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38:幼女、騎士団長と会う

「嬢ちゃんこのお菓子はやばい! 世に出ちゃいけねえお菓子だぜ!?」



 クマさんは今、私の作った丸いショートケーキを食べている。

 しかし「世に出ちゃいけねえお菓子」とは何事か?

 すでに私が多くに広めているぞ。


 私は魔法の料理ショーの後で、片付けも全て終わり、おなじみの料理研究所で寛いでいる最中だ。



「リンネお嬢様はおられますかな?」



 すると執事のピエールさんが訪ねてきた。

 何か用だろうか?



「領主様がお呼びです。至急、執務室へおいでください」



 領主様からの呼び出しか。



「嬢ちゃん。オイラも行こう」



 私はクマさんを伴って、領主様のいる執務室へ向かった。





 そしてクマさんと私が執務室に入ると、そこには領主様の他に、こげ茶で髭面の、筋肉だるまが鎧を着たような騎士団長がいた。



「其方がリンネ殿か!?」


「はい。お初にお目にかかります。リンネと申します」



 私はカーテシーで挨拶をする。



「俺はこの領地の騎士団長アウトゥール・イーテ・ノイマンだ!」



 この筋肉だるまの騎士団長様は、いったい私に何の用だろうか?



「よく来てくれたリンネ嬢。実はな、そこのアウトゥール騎士団長が其方に話があるそうなのだ。聞いてやってはくれぬか?」



 アウトゥール騎士団長が私に話? 


 おそらく例の怪物の討伐についてだろうが、無理に倒す必要がないのならば、そういったお誘いはご遠慮願いたいところである。



「ハハハ! 先ほどの魔術、見事であった。あれほどの魔術の使い手はこの国中を探してもそうはおるまい!!」



 アウトゥール騎士団長は豪快に笑いながらそう言った。



「実はリンネ殿に頼みがあってな。リンネ殿も聞いたことはあるかもしれぬが、この街は、あるドラゴンに脅かされている」



 やはりその話か。

 そのドラゴンはこの領地の産業である、林業を行う際に使う水路を、塞いでいるとかいう話だったな。



「どうかそのドラゴン討伐に加わって欲しいのだが、いかがだろうか?」


「ちょっと待て!」



 そこでクマさんが口を挟んで来た。



「嬢ちゃんは6歳にも満たない幼い少女だぞ? ドラゴンは世界最大級の脅威だともいわれている。それこそ命をかけなけりゃ倒せない相手だ。お前たちは、こんな幼い少女に命を懸けろと言うのか!?」



 確かに中身は転生前の記憶がある大人だが、私はまだこの世界で6年しか生きてはいない。

 幼いのは確かだ。



「はぁ~・・・。諦めろアウトゥール騎士団長。リンネ嬢に頼むのは、吾輩もやはり気が(とが)めるよ」



 領主様も私がドラゴン討伐に加わるのは、良く思っていないらしい。

 そういえば今まで頼まれたこともなかったし。



「お頼み申すリンネ殿!! 我らだけではどうにもならぬ相手なのです!! どうか、どうかその貴女の強大な力をお貸しください!!」



 筋肉だるまは私に、勢いよく土下座して懇願して来た。


 命がけの戦闘なら以前、ゴブリンジェネラルと戦った時に経験したな。

 あの戦いをもう一度してくれと言われれば、簡単に返事はできない。


 だがこんな平民の幼女に土下座してくる以上。

 アウトゥール騎士団長にも人知れない想いがあるのはわかる。



「お前は嬢ちゃんも殺すのか!? オーウェンのように!!」


「オーウェンの件は悔いておる。だが今度こそは・・・・!!」



 オーウェン? 知らない名前が出てきた。

 過去のドラゴン討伐で亡くなった方だろうか? 



「お前に嬢ちゃんは護れない。力不足だ。今ドラゴンと戦ったとしてもオーウェンの時の再現にしかならないぞ?」



 そのクマさんの重い言葉に、しばらく周囲は沈黙した。



「そうだな・・・・俺の考えが浅はかだったよ」 



 そしてしばらくして、騎士団長は俯きながら立ち上がる。



「おい、忘れちゃいないか? アウトゥール」


「え?」



 騎士団長はクマさんのその言葉に、不思議そうに首を傾ける。


 この期に及んで何を言い出す気だ? クマさん。



「リンネの嬢ちゃんに魔法を教えたのは、何たって、こぉのオイラだぜ?」



 クマさんは親指を自分に向けて得意げにそう言った。



「な!? やはり聖獣殿の指導であそこまで・・・」


「嬢ちゃんまでとはいかなくても、オイラが騎士団を鍛えてやれば、今以上になるとは思わないか?」



 私までとはいかない? そういえばクマさんも私の魔法習得速度は異常だとか言っていたような気がするな。



「それは・・・聖獣殿自ら我ら騎士団の指導をしていただけるということに、間違いないですか!?」


「おうよ。任せとけ!!」



 クマさんが自らに親指を向けてキメ顔をすると、アウトゥール騎士団長はクマさんに向けてダイブした。



「こぉらおめぇ!! よせぇ!! アウトゥール、潰れるじゃねえか!」



 そしてアウトゥール騎士団長は、クマさんに抱き着いて涙線のダムを決壊させると、オイオイと泣き始めるだった。



 筋肉だるまとクマさんの抱擁は、むさ苦しいので止めていただきたい。


 私も騎士団を鍛え直すぐらいはいいと思うけど、騎士団を鍛え直すような知識も経験もないので、この件はクマさんに完全に任せるしかないだろうな。


 ていうかクマさん、本当に街の騎士団を鍛え直すほど強いのか?



【★クマさん重大事件です!】↓


 お読みいただきありがとうございます!

 ほんの少しでも・・・・


 「面白い!!」

 「続きが読みたい!」

 「クマさん!」


 と思っていただけたなら・・・


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[一言] 「お頼み申すリンネ殿!! 我らだけではどうにもならぬ相手なのです!! どうか、どうかその貴女の強大な力をお貸しください!!」 今回は断ったけど、引き受けた場合対価を幾ら支払うつもりだったの…
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