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28 本山

明日、重要なお知らせがあります!

皆さま、いつも『俺はこの世界がモブでも【廃人】になれば最強になれることを知っている』をご愛読いただきありがとうございます。

本日は、明日午後七時に活動報告にて重要なお知らせがありますことを、前書きにてご連絡差し上げます。

もしよろしければ、皆さま活動報告の方をご覧いただければ幸いです。


 

 さて、この世界には数多実在する神々に仕える集団、俗的に言えば宗教団体と言えばいいだろうか。

 

 〝神殿〟と呼ばれる信仰する神々に仕える集団は世界各地に存在し、それぞれの神の信者に強い影響力を持つが、政治には関わらない清廉潔白な組織だ。

 

 前にも話した通り、神殿の務めは神の用意したシステムを管理することが主な仕事で、信仰行事よりも重要な務めだ。

 そして神々のシステムを管理するにあたって干渉すると邪魔になる「人の世の管理」に関わらないように神が神殿を監視し、違反したら神罰が下るシステムが確立しているおかげで、宗教組織のなかでは腐敗がほぼない。

 

 FBOに出てくる神官の中には怠惰な人もいるが、それでもよくある物語のように「実は神を信仰する組織が悪の組織だった」というありがちな展開にはならないだろうという信頼を、俺は神殿に対して持っている。

 

「みんなで出かけるの、久しぶりね」

「そうだな。最近はなにかと忙しくて冒険にも出られてないし、皆で行動するっていうのは久しぶりだな」

 

 そんな神々に仕える神殿の組織を束ねる南の大陸の本山に、俺たちは向かっている。

 

 一体全体、何の用で向かっているかと言えば、うちの開拓村に神殿を作ってくれないかという申請を出すためだ。

 

 神のシステム——決闘の駒や商売の神の換金システム、契約システムなど、俺個人では用意できないものを提供できるのは、日ごろから神に仕えシステム管理をしている彼らしかいない。

 

 ゲームの時も、そうやって本山に向かい神殿建立の手順を踏んだわけだ。

 神殿の本山は各大陸に一つずつ存在し、総本山と呼ばれる場所は年度ごとに順番に替わる。

 

 今の時期は確か、西の大陸の本山が総本山として機能していたはずだ。

 

 かといって今回行く南の本山が劣っているというわけではない。

 それぞれの神々の神殿から神により選ばれた高位神官が集められて直接管理しているだけあって、かなり栄えている。

 信仰心の篤い人々が巡礼地として訪れるだけあって、流通も豊かだ。

 

 おかげで道路の整備もしっかりとされている。

 

 その道路を一見目立たないようにはしているが、それでも見る人が見ればわかるような立派な馬車が、御庭番衆という武者集団と、商人に扮したエンターテイナーたちによって護衛されてゆっくりと進んでいる。

 

 俺が考案し、ドンや最近加入したパーシーたちによって魔改造が施された馬車で、俺たちパーティーメンバーはゆったりとした空間での旅を楽しんでいるというわけだ。

 

「僕たちっていうか、一番忙しいのってリベルタくんだよね。このまま領主様になって冒険をやめちゃうんじゃないかってくらいに働いているよね」

「正直、リベルタの町の運営能力は高いですわ。指針を決めて割り振るべき仕事は割り振り、判断すべき時は判断する。並みの貴族ではできない芸当をベテランの領域でこなしておりますわ」

 

 馬車の中は色々と職人たちの手が加わって、6人がゆったりとくつろげるスペースになっている。

 流石に道路の幅のことを考えるとそこまで大きな馬車を作ることはできないから、歩き回ったりはできない。

 実際に中身のイメージをするのなら、天井の高いリムジンだろうか?

 

 空調や冷蔵庫も完備され、さらには天井に照明もついている。

 寝るときは今座っているソファーを動かせば寝具にもなるという点では、キャンピングカーとも言えるな。

 

 ちょっとした浮遊術式を組み込んだおかげで車体は全く揺れないし、大量に今でも産出されているモチクッションのおかげで座り心地抜群の椅子が爆誕しているから、レベルに関係なく旅疲れとは無縁だ。

 

「え。普通じゃない?」

「普通という言葉は、一番リベルタからは無縁の言葉ですね。そもそも私の縁を頼ったとしても、作りたての町に神像を設置したいと本山に要請するなんて普通は考えませんよ」

 

 周囲の警戒はゲンジロウと、今回同行したエンターテイナーたちのまとめ役であるシャリアがいれば、盗賊などに襲われる心配はほぼない。

 

