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01:転生したら幼女でピンチだった

 俺の名前は、小鞠 瑛多。

 美味いものを食べるのが大好きな、食いしん坊なサラリーマンだ。

 料理なら、作るのも食べるのも大好きだがな。


 その日、俺はいつものように、会社のデスクで仕事をしながら無意味にボヤいていた。



「このままだと今日も残業だな・・・。ラーメン食いてえ・・・」



 そしてカタカタと、ノートパソコンを打つ音だけがむなしく響く。

 丁度季節は、春もそろそろ終わろうかと思われる5月後半、にもかかわらずその日は妙に寒気がした。



「うお! 寒みいぃぃ!」



 その寒さに耐え切れず部屋の温度を上げようと、窓の側にあるエアコンのスイッチに駆け寄る。

 ふと窓から外を見れば、季節外れの雪がチラチラと降っていた。



「異常気象!?」



 俺は思わず窓ガラスに手を当てて、窓に顔を寄せる。

 その直後窓ガラスに「ピシッ!」とひびが入る・・・・瞬間・・・


 目の前が真っ白になったかと思えば、その直後・・・・





 世界は暗転した。





 気付くと暗く、俺1人入れるような狭い場所にいた。

 周囲をさわり、それが木で出来ていることがわかった。


 どうしてこんなところに俺はいるんだ?


 ところどころに隙間があり、光がさしている。

 その隙間から外を覗くと、人の腕らしきものが見えた。

 

 しばらく覗き込んで観察すると、どうやらここは木箱の中で、人が覆いかぶさった状態になっているらしいことがわかった。


 覗く限りではどこかの家のようで、家には扉はついておらず、いや壊れているのか?


 木箱の隙間からでも外が丸見えだ。

 家の壁は木で出来ており、ずいぶんとボロイ造りにも見える。


 なんとか木箱から出ようと、木箱の天井部分を押してみる。

 すると上に人が覆いかぶさっているために、抵抗はあったが少し動いた。


 このまま力を入れれば開くかもしれない。



「ぎゃ! ぎゃ! ぎゃぎゃ!」



 天井改め木箱の蓋を開けようとすると、外から奇妙な鳴き声がする。

 鳴き声のする方を見ると、家の外に緑色の醜悪な顔をした生き物が、3体いた。

 3体は血の付いた刃物のようなものを持ち歩き、とても危険に見える。


 奴らがここに来れば、襲われるかもしれない!


 そう思った俺はしばらく息を潜めて、奴らがどこかに行くのを待った。

 しばらくして奴らがどこかに行ってしまったので、音がしないようにゆっくりと力を入れて、木箱の蓋を開ける。



 ドサ!!!



 木箱に覆いかぶさっていた人物は、蓋が開くと同時に横に倒れてしまった。


 しまった! 物音で気づかれるか!?


 と思いしばらく待つが、緑の生き物は現れなかった。


 地面に横向きに倒れている、木箱に覆いかぶさっていたと思われる人物を見る。

 それは中世風の古ぼけた茶色と、白のエプロンドレスを着た、巨大な女性だった。

 髪は茶髪のポニーテイルで、三角巾をかぶっている。

 顔は伏せていてよく見えない。


 身長170センチメートルの俺の2倍は身長があるか?


 女性の腹の部分に、大量の血が流れたと思われる痕跡があった。

 女性が息をしているか確かめるが、すでにこと切れているようだ。


 し、死んでいる・・・さっきの緑の奴らに殺されたのか?


 直後、目から止め処なく涙があふれてくる。


 なんだこれ? 意味もなく涙があふれてくるぞ!


 涙を手でぬぐい、直後俺は自分の体の異変にも気付く。

 手が縮み、まるで紅葉のような小さな手の平になっているのだ。


 慌てて足も見ると、縮んでまるで幼児のようだ。

 そして裸足だった。

 着ている服も確認すると、どうやらシンプルなワンピースを着ているようだ。


 髪も長くなって、腰のあたりまで届いている。

 そこまで来て俺は、ようやく転生していたことに気付いた。

 そして男の部分も・・・・・無くなっていた・・・・


 どうやら俺はいつの間にか、幼女に転生していたようだ・・・・


 すると地面に倒れて亡くなっているのは、この娘の母親かもしれないな。

 そしてこの女性が大きいのではなく、俺が小さいのだ。


 なぜか俺にはこの幼女の記憶が、全くなかった。


 ショックで記憶を失ったのか? 


