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11:土雲

今回は自然のグルメが入ります。

 昼食後、私たちは再び街へ向けて歩き始めていた。

 しかし幼女の歩みは思いの他遅く、このままではいつ街に到着するか、わからない状態だった。



「嬢ちゃん。もっと速く歩けないかい? これじゃあいつまでたっても街に着かないぜ」


「クマさん。身体強化を使っちゃだめですか?」


「さっきも言ったが嬢ちゃん。身体強化は反動もあるし、成長の妨げになるから使わない方がいいぜ」



 そう、私は今クマさんからの指摘により、身体強化に頼らない旅を心がけているのだ。

 ならば身体強化なしで、速く移動する魔法とは何か?


 水魔法は水浸しになりそうだし、火魔法は引火しそうで怖い。

 やはり使うなら土魔法だろう。


 そこで考えた末に思い至ったのが、ストーンバレットだ。

 ストーンバレットは土魔法で作った石を、魔力で操って浮かべて標的に飛ばす。

 ならば土魔法で板を作って、浮かせて乗って、飛ばせば浮遊移動が可能なはずだ。



「うん。イメージは円盤だね」



 そして出来上がった土の円盤。直径は1メートルくらいか?



「また何こさえたん嬢ちゃん?」


「まあ見ていてくださいよ」



 私は円盤を低空、15センチくらいの高さに浮遊させ、それに飛び乗った。



 シュタッ!


「よし。鈍足で前進です!」


 ボフ~~~~~~~~~~ン! ドス!



 円盤はしばらく移動して、やがて速度が落ちて、地面に落ちた。

 私はその反動で円盤の上で転んで尻もちをついた。


 だが挫けない。再チャレンジだ。



「常に浮遊を意識しないとダメなんですね」


「また面ろいこと始めくさって」



 再び円盤を低空で浮遊させる。そして円盤に乗る。



 フワ・・・



 今度は浮遊を意識したままで鈍足で前進。

 この円盤、鈍足でも結構な速度に感じるのだ。

 時速10キロくらい出ているかもしれない。

 そして土の円盤が止まりそうになるたびに加速を繰り返す。


 いい感じだ。あまり魔力の減少も感じないし、これはいい乗り物かもしれない。



 タタタタタタタッ! ドス!



 するとクマさんがすごいスピードで追いついてきて、後ろから飛び乗ってくる。


 

「ハハハ! こりゃいいな! もっと速度出んのんか?」


「転ぶのが怖いので、安全運転でいきます」


「んだ! しけてんな!」



 しばらく進むと、徐々に魔力の減少を感じるが、これくらいだと村で造った土壁一つ分にもならない。

 円盤を作るときに魔力を使うくらいで、浮遊と前進にはさほど魔力を使わないようだ。



「バレット系の魔法の発動は、詠唱で行うのが普通だ。こんなふうに飛ばすには、イメージだけで発動する必要があるな。

 浮遊と、再加速の部分を一定間隔で持続できれば詠唱でも可能かもしれないが、なかなか難しいな。

 こんなイメージが出来るってことは、嬢ちゃんの前世の世界では、浮遊する板でもあったのか?」


「SF映画とかで浮遊するボードに乗る主人公はいましたが、現実に同じような動きができるのはドローンくらいでしたね」


「なるほど。聞いたことない言葉ばかりだな。嬢ちゃんのいた世界には不思議があふれていそうだな」



 浮遊する円盤は風をきって進む。

 クマさんと私は、浮遊する円盤が楽しくて、終始笑顔だ。


 前世では学生時代、自転車に乗って通学していたが、こんな感じだったなと思い出す。

 この円盤は、私にとって魔力でこぐ自転車なのだな。


 でも乗ってる感じは、西遊記の孫悟空が乗っていたキント雲に近いかもしれない。

 なのでこの乗り物の名前は、土雲(つちぐも)で決定だな。

 

