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33:幼女と仁義なき戦い

今回は視点がころころ変わります。

リンネ→ 第三人称視点→リンネ→第三人称視点→アウターの頭



 リンネ視点~


 その日の昼、クマさんと私は、スラムのアウターの頭がいるという屋敷を訪ねていた。

 アウターの屋敷の入口には、素行の良ろしくない感じの若者が、2人で見張りをしている。



「わたくし、リンネと申します。こちらで一番偉い方にお会いしたいのですが、お取り次ぎ願えますでしょうか?」






 第三人称視点~


 その日アウターの若者二人は、前代未聞の訪問者に困惑気味であった。

 それは二足歩行の子熊を連れた、青いエプロンドレスを着た、どこぞのお嬢様だったのだ。

 そのお嬢様は見た目六歳くらいと幼く、その訪問者の幼さが、さらに若者二人を困惑させた。


 だがそんな幼女に舐められてはいけないと、若者二人は気を取り直して事に当たる。



「あ~ん!? ここは嬢ちゃんみたいなお上品なお子様の来るところじゃねえ! 帰りな!」



 アウターの若者は、ドスを利かせる感じに声を荒げ、幼女に顔を近づける。



「あら? 困りましたわね。それはお取り次ぎいただけないということですよね?」



 通常ならばこの場合、子供は泣いて逃げだすはずなのだ。

 だが目の前の幼女は、アウターの若者のドスの利いた脅しに、微動だにせず平然と答えたのだ。


 その幼女の様子に、脅しが効かぬのならば暴力でと、アウターの若者は手を上げようとする。

 だが次の瞬間アウターの若者二人は、信じられないような光景を目にした。

 それは空中に浮遊し、周囲に岩を浮かせ、圧倒的な威圧感を放つ、化け物のような幼女の姿だったのだ。


 この幼女に手を出せば殺される・・・。



「ひ、ひぃぃぃ!!」


「やべぇ!!」



 アウターの若者二人は、踵を返すと、館の扉をぶち破るように開け放ち、ここで最強と思われる頭の待つ部屋へと逃走をはかった。





 リンネ視点~



「嬢ちゃん。さっきの奴ら多分、あいつらの頭のところへ向かったぜ」


「あいよ」



 私はクマさんと土雲に乗り、開け放たれた屋敷の扉をくぐった。





 第三人称視点~


「兄貴大変だ!! 化け物が襲撃して来やがった!!」



 アウターの若者は、勢いよく頭のいる部屋の扉を開けると、部屋の中に駆け込んだ。

 その部屋は執務室のような部屋で、アウターたちが集まって、よく集会などをする部屋だ。


 部屋のデスクの後ろには、護衛らしき厳つい男が二人立っている。


 そして現在デスクの椅子には、中年で長髪の男がふんぞり返って座っていた。

 その男こそ、この街のアウターを束ねる、組織の頭、ダライアスだったのだ。



「おう!? ノックぐらいしろ!! 馬鹿野郎!!」



 ダライアスはお気に入りの長剣を磨きながら、不機嫌そうに新米の若者二人を見る。



「すいやせん頭!! でも化け物が・・・・!!」


「あん? 化け物だと? 街中に魔物でも出たのか?」


「・・・お取り込み中失礼いたします」



 そして幼女の姿をした化け物は、ふわふわと浮かびながら、悠々と若者二人の後方から姿を現した。





 ダライアス視点~


 現在化け物と対峙して絶体絶命の状態だ。


 その化け物は容姿や仕草はお上品な幼女のように見えるが、宙にふわふわと浮き、周囲に岩を浮かせて圧倒的な気配を漂わせていやがる。

 従えている子熊はよくわからないが、この幼女が危険なのはよくわかる。



「わたくしリンネと申します。領主様お抱えの魔術師と思ってもらって結構です」



 幼女は見た目ににそぐわぬほど、綺麗な所作でカーテシーをした。

 その様子がさらに幼女の異様さを、浮き彫りにする。


 領主お抱えの魔術師なら、今ゴブリン遠征に東の地方へ向かっていると聞いているが、こんな隠し玉もいたのか?