 そんなことより、なんとかして安全を確保しなければ、このままではいつかあの緑の連中に見つかり、俺も殺されるかもしれない。


 これがもし、以前読んだ異世界もののラノベと同じような状況なら、ある合言葉で、この状況が打開できるかもしれない。



「ステータスオープン」



 そう、その言葉がステータスオープンだ。


 しめた! 開いたぞステータスウィンドウ!


 それはどこか神秘的なデザインのステータスウィンドウだった。

 表示はもやもやとして安定しないが、日本語で書いてありかろうじて読める。

 なぜ日本語かと思ったが、今はそれは置いておく。


 この幼女がこの状況から打開するのは、何か強力な魔法かスキルが必要だ。



 名前 リンネ(女)

 体力 弱

 魔力 ?

 物理攻撃 弱

 魔法威力 ?

 適性魔法

  土魔法

    習得魔法:土剣(つちけん)


 特技 かけっこ



 何ともまあアバウトなステータスウィンドウだ。

 数値とかでは見れないのか?


 そして気になるのは土魔法の「土剣(つちけん)」だ。

 とりあえずめいっぱい力を込めて、この土剣を使ってみる。


 土魔法は圧縮が大事とかラノベで見たな。

 ならそれもイメージに入れて、俺はめいっぱい力を込めて土魔法を発動する。



「土剣発動!」



 すると右手に俺の身長の3倍はある、石の巨剣が出現した。


 何だこのでかい剣は!?

 こんなの幼女の力じゃ扱えないだろ!


 と思ったが、少し力を込めただけで、その巨剣は持ち上がった。


 まさか中身のないはりぼてじゃないだろうな? 


 その巨大さで軽く持ち上がることから、発泡スチロールのような素材だと思ったのだ。

 もしくは中身のない、紙で出来た張りぼてとか・・・


 そう思い俺は巨剣を上段で構えて、そのまま振って家の壁にぶつけてみた。



「おりゃあ!!」


 ズゴォォォォォン!!!



 見事巨剣は天井から壁にかけて、叩き斬って見せた。

 俺はその破壊の様子に唖然とし、しばらく固まってしまう。


 それは斬るというよりも、破壊しながらめり込んだが正しい表現だ。

 剣というよりは、鈍器と呼ぶにふさわしい武器である。


 この硬さから石にも見えるが、やはり圧縮された土なのだろうな。

 ただこれで俺は戦う手段を手に入れた。



「ぎゃぎゃぎゃ!!」



 音を聞きつけたさっきの緑の奴らが、家の入口に殺到する。

 どうやら先ほどの大きな騒音で、気付かれてしまったようだ。

 奴らは3体いて、どれも狂暴な顔つきをしている。


 だが武器を得た俺は、もう躊躇することはない。

 家の入口ごと土剣で突き、奴らを粉砕する。



「そりゃあ!」


 ドゴーン!!



 土剣が命中した3体はもつれあい、緑の血を噴き出しながら吹き飛んでいった。

 醜悪とはいえ、生き物に強力な攻撃をしかけたことに少し嫌悪感を覚えたが、今は気にするのをよそう。


 (とど)めを刺そうと奴らに近づき確認すると、バラバラになって散乱していた。

 ちょっとやりすぎてしまったようだ。



「うぷっ・・・!」



 その様子に気持ち悪くなり、吐き出しそうになるが、これからそんな風景を、さんざん見ることになるだろうと予期した俺は、覚悟を決めてぐっと飲み込む。

 他に緑の奴らがいないとも限らないからな。


 外に出た俺は、周囲を見渡して状況を確認した。


 そこは村のようで、畑や木造の建物があるのが見える。

 見る限り緑の奴らはいないようだ。

 いちおうは一安心だが、水や食料なくしては、いつか衰弱して死んでしまう。

 どこかの家でめぐんでもらおう。


 俺はしばらくこの近辺を、探ってみることにした。

 ただ緑の奴らに対する警戒は怠らない。


 この土剣は目立つし、今は邪魔だな。

 どうやって消すんだこれ?


 土剣はその辺に置いておくことにする。

 緑の奴らがいたらまた出せばいいし・・・



 ド~ン!



