16:薬草採取と狩り
現在、クマさんと私は街の外にいる。
街の入口で、街の外に出るには幼すぎると門番のおじさんに止められ、生活のための冒険者ギルドの薬草採取だと泣き落としをして、何とか通してもらった。
「いいかいお嬢ちゃん。くれぐれも森の中には入らないこと。森の中には怖い魔物が出るからな」
そうか、森の中には魔物が出るのか、それはいいことを聞いた。
ビッグボアはまた出ないかな?
「それから年長者から離れるんじゃないぞ! だいたい森の付近にいるはずだから!」
年長者? 子供たちの年長者のことかな? ギルド長の言っていた、薬草で生計を立てている子たちだな。
私は門番のおじさんにヒラヒラと手を振りながら、森へ向けて歩いて行った。
森の付近に着くと、数人の子供たちが3~4人のグループごとに分かれて、薬草採取をしていた。
「クマさん。彼らがまだ手を付けていない薬草の採取場ってわかりますか?」
「あの辺りがそうだが、グループに混ぜてもらわなくていいのか?」
「いいんです。あ、この辺の草が薬草ですね?」
私はヨモギのような草、薬草の採取を始める。
「根は残すんですよね?」
10株採取して収納ポーチに収納する。
「薬草採取はここまでです。次は本題に移りたいと思います」
「本題って? この薬草の数じゃ、銅貨5枚ポッチだぜ?」
「いいんですよ。本題はお肉ですから」
「そう来ると思ったぜ」
私が森に入ろうとすると、2人の20歳くらいの冒険者に行き先を塞がれる。
またアウターかとも思ったが、どうやらそうではないようだ。
「お嬢ちゃん。この先には魔物が沢山出るんだ。命が惜しけりゃ、入らない方がいい」
この2人の冒険者は、子供たちが危険なことをしないように見張っているのかもしれない。
でも私にはありがた迷惑だ。私はお肉が欲しいのだ。
「お構いなく。私は魔物のお肉が目当てですので」
「お嬢ちゃん。魔物は危険だ。悪いことは言わない。引き返したほうがいい」
「実力を示せば通してくれますかね?」
「実力って小さい嬢ちゃんがかい? 魔法は使えないし、非力そうな嬢ちゃんには何も出来ないだろ?」
ドドーン!!
私は3メートルの土剣を発動すると、冒険者の横に叩きつけた。
すると土が周囲に飛び散り、砂煙が舞い、衝撃波で冒険者一人が転びかけて、仲間に支えられていた。
「実力が示せたようですので通らせていただきます」
唖然とした様子でこちらを見ている、2人の冒険者たちを悠々と横切り、クマさんと私は、そのまま森の中に入っていった。
「嬢ちゃん。良かったのか? 土剣を見せちまって」
「すでに土魔法が使えることは冒険者ギルドにばれてますし、これから長いことここらで狩りをすると思いますので、土魔法の存在は隠す必要はないかと思います。ただ複数の魔法属性を持つことがどういうことかまだわかりませんので、出来れば見せるのは土魔法だけにしたいですね」
「通常魔法は1人に1属性だな。2属性でもめずらしいぜ。だからそれ以上の属性を扱える嬢ちゃんのその判断は賢明かもな?」
ならばこの森で使えるのは、土剣、土銃、土壁、土雲、というところだろうか?
身体強化・・・・は私の成長の妨げになるんだっけ?
