37:騎士団の凱旋パレード
初めリンネ視点。途中から騎士団長アウトゥール視点です。
「リンネちゃ~ん! 早く! パレード始まっちゃう!!」
孤児の女の子、シェリーちゃんが私を大声でよぶ。
「あ~。はいはい」
現在私は、孤児院の子供たちに誘われて、騎士団の凱旋パレードを見物しに来ている。
もちろんクマさんも一緒だ。
騎士団は私たちもお世話になった、ウエストレイク村を拠点に、大量発生したゴブリンの討伐に向かっていたそうだ。
そして無事討伐を終えて、街に帰還した凱旋パレードがこれだ。
「クマさん。騎士団に私が見られるのは、やばいんじゃなかったんですか?」
「さすがの騎士団も、すでに貴族の後ろ盾のある嬢ちゃんに好き勝手はできんだろ?」
街の城門の近くに来てみると、多くの人だかりが出来ていた。
「騎士団が帰還したぞ!!」
パパパ~!
騎士団の帰還を知らせる声が響いて、しばらくするとラッパのような音が響き、門から馬に乗った騎士たちが入ってくるのが見えた。
列の後方には冒険者が徒歩で続き、人々の盛大な歓声が上がる。
「ふぁ!! あれが騎士団!! かっこいい!!」
憧れの騎士団の鎧姿が見えて、私のテンションも爆上がりだ。
騎士団長アウトゥール視点~
現在俺はゴブリンの群れの討伐を果たした、凱旋パレードの真っ最中だ。
思えば今回のゴブリンの討伐遠征では、予想以上に被害が大きく出た。
負傷した者、死亡した者様々だが、最後はあのゴブリンジェネラル相手に皆よく頑張ったと思う。
それにしても今回一番の功労者はやはり、ゴブリンジェネラルを単独で屠った魔術師リンネだろうな。
いったいどのような魔術師なのだろうか?
村人の話では、長い黒髪に容姿端麗な5~6歳くらいの幼女だとか?
だが5~6歳の幼女だというのは信じられない。
やはり背の小さな女性だったのだろうか?
ふと声援を送る人々の方に目をやると、子供たちが集まってこちらに手を振っているのが見えた。
以前孤児院に寄付に訪れた際に見た顔もちらほらあるな?
孤児院の子供たちだろう。
そして見ない顔の幼い少女が一人・・・5~6歳くらいか?
長い黒髪で・・・子熊の従魔を連れた・・・ふわふわと浮遊する少女・・・がそこにはいた。
「魔術師リンネ!!」
そう魔術師リンネと思われる少女が、そこにはいたのだ。
白昼堂々浮遊しているところを見ると、すでに街の住民に自らの力を周知しているのだろう。
ということは、領主であるフォンティール伯爵の承認も受けていることになる。
これは後で伯爵本人に確認せねばなるまい。
そしてパレードも終盤に差し掛かり、俺たちの列は、領主の屋敷へと入っていった。
屋敷へ入ると領主フォンティール伯爵の、労いの言葉を賜る。
「この度のゴブリン遠征、ご苦労であった。負傷した者や死亡した者もいたと聞く、彼らには実に不憫なことだった。しかし彼らは街のため、国のためにその身を捧げたのだ。それは誇ってよい。諸君らは生き延びた。それも誇るべきである。そして英雄である諸君らを称えよう!!」
「「おぉぉぉ~!!」」
そしてパレードを終えた騎士や冒険者の歓声が上がる。
「今日は凱旋式の後に歓待などの料理も用意した。皆、大いに飲んで食べて帰ってくれ」
「良いのですか? フォンティール伯爵。依然街は貧しい状態が続いているはずです。その中にあって贅沢な歓待など」
無理をしていないかと、心配になった俺はフォンティール伯爵に、歓待の準備の取り止めを申し上げる。
「ハハハ! 心配するなアウトゥール団長。最近街に運良く富が転がり込んできてな。これも皆リンネ嬢のおかげなのだがな。それに凱旋式の後に、功労者に歓待をしないでどうする!?」
フォンティール伯爵の口から、魔術師リンネの名が出た。
やはりすでに彼女を取り込んでおられるのか?
「リンネ嬢とは、魔術師リンネ殿のことですかな?」
「何だ? そなたもリンネ嬢に会っていたのか?」
ふとフォンティール伯爵の後ろの方に目をやると、すでに料理の準備をするために、多くの使用人が忙しそうに歩き回っているのが見えた。
そしてその中に、青いエプロンドレスに長い黒髪の少女が、何事もないように混ざっているのが見えたのだ。
「あの・・・。フォンティール伯爵。あの青いエプロンドレスの幼い少女はリンネ殿では?」
「ああ。あれはリンネ嬢だが、リンネ嬢に何か用かな?」
信じられない・・・。
国を揺るがすような貴重な魔術師に給仕をやらせているなど。
「あのような給仕の仕事は他の者にやらせてはいかがですか? 貴重な魔術師をあのようなことに使うなど・・・」
「あ~。あれは彼女の趣味でな。リンネ嬢は幼いながらもなかなかの料理人なのだよ。今回も率先して料理を作ってくれている」
料理人? 魔術師ではなかったのか? 確か剣士であるとも聞いている。
いったい彼女は何なのだ?
俺はフォンティール伯爵のその言葉に、困惑せざるをえなかった。
そして凱旋式は終わり、歓待の料理が運び込まれる。
見たこともないような斬新な料理がテーブルに並び、そのどれもこれもが絶品だった。
またそのほとんどを考案したのが、リンネ嬢というから驚きだ。
最後はリンネ嬢の魔法による料理を目の当たりにする。
浮遊するふわりとした感じの丸いパンに、彼女の発生させた吹雪きが舞い踊り集まる。
その光景は、雪の精霊を思わせるほど可憐で壮大で、見ている者全てが、感動に我を忘れるほどだ。
その光景に皆無言、歓声すら忘れる光景だった。
そして完成したのがふわりと白い雪玉の上に、芸術的な白い花が咲いた、見たこともない食べ物だった。
それが並べられた皿に、一つずつ舞い降りていくのだ。
魔法の料理が終わると、使用人によって、その白い食べ物が皆に配膳される。
俺は目の前に置かれたその白い食べ物を、スプーンですくい口の中に入れた。
白い食べ物を咀嚼すると、瞬く間に口の中で溶けてなくなる。
そして・・・・濃厚で甘い!!
俺には少し甘すぎる一品だったが、女性の魔術師2人はうっとりするような目で、それは幸せそうな顔で、その白いのを口に運んでいた。
ここで彼女があの強大な魔術を見せたのは、威嚇とも思われる。
。
その容姿からなめてかかる輩も多いだろうが、その強大な力を知れば、手を出す気も失せるだろう。
しかし俺はあの力を見たからこそ、彼女に会わねばならぬ。
この街の平穏を脅かす、あの忌まわしきドラゴンを倒すためにも。
【★クマさん重大事件です!】↓
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