 開拓村の方はジンクさんとジュデス、さらにガトウが残してきた御庭番衆とエンターテイナーたちを率いて警戒してくれているし、パーシーとドンのコンビが城壁のバリスタを量産し始めたから防備という面でも問題ない。

 

 こっそりと精霊界にいって、闇さんと雷三姉妹にいざという時には助けに入ってほしいと、アミナのライブのプラチナチケット席をお土産に渡してあるから、緊急時でも俺が戻るまでは時間が稼げるだろう。

 

「普通……だよね?」

「恐れながら、普通の定義からは逸脱している行動かと。しかし、リベルタ様の行動は皆を幸せにする行いが多いと思っております」

 

 万全の布陣での本山への旅行の道中で、俺は「普通じゃない」と集中砲火を浴びている。

 悪いことはしていないはずなのに、普通じゃないと言われると、どことなく罪悪感を抱くのはなぜだろう。

 

 頼みの綱のイングリットにも普通じゃないと言われ、自分の行動を振り返ってみると。

 

「確かに、普通じゃないか」

 

 自分の「当たり前」の行動は、世間一般の「普通」からは随分とズレているらしい。……ようやく、その事実を認識できた。

 

「イングリットさんの言う通り、あなたの行動は我々のためを思っての行動が多いです。なので改める必要はありませんよ。あなたはあなたらしく生きる。それでいいのです」

「クローディア様の言う通りよ。リベルタはリベルタのままで!」

 

 むしろ普通じゃない方がいいのかと、今さら納得してしまった。

 彼女たちに励ましてほしいほど落ち込んでいるわけでもないし、今さら自分の行動方針を変えることもできない。

 

「うん、ならこれからも全力で行くか」

「……少しは手加減してもいいのですよ? お父様が最近あなたから渡された胃薬を手放せないと言っておりましたわ」

「前向きに検討します」

「うわぁ、僕知ってる。それって『考えるだけ』の貴族たちが使う言葉だよ」

「アミナは賢いなぁ」

 

 変えるつもりもない。

 ちょうど良い位置にあるアミナの頭を優しくなでつつ、だんだんと変わる景色が映る外を見る。

 

「本山が見えて来たな」

 

 その景色の先に見える、ひと際高く大きな山。

 

 神殿の本山の街は、どの大陸でも一番高い山のふもとに作られる。

 それは、神にもっとも近い場所は山の頂上とされているという考えと、各大陸にある最高峰(中央大陸を除いた四大陸)の標高が、すべて均一であるためだ。

 

 その高さが統一されていることを、この世界の住人は偶然とは考えず、神々がその手で自ら作りあげたというのが通説だ。

 

 それゆえに、その四つの山はそれぞれ「神山」と呼ばれ神聖視されている。

 

 ゆえに神殿に所属する神官や神殿騎士たちは修行の一環で入山し、頂上まで登り祈りをささげるという。

 

「大きいのね」

「クローディア様は、あの山に登ったことがあるんだよね?」

「ええ、ありますよ。修行時代に初めて登りましたが良い経験になりました。時間があれば、二人も登ると良いですよ」

 

 南の大陸の神山は、南方のエーデルガルド公爵の領地の中にある独立地域にある。

 その土地は治外法権で守られ、神々の加護によって何人たりとも干渉を許されない、この大陸の政治体系から切り離された絶対的中立地帯だ。

 

 歴代の為政者の中で、ここを取り込もうとして破滅した例は、歴史書を紐解けば簡単に知ることができる。

 

「登っていいの?」

「ええ、しっかりと入山届を出せば誰でも入ることはできますよ。さすがに子供が一人で入ることは許されませんが、私がいれば登ることは可能です」

 

 そんな土地ゆえに、一般市民からも神聖な場所として認識されている。

 信心深い人は年に一度は本山まで足を運ぶと言われる。

 

 そしてクローディアが言う通り、あの山は入山許可を取れば誰でも登ることができる。

 

 普通なら自然の山にはモンスターがいたり盗賊が出たりして危険だからと、立ち入りを制限される空間であるはずなのだが。

 

「モンスターがいないから、市民も気軽に登ることができる。神殿の騎士団が定期的に山を巡回するので、盗賊も迂闊に根城を作ることもできない。この大陸で一番治安の良い山ですわね」

 

 標高は富士山の二倍ほど。たしか地球のアンデス山脈の最高峰と同じくらいの高さではなかったか?

