43:幼女 vs ドラゴン
「ゴックさん!! 奴にパンチです!!」
ここに怪獣大決戦は幕を開けた。
私はゴックさん2号の肩に乗り、ゴックさん2号に攻撃を指示する。
ドカ~ン!!
ゴックさん2号のパンチはドラゴンの胸辺りに命中し、ドラゴンが体を仰け反らす。
『ハハハ! 我を仰け反らすとは大したパンチだ!! これだ!! 我はこれを待っていたのだ!! 会いたかったぞ巨人!!』
何というバトルジャンキー!!
ドラゴンは涙ぐみ、笑っているようだ。
ドラゴンはこちらのパンチの威力を知るために、わざと受けた感じだ。
そしてドラゴンは炎のブレスを、ゴックさん2号に向けて放った。
ドボォォォォ~!!!
炎の熱で、ゴックさん2号の装甲は焦げるが、土巨人のゴックさん2号には、あまり効果がないようだ。
『我の炎が効かぬとは大した奴よ!!』
ドパ~ン!!
ゴックさん2号は、そのままドラゴンの顔面をパンチで強打する。
ドラゴンは再び仰け反るが、大して効いているようには見えない。
そしてドラゴンは、その伸びきったゴックさん2号の腕に、爪で反撃する。
ザシュ!!
その太い岩のようなゴックさん2号の腕は、その一撃で千切れ飛んでしまった。
攻撃力が違いすぎる。このままでは負ける!
そう思った私はゴックさん2号を、浮遊する土雲に乗って降り、次の一手を繰り出す。
「ゴックさん!! ドラゴンを抑えて!!」
私はゴックさん2号に、ドラゴンの動きを止める命令を下すと、収納魔法で、大きめのサイズの土銃、もはや土砲を取り出して、ボーリング玉くらいの砲弾を装填、5連結で浮遊させる。
「て~~~!!」
ドン!! ドン!! ドン!! ドン!! ド~ン!!
瞬間ゴックさん2号が羽交い絞めにしていた、ドラゴンにその5発が命中。
ゴックさん2号ごとドラゴンは吹き飛んでいく。
ドドドドオォォォォォン!! ズズズズズ・・・。
止めに大きめの土爆弾をドラゴンに命中させると、巨大な青い爆炎が上がり、地震と衝撃波が辺りに吹き荒れた。
騎士達やクマさんは地に伏せ、私は土壁で衝撃をガードする。
ものすごい量の土煙が立ち込め、やがて視界が晴れると、そこには悠々とドラゴンが立ちつくしていた。
だがゴックさん2号は跡形もなく吹き飛んだようだ。
ありがとうゴックさん2号。君のことは忘れない。
私は失われたゴックさん2号に敬礼する。
『すごい魔法だった。10年前に戦った魔術師オーウェン以上だ。だが足りぬな。我には傷一つつかなんだわ』
地上最強の名は伊達ではないということか・・・。
ドラゴン・・・硬すぎるな・・・。
その様子を見ていた騎士たちが、絶望の表情でドラゴンを見上げるのが見えた。
『だが、ここまでだ。我が咆哮を受けて畏怖せよ』
「グオォォォォォォ!!!!」
ドラゴンの咆哮。それは英雄の咆哮にも似た。ただ聞くものを恐怖に陥れることに特化した恐ろしい咆哮。
それを聞いた騎士たちは、恐怖するものや気絶するもの様々だったが、その効果は絶大だったようだ。
だが高い魔力を持つ私には効果は薄い。
そしてその恐怖を払拭するために、私もありったけの魔力をのせて咆哮する。
「ふわぁぁぁぁぁぁぁあああ!!」
英雄の咆哮。そのスキルの名だ。
今回ドラゴン戦において、出し惜しみは命取りと悟ったクマさんと私は、それを解禁していた。
恐怖していた騎士たちは英気を取り戻し、気絶していたものも正気を取り戻す。
そしてあふれ出る英気から、騎士たちは雄たけびを上げる。
「「おぉぉぉぉぉぉおおおお!!」」
『英雄の咆哮・・・生きてるうちに、再び目にすることになるとは・・・』
ドラゴンは恐怖どころか感動して、涙すら浮かべていた。
『だが英雄よ。そなたは幼すぎた。我には届かぬよ・・・』
「いえ。これからですよ。ゴックさん3号!! 起動!!」
私は収納魔法で秘策の一つである、ゴックさん3号を繰り出した。
『先ほどの土巨人か? もう見飽きたぞ・・・』
ゴックさん3号の手は長い、そして2号とは違い、丈夫さ重視で中身が詰まっているために鈍重だ。
だが油断しているドラゴンは、その3号の攻撃を躱す気もない。
ヒュ! ヒュン!! バシ! バシ!
ドドド~ン!!!
ゴックさん3号は、その長い手を鞭のようにしならせ、ドラゴンを縛り上げて、そのまま巻きこむように倒れ、その体重でドラゴンを地面に圧迫する。
『ほほ~。締め付けに来たか。少しは効くが、やはり・・・・?』
私はその隙にドラゴンの頭の上に乗り、その頭に手をやると、ドラゴンの魔力を吸い始める。
『ハハハ! 動きを封じて我が魔力を吸いつくそうとでもいうのか? 知らぬのか? 我が魔力は猛毒よ! 一度人がとり込めば、瞬く間に死に至る!』
そう、ドラゴンの魔力は猛毒で、体内に入れれば荒れ狂い、その体を弾き飛ばすといわれている。
幾人もの魔術師が挑戦して、死した行為なのだ。
ただ私の魔力は膨大だ。ドラゴンの魔力をも時間をかければ、その溢れる魔力でごり押ししてものにできるのではと考えたのだ。
そしてこれこそがクマさんが、私に今回授けた最後の秘策だ。
ドラゴンの魔力を体内に取り込み、己がものとし、ドラゴンと同等の力を手に入れ、ドラゴンを倒す。
クマさんによると、過去にそれを成功させて、ドラゴンを倒した英雄がいたという。
クマさんと私はそこに賭けたのだ。
私はドラゴンから飛びのくと、離れた場所まで退避する。
『どうした? 我の魔力はもう吸わなくて良いのか?』
「選手交代だ。次の相手はオイラだぜ」
ここからは私が荒ぶるドラゴンの魔力を、己に馴染ませるまでの時間稼ぎだ。
その時間稼ぎを、私の師匠たるクマさんが引き受けたのだ。
『聖獣か? ずいぶんと小さく非力になったものだな? あの娘は何をしている? もう戦わぬのか?』
「嬢ちゃんは休憩中だ。その間オイラが遊んでやるぜ」
頭痛に、もうろうとする意識、体の中で暴れる魔力。これがドラゴンの魔力をとり込んだ影響か。
私はドラゴンの魔力を、龍の荒ぶる魔力をなだめ、自身に馴染ませるために瞑想し、集中し始めた。
【★クマさん重大事件です!】↓
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