 まずは土剣を地面に置いた。

 その音に奴らが来ないか一瞬緊迫して、きょろきょろ周囲を見回す。

 その後移動を開始した。


 移動時は建物の陰に隠れながら移動するのを心がける。

 それは不意打ちや奇襲を、警戒しての行動だ。


 見つかって突然攻撃を受ければ、俺みたいなひ弱な幼女は、ひとたまりもないだろう。

 最悪一撃であの世行きだ。


 まずは元いた家を散策する。

 瓦礫があるだけで、特に食料や水などはない。

 緑の奴らが奪って行ったのかもしれない。


 次に俺は、別の家の様子も確認するために、家から外に出た。


 そして1軒目の家の入口に向かう。


 ここにも扉はなく、どうやら壊されているようだ。

 中に入るが、生き残りはいなかった。

 ここも食料や水が、全て奪われているようだ。



「奴らこの村を略奪目的で襲撃したのか?」



 この村は緑の奴らの襲撃を受け、あらいざらい食料を奪われている可能性もある。

 何軒か確認したが、今のところ同じような状態だ。


 丁度広場のような場所に差し掛かると、奴らは30体くらいの集団をつくり、周囲の様子を窺っていた。


 俺はふいに怒りが込み上げてくるのを感じた。

 それは村人や家族を殺された、この娘の怒りかもしれないな。


 気付けば俺は緑の奴らに向けて突進していた。



 テテテテテテ・・・!



 奴らはこちらが小さいのを確認すると、下卑た笑みでこちらを見てくる。

 生き残りの弱そうな子供を、どう痛めつけてやるのか考えているような顔だ。



「土剣!」



 俺は奴らに接近すると瞬時に土剣を発動する。

 途中転びそうになる反動も利用し、空中で横なぎの1撃を放つ。



 ドガガ~ン!!



 油断していた奴らに、巨大な土剣がもろに直撃する。


 緑の奴ら5~6体をまとめて薙ぎ払い、さらに吹き飛んだ緑の奴らが複数の緑の奴らを巻き込んで吹き飛んでいく。

 それはまるで、何かの連鎖反応のようだ。


 不気味な青い血が周囲に飛び散り、まき散らされ、まさに地獄絵図となった。

 予想できないほどの破壊が、暴力が・・・そこに、引き起こされたのだ。

 そこで初めて俺は、土剣の威力を、恐ろしさを実感した気がした。

 

 しばらくして、地面とお腹が接触する感覚が、ドンとくる。


 見ると周囲には血や肉片が散乱し、まさに死屍累々の状態となっていた。

 その過剰なほどの破壊に驚き、お互いしばらく放心状態になる・・・・



「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」



 1体が悲鳴を上げると、奴らは一目散に散り散りになって逃げだした。

 そしてしばらくして、その場はシーンと静まり返った。

 我に返ると俺は、ゆっくりと立ち上がり、お腹についた砂を払った。


 その惨状をいつまでも見ている場合ではない。

 俺は次の行動に移らねば、生き残れない可能性すらあるのだ。

 食料や水、安全な場所の確保・・・・

 それが出来ないうちは、安心することはできない。

 その後しばらく村を調べたが、緑の奴らはいないようだった。


 最後にこの村で一番大きな石造りの家に入る。


 おそらく金持ちの家だろう。

 豪華な調度品の欠片があちこちに散乱していた。

 どうやら人はいないようだ。

 避難したのかあるいは・・・


 とりあえず何か食料を探して散策する。


 相変わらず食料は見当たらないが、奇妙なポーチを発見した。

 そのポーチを開けて中を覗き込むと、畳2畳分くらいの空間が広がっていた。



「異世界ラノベのテンプレ、空間収納?」



 中には何かが詰まった大きなズタ袋が一つと、樽が1樽置いてある。

 ポーチの入口から頭を入れて入ろうとするが、ポーチの入口には俺の小さな頭も入らない。

 ポーチの中に手を入れると、不思議とズタ袋を掴んだような感触があった。


 中を見る限り、あのズタ袋には俺の短い手は届きそうにないのだがな・・・・


 引っ張り出そうとすると簡単に出てきた。

 それはとてもこの小さなポーチに入らないような、大きなズタ袋だった。


 袋の紐をほどいて中を見ると、小麦粉が入っていた。

 樽も同じように引っ張り出して見る。

 樽の中は水だった。

 飲んでみると、少し臭みは感じるものの飲めなくはない。



「しめた! 水だ!」



 これでしばらくは飲み水に困らないだろう。


 小麦粉は水と合わせてうどんとか、クレープ生地くらいにはなるのかな?