 しばらく進むと日が落ちてきて、徐々に周囲が赤色に染まってきた。



「嬢ちゃん。あの辺りで今日は野宿だ。またボア肉食べようぜ!」


「賛成です!」



 開けた場所が見えてきたので、クマさんと私はそこで夕食を取って、野宿することに決めた。





 現在クマさんと私は、暗闇の中、焚火を囲んで食事中だ。

 昼食で食べたビッグボアのステーキと、夕食は追加でビッグボアの串焼きも作った。

 一口食べれば、口の中に肉汁があふれて幸せな気持ちになる。

 クマさんも私も、笑顔で肉を食べている。


 クマさんの所作は相変わらず綺麗だ。

 クマさんは美味しいものを食べると、所作が綺麗になる。

 ナイフで丁寧に肉を切って、肉をフォークで刺して口に運ぶ。この動作がとても綺麗なのだ。

 普通美味しいと、つい、がっついて野性的に食べてしまうものだ。

 クマさんは見かけによらず、高貴な家の出なのかもしれないな。


 ふと気づくと、辺りに肉の焼く匂いが充満している。

 その様子に魔物など寄ってこないのかと、不安になる。



「クマさん。肉の焼いた匂いで魔物が寄ってきませんかね?」


「ふん。その辺は抜かりないぜ! 周囲を見てみな。 黒い石が落ちているはずだ」



 周囲を見渡すと、暗くて見え辛いが、確かに黒い石のようなものが、等間隔にクマさんと私の周囲を覆うように、置いてあった。



「そいつぁ、強力な魔物の気配を発する石なのさ。通常魔物は強い魔物の気配を感じると逃げていくからな。名前はそのまんま魔除け石とかよばれているな」


「じゃあその魔除け石を持ち歩けば、魔物はよってきませんね」


「いや。魔除け石は地面に置かなきゃ効果はないんだ。地面からはなすと気配が消えちまうからな」



 なるほど。物事そう上手くはいかないものだ。

 これを持ち歩いて旅ができれば、魔物は寄ってこないし快適な旅ができるのに。



「でも人には効果がないんですよね? 盗賊とかは普通に襲ってきませんか?」


「まあ、そうだな」



 魔物は魔物の気配を感じとれるが、人間は魔物の気配を感じ取れない。

 つまり人間である盗賊には、魔除け石の効果はないということだ。

 なら盗賊がクマさんと私を襲ってくる可能性はある。



「でも心配すんな。オイラが熟睡しないように警戒する。嬢ちゃんは安心して寝るといい」



 野生の獣は寝ていても熟睡していないので、気配を感じれば、いつでも起きれると聞いたことがある。

 クマさんにもそういう特技があるのかもしれない。


 でも念のため、身を護るための建物くらいは欲しいものだ。

 

 私は土魔法を使って、ドーム状の建物を造ることにした。

 ドーム状ならば衝撃に強いので、より安心して眠ることができるはずだ。


 焚火を中心にして土魔法でドームを造る。

 焚火の煙が抜けるように、ドームの真上と、周囲上方に穴をあける。

 その様子をクマさんは、ただポカーンと口を開けて眺めていた。



「嬢ちゃん。突然巨大なドームを建てるからびっくりしたぞ。まあこれなら安全に過ごせるがな」



 ドームの中は少し薄暗いので、光魔法で明るくしたいものだ。

 ここはクマさんに光魔法を教えてもらおう。



「クマさん、光魔法を教えてください。ドーム内が少し薄暗いので・・・」


「どれ、まず適性を見てやるか」



 私がいつものように手を差し出すと、クマさんは呪文を唱える。



「アクセス アプロト ライテス」



 すると私の腕に白い紋章が浮かび上がった。



「光魔法の適性もあったようだな。まあ嬢ちゃんなら全属性もありうるかもな」



 全属性。厨二心をくすぐる言葉だ。

 ぜひ全ての系統の魔法を覚えてみたいものだ。


 私は光を指先にイメージしてみると、指先に光の球が出現した。

 今度はドームの天上に光が出現するようにイメージする。

 するとドームの天上に光の球が出現した。


 クマさんと私は、しばらく魔法についてあれこれと話をしていたが、初めての旅で疲れていたせいか、いつの間にか夢の世界にいざなわれていた。


 その日私は、初めて野宿を経験した。





 翌日は良く晴れたので、日差しを遮るために、大きな葉っぱを日傘にして浮遊する円盤、土雲に乗って街を目指した。


 現在森を抜けて、平原に入ったところだ。



「街にはあとどのくらいで着くんですか?」


「この調子で行けばあと2、3日で着くだろうな」



 しばらくすると山道に入り、緑が深くなってくる。

 山道の道端には山菜や、木の実がなっており、気になったものを収納ポーチに入れいく。


 アケビ、山ぶどう、野イチゴ、ゼンマイ、タラの芽、ウドなどだ。

 甘いアケビは取ったそばから食べていって、手元には残らなかった。


 オリーブに似た実を見つけたときには、テンションが上がったものだ。

 オリーブもどきはその日の夜に仕込んで、油が分離するまで土魔法の器に入れて、収納ポーチに入れておくつもりだ。

 油が取れるといいな。


 その日はゴブリンの群れと遭遇したが、難なく撃退。

 ゴブリンの魔石の取り方もクマさんに習った。

 魔石はお金の代わりにもなるらしい。





 その翌日は、クマさんの蜂蜜採取の講習が始まった。

 偶然見つけた(ハチ)の巣だったが、異世界のミツバチは大きい。スズメくらいある。

 それに比例して、その(ハチ)の巣も巨大だ。



「取り方は簡単だ。まず身体強化で皮膚を丈夫にして、ミツバチの凶暴な針が刺さらないようにするんだ。出来たら刺されるのを無視して蜂蜜を頂く」



 まさに野生の熊のような、力技の取り方だった。



「水魔法を使って蜂蜜を操作し、嬢ちゃんが土魔法で作った壺に流していくんだ。まて、まず(ハチ)の巣を割って蜂蜜の部分を出すから」



 クマさんは(ハチ)の巣をナイフで割ると、「だいたいここらへんかな?」などとつぶやきながらザクと割る。

 すると(ハチ)の巣の、蜂蜜を含む部位が出てきた。まさに職人技だ。

 

 

 ブウ~ン! ブウ~ン! ブウ~ン!



 その間も(ハチ)は怒って飛び回り、クマさんと私を刺してくる。

 身体強化のおかげか、まったく(ハチ)の針は刺さらないが・・・・。


 私は蜂蜜全体を意識しながら魔力を流す。

 そして水魔法の要領で、蜂蜜を壺へと流れるように操作した。


 すると蜂蜜はドボドボと壺の中に流れて、あっという間にあふれ出た。



「あっ! もったいない!」



 私は壺からあふれ出る蜂蜜を、手のひらいっぱいにぬぐって舐める。



「甘!!・・・・これはダメになる甘さだ・・・」


「何だよそのダメになる甘さって?」



 幼女の本能か、蜂蜜を舐めるのにしばらく夢中になった。

 久々の蜂蜜は信じられないくらい甘く感じた。


 蜂蜜の採取が終わると、再び土雲に乗って街を目指す。


 そしてクマさんとの楽しい旅も、そろそろ終わりを迎えようとしていた。

 その日の夕方近くになって、目指していた街がようやく見えてきたのだった。


 【★クマさん重大事件です!】↓


 お読みいただきありがとうございます!

 ほんの少しでも・・・・


 「面白い!!」

 「続きが読みたい!」

 「クマさん!」


 と思っていただけたなら・・・


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