 いずれにせよ領主お抱えの魔術師が赴くなど、良い話は聞かない。



「お偉い魔術師様が、こんなアウターファミリーに何か用かい?」


「はい、実は・・・・」


 ザシュ!!



 俺は奴が話し始め、油断したと思われるその隙に、自慢の長剣を素振りする。

 それは俺がこの実力主義のアウターファミリーで、上り詰める所以(ゆえん)となった秘剣を放つ動作だ。

 それは素振りされた長剣から、見えない風の刃が放たれ、敵を斬り裂く妙技なのだ。


 こんな手合いには先手必勝に限る!


 その幼女は鮮血をまき散らし、その場に倒れ伏すはずだった・・・・。


 しかし風の刃は、浮遊する岩の1つに接触すると、霧散して消えてしまった。



「こんならぁ!!」「くたばれ!!」


 ドス!! ガス!!



 それを合図と見たのか、手練れの部下二人が武器を持って幼女に斬りかかる。

 だが二人は浮遊する岩に阻まれ、跳ね飛ばされ、錐揉みしながら宙を舞って部屋の壁に激突する。



「あら? 御免あそばせ。無意識に蟻のように踏みつぶしてしまいましたわ。何やらそよ風も吹いていたようですが、まあどうでもいいでしょう。領主様からは、お話合いで決着を付けるように承っております」


 

 化け物が・・・俺の秘剣をそよ風あつかいか。

 手練れの部下も、まるで気づかない間に蟻でも踏みつぶすように、瞬殺しやがった。



「現在スラムで掘っ立て小屋などで路上生活をしている者たちがいるはずです。あなたたちもその者たちからみかじめ料をせしめているのですからご存じでしょう? その者たちを、わたくしの新しく建造する集合住宅へ移住させる予定ですの」



 スラムで路上生活といえば、あの薬草採取とかで生計を立てているガキどもか? 

 あいつらから取っているみかじめ料も、アウターファミリーの資金源にはなっているはずだ。

 要はその住人をよこせということか?



「そのガキどもの移住を邪魔するなと言いたいんだな?」


「話が早くて助かります。しかし、もし移住の妨害などされた場合・・・」



 ズゴォォォン!



 幼女が徐に壁に指をさすと、岩の1つがすごい勢いで壁に激突して、壁に大きな穴を空けた。



「嬢ちゃんやりすぎだ」


「あら御免あそばせ。少々力が入りすぎてしまいました」



 もし邪魔した場合は、その壁に与えた以上の報復を覚悟しろということだろう。

 その様子を見た若い者二人は失禁し、無様な姿を晒している。

 俺の顔も恐怖でひきつっていることだろう。


 はなから領主になど喧嘩を売る気はないが、これはこの件に関しては、密かに事を起こすことも禁止しなければならないな。

 

 幼女は壊した壁を、傷1つない元の状態に復元すると、綺麗な所作でカーテシーをし、子熊を引き連れて浮遊しながら去っていった。


 俺はさっそくアウターファミリーを招集して、先ほどの件を周知すると、あの幼女の建造する集合住宅と移住者には、一切手を出すなと厳命した。





 数日後。魔術師の土魔法による集合住宅の建造が、領主より周知され、入居条件と、入居者募集の告知がなされた。

 魔術師とはあの化け物幼女のことだろう。


 あの化け物幼女が建造する建物が、いかなるものか興味が出た俺は、さっそく建築現場の見学を予定に組み込んだ。


【★クマさん重大事件です!】↓


 お読みいただきありがとうございます!

 ほんの少しでも・・・・


 「面白い!!」

 「続きが読みたい!」

 「つっこみどころ満載だぜ!」


 と思っていただけたなら・・・


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