 酵母があればパンもいけるか?


 小麦粉の袋と水の入った樽は、ポーチを上からかぶせるように入れると、するっと中に入った。

 俺はそのポーチを、収納ポーチと名付けた。


 収納ポーチをポケットにしまい、さらに部屋を散策すると、石の床に傷だらけの鉄の扉があるのを見付ける。


 脱出用の地下通路か何かだろうか? 


 この家に人の気配は一切なかったことから、もしかしたら床下から村の外へ避難している可能性もあるなと、俺は思い至る。



「ぎゃぎゃぎゃ!!」



 その時外から緑の奴らの声が再び聞こえてきた。

 もしかしたら更なる大軍を引き連れてきたのか、強敵でも連れてきたのかもしれない。

 さっきまでは考えなしに戦っていたが、この土剣の検証もしていないし、魔力の限界もわからない。


 戦ったとして途中で力が使えなくなる事態に、陥る可能性もある。

 さらにこの土剣が通じない相手など出てきたら、目も当てられない。


 そう思いいたった俺は、鉄の扉の中に避難しようと考えた。

 だが鉄の扉を開けようと引っ張ってみるが、鍵がかかっているようで開くことはない。



「土剣でこじ開けられないかな?」



 俺は土剣を発動し、鉄の扉の下に石床ごと突き入れる。



 ドゴォ! ガラァアン!



 そして鉄の扉をこじ開けた。


 鉄の扉は勢いよく飛んでいき、石の床には地下への階段が現れた。

 やはりここは避難通路ではないだろうか? 

 違っても隠れ場所には良いかもしれない。



「奴らが追ってこれないように、下に降りたら土剣で入口は壊しておくか・・・」


 ドカ~ン! ガラガラ・・・



 俺は地下の階段を降りると、土剣で地下の入口を破壊して、入口を封じた。

 中は真っ暗だが、行く先々に光る石が設置してあり、そこが通路であることがわかった。

 それはまるで俺の行き先を、誘導しているようだ。



「ぎゃぎゃぎゃ!! ぎゃ~~!」



 しばらく中を進むと、地下の入口付近から奴らの声がする。

 あれだけ派手に壊れていれば、この地下への入口は見付けられないだろう。

 見付けたとしても、瓦礫にはばまれて入れないだろう。


 俺はさらに先へと、歩みを進める。

 やがて奴らの声は遠ざかり、聞こえなくなった。


 しばらく歩くと、行き止まりに差し掛かり、上から光が差していた。

 その光を覗くと眩しく感じたが、やがて慣れてくると、それが空であることがわかった。

 上に円い穴が開いていて、そこから空が見えていたのだ。

 

 形からすると廃れた井戸か何かだろうか? 


 木の梯子がついていたので、上に登ってみた。


 やはりそこは井戸のような場所で、顔を出して周囲を見ると、遠くの方に木の塀らしきものが見えた。


 おそらく俺のいた村の塀だろう。

 ということはここは村の外だろうか?


 緑の奴らに気付かれる前に、俺はできるだけ村から遠ざかろうと考えた。


 俺はすぐ近くに街道らしき道を見付けると、その道に沿って進むことにした。

 その街道の先を見ると、木々や草花が生い茂り、そこが森であることがわかった。



「途中猛獣なんて出ないといいけどな・・・」


 

 そんな森を見れば、誰でもそう口にすることだろう。


 だがフラグという言葉がある。

 俺はいつの間にかそれを呟いていた。

 そしてその後遭遇してしまったのだ。


 1匹の熊に・・・・

【★クマさん重大事件です!】↓


 お読みいただきありがとうございます!

 ほんの少しでも・・・・


 「面白い!!」

 「続きが読みたい!」

 「クマさん!」


 と思っていただけたなら・・・


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[気になる点] 丁度季節は、春もそろそろ終わろうかと思われる6月後半 6月は春じゃない、初夏もしくは、6月後半なら普通に夏
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