使えるのはクマさんの許可が出た時だけだな。
火魔法は森林火災の可能性があるからなるべく控えたいし、水魔法や、回復魔法などの他属性も悪目立ちしそうなので控えるべきだな。
「あの冒険者たち、後をつけてくるぜ?」
森をしばらく歩いた場所で、クマさんがそう告げてくる。
「あの2人、実は私たちの調査員か何かですかね?」
「そうかもな? オイラたち、冒険者ギルドで悪目立ちしたからな」
「お兄さんたち!! そんなところで隠れてないで、一緒に行きませんか!?」
私は手を振りながら、大声で2人の冒険者が隠れているであろう場所に向けて呼びかけた。
「馬鹿! 森で大声出すなよ。魔物が集まってくる」
「すみません」
私は舌を出してテヘペロを炸裂させた。
「ちっ・・・。ばれてたか」
2人の冒険者たちは隠れていた木の陰から出てきて、クマさんと私に近づいて来た。
「俺はD級冒険者のマルス。こっちは相棒で同じくD級冒険者のカンセだ。嬢ちゃんたちが心配でついて来ちまった」
「私はリンネ、G級冒険者です。こっちは従魔のクマジロウでクマさんです」
お互い自己紹介が終わると、再び森の奥へと足を勧める。
「で、お嬢ちゃんたちはどんな目的でこの森に来たんだい?」
「お肉をとりに来ました。この森の様子だと、どこに潜んでいるかもわかりませんね」
私は正直に、森へ入った理由を告げる。そして、なるべく子供っぽく演じようと、魔物をあえて、お肉と呼んでみる。
「魔物をすでにお肉扱いしているなんて、大人の冒険者顔負けだね。要するに狩り目的でこの森に入ったんだよね?」
どうやら逆効果だったようだ。
「クマさん。クマさんはこの周辺の魔物の気配はわからないんですか?」
獣のクマさんなら、獣特有の感覚で魔物の気配がわかるかもしれない。
「ん? そんなのこの森に入った時点からわかってらぁ」
「人語をしゃべる従魔とは珍しいな」
マルスさんが不思議そうにつぶやいた。クマさん喋れない従魔設定はやめたんだね。
「もしかしてそこの従魔は、C級冒険者の姫寵愛のクマジロウかい?」
「ぬぉ! その通り名で呼ぶな!」
姫寵愛のクマジロウ?
カンセさんから告げられた、クマさんの通り名。知られざるクマさんの黒歴史の断片を垣間見たような気がする。
そういえば私は、クマさんのことを何も知らない。
C級冒険者で、こんな通り名があるあたり、やはりただの熊ではないのかもしれない。
見た目もただの熊ではないが・・・・。
「ところでマルスさん。その通り名の由来ってどんなのですか?」
「聞かなくていい! 気配を探るから黙ってろい!」
再びクマさんは森の気配を探り始めた。
森の葉が風でサラサラと音を奏で、鳥たちが奇怪な鳴き方で恐怖を駆り立てる。
「まず左側に角兎6、いや7匹の気配があるな。向こうはすでにこちらに気づいて様子を見ている」
クマさんは。左側の茂みを指さしながら答えた。そしてクマさんが正面をすぐさま見る。
「ここから真っすぐ、ボアが来てるぜ!」
するとその後すぐに、ボアが姿を現した。そして私たちに突進を開始する。
「お嬢ちゃんたち! 危険だ逃げろ!」
焦ったマルスさんが逃走を呼びかけるが、私は動かない。
ドカ!
「ぴぎぃ!」
私はボアが土剣の攻撃射程内に入ると、土剣でボアの足を小突いた。
「ぶぎぃぃぃ!」
ズザアアア~!
ボアは足をくじいたが、そのままの勢いで、私に向けて転がり込もうとしている。
「ど~りゃ~!」
「ぶぎぎぃ~!!」
ドゴン!!
私はそのままボアを土剣ですくい上げると、ひっくり返して地面に倒した。
ボアは打ち所が悪かったらしく、そのまま倒れてピクピク痙攣しているようだ。
「クマさんお願いします」
「おうよ!」
クマさんは素早くボアに接近するとボアの頸動脈を、ウォーターカッターで切り裂き、止めを刺した。
「血抜きが終わるまで周囲の警戒をお願いします」
「今回は小物だな。体高だけ見ても、前のやつの2分の1くらいだ」
マルスさんとカンセさんは、平然とその作業をこなすクマさんと私を、呆気にとられて見ている。
周囲の警戒してくださいね?
血抜きが終わると、ボアを収納ポーチにしまう。
次のターゲットは角兎だ。
「私、兎肉初めてなんですよね」
私たちは、次のターゲットの角兎目掛けて、森の奥へ進んでいった。
【★クマさん重大事件です!】↓
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「面白い!!」
「続きが読みたい!」
「クマさん!」
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