 

「記念で途中まで登る人も多いと聞いています。貴族の中には、最高峰まで登頂することで資質を示す家もあります」

「信心深い家はそうですわね。我が家の派閥の中にもおりますわ」

 

 そんな山だからこそ、いろいろな人が登りに来る。

 イングリットの言うように記念で登る人や、貴族の次期当主としての試練として、あるいはストイックに修行を求めて、と目的は様々だ。

 

「リベルタも登ろうよ!」

 

 観光地としても有名で、ネルは記念に登ろうと目をキラキラさせ、尻尾を振って提案してきた。だが。

 

「うーん、たぶん俺は一人で登らされると思うんだよね」

 

 あいにくと、皆で楽しくワイワイと一緒に登れる未来は俺には待っていない。

 FBOで俺の知っている神像の設置条件の中には、町を作った者の心を量る試練が待っている。

 

 その中には、神山の頂上まで子供ほどの大きさの石でできた神像を運ぶという試練がある。

 その過程で、俺は設置してほしい神像の数——つまりシステムの数だけ、試練を受ける必要があるのだ。

 

 それも、整備された登山道ではなく、修行用の険しい試練の道を。

 

「ということで、皆で楽しんできてよ」

「「「「……」」」」

 

 それを説明すると、皆は沈黙した。

 

「じゃあ! 私も一緒に試練を受けるわ!」

 

 真っ先にネルが挙手し、一緒に運ぶと宣言した。

 

「リベルタだけが大変なことをしているのに、私たちだけが楽しむのは何か違う気がするし」

 

 ふんすと気合を入れてガッツポーズをとってくれるのは嬉しいが。

 

「ネルさん、あなたのその優しい気持ちは嬉しいですが、これはリベルタの試練です。一人でこなすことが重要な時があるんですよ」

 

 あいにくと、これは一人でこなすことが重要なクエストなのだ。

 極まれにある「パーティーからの強制離脱クエスト」というやつだ。

 参加人数は一人。完全なソロ行動を求められる。

 

「そうなの?」

「そうなの。ありがとうネル、心配してくれて」

 

 ネルの好意は嬉しいが、こればっかりは向こうが決めたルールだ。

 これを破ってしまったら、神像がもらえなくなってしまう。

 そして神殿の本山側からしたら、この試練によって「神像を預けるに足る人物か否か」を計るわけだから、緩和するわけにはいかないのだ。

 

 手伝うことができない。それを聞いたネルが耳をしょんぼりと垂れさせた。

 その頭に手を伸ばし、ゆっくりとなでると、ネルは嬉しそうに目を細めて俺の手に身をゆだねてきた。

 

「うん、じゃあリベルタが無事に成功できるようにお祈りするわ」

「そうしてくれ。あ、そうだ。表参道には美肌の湯で有名な温泉宿があったはず……あったよね、クローディア?」

「「「「!?」」」」

「ええ、元は修行で傷ついた体を癒すための温泉でしたが、肌にも効果はありますね。それなりの標高に位置するので人も少ない、秘境のような温泉地ですからのんびりするのには良い場所ですよ」

 

 彼女たちが少しでも楽しめるようにとちょっとした情報を流すと、案の定、女性陣が一斉に反応した。

 唯一反応しないのは、その場所を元から知っているクローディアだけだ。

 

「それじゃ、クローディアには俺が試練を受けるための手続きをしたら、皆の案内を頼むよ」

「ええ、任せてください」

 

 土地勘のあるクローディアなら、無事にあの秘境の温泉にたどり着くことができるだろう。

 馬車はふもとの街に預けることになるが、その護衛に御庭番衆から一人と、エンターテイナーから一人出せばいいか。

 

「あ、そうだ。温泉に行くときはシャリアを連れて行ってくれ」

「構いませんが、なぜ?」

 

 俺が試練を突破している間に、クローディアたちにはちょっとしたクエストをクリアしてもらう。

 そんな算段を立てていた俺は、すっかり失念していた。

 

 俺がこの世界に来てからというもの、予定が予定通りに運ぶことなんて、ほとんどありはしないということを。



楽しんでいただけたのなら幸いです。


そして誤字の指摘ありがとうございます。


もしよろしければ、ブックマークと評価の方もよろしくお願いいたします。


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絵師であるもきゅ様に描いていただきました!!


挿絵(By みてみん)



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― 新着の感想 ―
さぁ何がでるか・・・蛇は出ないだろうから鬼でしょうなぁ・・・ 豚ではないでしょうし・・・
多分デッカイ神像を運ぶ事になる…いや…知恵の神の使徒だから運ぶ必要ないか!!預けるも何も知恵の神の神像ならそのまま所有権移るんじゃね?
去年中国企業でAIを使うアニメが本格的営業し、岡田斗司夫を始め日本のアニメスタジオ経営者がほぼイベントに呼ばれ、もうアニメーターがまったく要らない完全アニメが数時間で出来るそうで、そのシステムを日本の…
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