいた。
幼い姫は離宮を出ることを許されず。いつも一人で寂しく過ごしている。
そんなあいつを放っておけず、オイラはたまにこの離宮を訪れる。
今日は嬢ちゃんの式典の日でもあるが、ここらに妙な気配を感じて、放ってはおけなかったのだ。
「あ~!! クマちゃんだ!!」
今はメイドと散歩中だったようだ。こちらに気づいて走り寄って来る。
「おう! 元気しとったか~アリス。ついでにメイド」
メイドは寡黙に会釈だけする。
ここらの使用人はあまりアリスには口を利かない。
姫であるアリスに、口を利かないというのは無礼なようだが、そこには特殊な事情がある。
これはオイラから見れば、感心できない人間の社会ルールみたいなもんだ。
ただ今日は少し事情が違うみたいだがな。
リンネ視点~
現在王宮が用意した緑のドレスに身を包み、私は王の謁見の間に来ている。そして今は式典の最中だ。
式典ではドラゴンスレイヤーの勲章以外にも、手柄のあった者に勲章を与えたり、陞爵したりと、色々な内容が盛り込まれており、私の順番は一番最後なのだそうだ。
王の謁見の間は、とても広く、豪華な造りの部屋だ。
周囲には多くの貴族が集まり、護衛の騎士などの姿も見える。
部屋の奥の壇上には、中央に国王と王妃、その左にエドマンド宰相が立つ。
右側にいるのは、王国の騎士で一番偉い人だろうか? 顎髭をはやした壮年の、偉そうな騎士がいる。
国王の後ろにいるのは王子たちだろうか? その一番左にはゴドウィン宮廷魔導士の姿も見える。
「次! 邪悪なドラゴンを討伐せし者! リンネ!」
エドマンド宰相が私の名をよぶ。
ついに私の番がやって来た。
「はい!」
すると周囲にざわめきが起こる。
「あんな幼い子供が?」
「平民ではないか!」
驚きや罵倒、そういった声も聞こえてくる。
「ドラゴンスレイヤーのリンネよ! その威厳を示すために、其方の剣を掲げることを許す」
「はい!」
これは事前に予定されていた、私の容姿や名前から、貴族たちに侮られないための措置であり、土剣を発動して、掲げるという内容である。
本来はここで龍剣を掲げる予定だったらしいが、危険なため廃案となった。
そして私は土魔法を使い、土剣をこの場に発動、いや顕現させた。
ド~ン!
そして掲げた土剣は、いつもよりちょっことだけ大きくて、誇らしげに感じた。
しかも顕現する瞬間に、少し衝撃波をまきちらしやがった。
こいつ実は意思があったりしないよね?
その巨大な土剣の存在に、周囲の貴族は畏怖し、沈黙した。
私は土剣をいったん収納魔法にしまうと、壇上の下まで歩いて行き、そこでかしづいた。
「面をあげよ!」
「はい!」
私は顔を上げて国王の顔を見る。
「ようやく会えたな。ドラゴンスレイヤーのリンネよ。まさか本当にそのような幼子だったとは驚いたぞ」
国王は、孫を見るお爺ちゃんのような表情で、私にそう語り掛けた。
「そなたにドラゴンスレイヤーの称号と、勲章を与える」
国王がニッコリ笑うと、近くで箱を持って立っていた騎士がかがみこんで、私の胸に勲章を付けてくれる。
え? ドラゴンスレイヤーって勲章だけじゃないの? 称号って言ってたけど・・・。
「リンネよ。これからはリンネ・イーテ・ドラゴンスレイヤーと名乗るがよい」
「はい?」
「称えよ!! リンネ・イーテ・ドラゴンスレイヤーを!!」
「「「わぁぁぁぁぁぁ!!!」」」
貴族たちの声援が、謁見の間に響き渡る。
この件については後でアレクシア夫人に相談だな・・・。
その後、私のお菓子を作るデモンストレーションが開始される。
そしてデモンストレーションが、終盤に差し掛かったその時、けたたましく響く騎士の足音が、謁見の間に響いた。
「大変です!! 王宮内に魔物が入り込んだようです!!」
私の作った綿飴を食べて、ご満悦な国王の前に、警備の騎士が駆け込んできたのだ。
「何ということだ!」
「王宮に魔物だと!」
周囲がざわめく中、私は魔力感知で魔物の気配を探る。
しかしいっこうに魔物の気配はつかめなかった。
それどころかここから離れた場所に、クマさんのただならぬ気配を感じる。
これは怒り? 緊張? クマさんが危ない!!
「リンネ・イーテ・ドラゴンスレイヤー! 魔物討伐に向かいます!!」
さっそくもらった名前を、行動の大義名分に使う。
私は土雲を全速力で走らせ、クマさんのいる場所を目指した。
【★クマさん重大事件です!】↓
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